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第十六話【最終決戦・ニ】

「続いて第九形態いくよ?」


 倒れている死体からそんな明るい声が聞こえてきた。

 瑠璃は呆れたような表情で返答する。

 

「おい、めんどいしもう最終形態でこいよ」


「えぇー。それだと手加減ができないんだもん」


「次は俺が相手だし、しなくてもいいぞ?」


「全く、君のその態度は本当にムカつくね」


「なら俺を殺すために最終形態になれ」


「……わかった。そこまで言うなら一番強い姿になってあげるよ」


 その言葉と同時に男の子の姿の魔神が現れた。

 

「さぁ、始めようか」


 顔面に向かって放たれたパンチを、瑠璃は手のひらで止める。

 

「なるほど。最初の姿が実は一番強かったということか」


「そういうこと」


「興味本位で聞くんだが、その最終形態の姿で戦った者は俺以外にもいるのか?」


「えっとねぇ。二、三人くらいいたような気がする」


「へぇ」


「でもほとんどの子がここまでたどり着くことなく死んじゃうんだよね。だから今日は久しぶりにこの姿で戦えるから、嬉しくてしょうがないよ」


「俺も神と戦えるのは嬉しいな。さっきからわくわくが止まらない」


「瑠璃さん。頑張ってください! 手伝いが必要なら遠慮なく言ってくださいね?」


「俺が負けることはないから安心しろ」


「よそ見していると、死ぬよ?」


 瑠璃の股間に向かって魔神の蹴り上げが放たれた。

 彼は片腕で止める。

 

「おい、月の真似すんな」


「ふふっ、いい反応速度だね。もしかすると過去最高に強いかも」


「当たり前だ」


「……いくよ?」


 そう言って放たれた魔神の右ストレートを瑠璃が躱した直後、風圧によって進行方向上の荒野の地面が抉れていった。


 時間差で大量の砂煙が巻き起こる。

 

 瑠璃はその光景を一瞥しつつ、魔神の顎に全力の左フックを入れた。


 空間だけでなく時空をも破壊できるほどの威力がある攻撃をまともに食らった魔神は……微笑んだままその場で立ち止まっている。

 

「ふ~ん。なかなかいいパンチだね」


「…………」


「どうしたの? まさかその程度で勝てるとでも思ってた?」


「いや、楽しくなってきたと思ってな」


「ならよかったよ」


「だからお前も全力でこい」


「いいよ」


 その瞬間、魔神の姿が消えた。

 

「──ぐっ!?」


 横腹に蹴りをくらった瑠璃は、真横に吹き飛ぶ。


 それから顎を殴られて空中へと持ち上げられ、刹那のうちに地面へと叩きつけられた。


「瑠璃さん!?」


 地面にめり込んだ瑠璃を見て、月が心配そうに叫んだ。

 

「まさかこれで終わったりしないよね? 人間くん」


「……」


 瑠璃は顔を歪めつつも、ゆっくりと立ち上がる。

 

「ふふっ、すごいね。あれを食らってまだ動けるんだ」


「全然、痛くない……げほっ」


「力の差がわかったでしょ? 僕と君とではそもそもの格が違うんだよ」


「うるせぇ。なめんな」


 そうして瑠璃が走り出そうとした時、再び魔神の姿が消えた。


 月どころか瑠璃ですらそれを追うことができない。


「君、態度のわりに弱いね」


 気づくと彼はみぞおちを殴られていた。


 腹に力を入れる前の不意打ちだったため、瑠璃は一瞬にして意識を刈り取られ、そのまま地面へと倒れていく。


「嘘ですよね!? 瑠璃さん! 瑠璃さ……」


 そんな大切な人の声を聞きながら。

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― 新着の感想 ―
[一言] 力を与えてる元のやつにその力使って勝てるわけねえのは最初からわかってたよな。
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