14. 私はご招待されて忙しいもので
あれから机の引き出しに隠しておいたタチアナ嬢の日記を、アルバン様の告白を鑑みて読み返してみますとなるほど納得のいくような気がいたしましたの。
寝取られ願望が強いなどとよく分からない理屈で動かれているアルバン様の行動は、アルバン様を慕っていたタチアナ嬢からすればとても残酷な行為だったのですわ。
そもそもアルバン様が秘密の性癖をお持ちだなんて、タチアナ嬢はご存知なかったのですから。
「それにしてもあの恍惚とした表情で性癖を語るアルバン様は、私からしましたら随分と気持ちの悪いお顔をなさってらしたわ。」
この真っ白な調度品ばかりのお部屋も、アルバン様の独占欲からなるものでしたのね。
この白い部屋で寝台の天蓋だけ血のような赤だなんて、なんだか色々と想像してしまうと気味が悪くなってきましたわ。
「これからどうしたら良いのかしら?」
この婚約は家同士の繋がりのため、私の一存だけで婚約破棄するなどできませんし。
しかも伯爵家の我が家から侯爵家へと婚約破棄を申し立てるなど、なかなか簡単にできることではありませんわ。
「とりあえず、しばらくは何事も無かったように振る舞いましょう。また何かいい機会が巡ってくるかも知れませんことね。」
アンを呼んで入浴を済ませた私は、最近届いたお茶会やサロンの招待状のお返事を書くことにいたしました。
「今一番優先すべきはカスペール公爵家のマルグリット様からのサロンへの招待ね……。」
多数の招待状の中からアルバン様同伴でないものを選り、その上高位の貴族の招待から順番に優先度を決めながらお返事を書いてまいりました。
マルグリット様はこのラガルド王国の王女様であられましたが、数年前に公爵家へと降嫁なされました。
「つまり、あの美形の皇太子殿下のお姉様なのね。どんなにお美しい方なのかしら……。楽しみだわ。」
あの国王陛下と皇太子殿下の御親族ならば、必ずしも美形のご婦人でしょうね。
そのように考えながらも、なるべく婚約者同伴でない招待状から順にお返事をしてまいりました。
今までタチアナ嬢や私自身も、アルバン様のおっしゃる通りにサロンやお茶会に参加しておりましたから、これからは自分の思うお方の招待をお受けすることにいたしますわ。
「これだけご招待をお受けしておけば、しばらくはアルバン様にお会いしなくても上手い言い訳になるでしょう。」
今日は色々なことがあって本当に疲れましたのよ。




