S級魔獣を討伐せよ!!
30人超の魔法少女が足並みを揃え、一体の魔獣を倒すことはかつての人類史を見てもそう見ない光景だと思う。
あるとするなら、『天幻魔竜 バハムート』、『人滅獣忌 白面金毛の九尾』。かのS級魔獣二体を討伐、封印した時くらいだろう。
同じS級魔獣『大海巨鯨 リヴァイアタン』を相手にするなら、相応しい規模でもある。
「あのね、アリウムお姉ちゃん」
「どうしたのノワール」
「リヴァイアタンね、苦しいんだって。食べても食べてもお腹空いてて、しょうがないから眠ってたら、変なことされてまたお腹空いちゃって、だからえっとね」
ノワールの中で伝えたい事がまとまっていないのか、徐々に言葉が尻すぼみになっていく。
多分、リヴァイアタンは悪ではない。そう伝えたいのだと思う。
少なくとも『人滅獣忌 白面金毛の九尾』のような国落としの虐殺を繰り広げた魔獣でもなく、『天幻魔竜 バハムート』のように一晩で小国を焼き払ったわけでもないのは私も知っている。
その巨大さから恐れられ、船をひと飲みし、海洋輸送路の壊滅の一つの理由になった。
そこにいるだけで人類の脅威だったことは確かだけれど、他のS級魔獣やショルシエやアストゥートのような真性の悪ではないと私も思う。
だからといって、放置して良い魔獣でもないというのも同じだけれど。
「満たされない欲か、成る程ね。S級魔獣ってのは案外悲しい生き物なのかもね」
「ルビー?」
「バハムートもそうだったみたいよ。満たされない欲をどうにか満たそうとしてた。リヴァイアタンもそういう事なんでしょうね」
手に持った紫色に金色の竜が描かれたメモリーを見つめて、ルビーはそう答える。
満たされない欲。それによって産み出される強力なパワー。それらがS級魔獣の力の源なのだとしたら、それは確かに悲しい生き物かも知れない。
魔力によって生き物としての根幹の一部を壊されてしまって、止まることの出来ないバケモノとなってしまった。
それがS級魔獣なのだとしたら。
「……止めてやるのが私達の務め、か。神様もとんだ皮肉を効かせるものだね」
「ウィスティーさん……」
私達の話を聞いていたのか、ウィスティーさんは苦笑いをしている。
ファースト世代は特に魔獣を悪と見なして徹底的に争った世代だ。
そんな彼女達が、ある意味では救ってやるために魔獣を倒すというのは確かに皮肉めいたものを感じる。
「時代が変わりつつあるって事よ。魔獣は脅威だけど敵じゃない。10年前、人が環境問題に取り組んで、自然と共生しようと努力してた時と同じ」
「リヴァイアタンを倒す事はあの魔獣を救うと同時に、私達がやり残した最後の仕事を成し遂げ、区切りを付ける事にも繋がるでしょう」
「世界を変えるタイミング、だね。こうしてその最前線に立てる事は光栄に思うかな」
『影鎌の魔法少女 リエンダオ』に変身している番長、『巨人の魔法少女 マギサ』さん。『雷鳴の魔法少女 ドンナ』さん。
S級魔法少女とそれに限りなく近い実力を持ったファースト世代の人達はこの戦いをそう位置付けるみたいだ。
他のファースト世代の魔法少女達も頷き、この戦いは彼女達にとっても重要なものとなるようだ。
「……うん、そうね。そうあるべきだわ。よしっ、なら先駆けは貴女たちに任せるわ。行きなさい、これから世界を変える魔法少女として」
ウィスティーさんに肩を叩かれ、一歩前へ出る。これでは世代を代表した魔法少女扱いだ。
流石にそれは買い被られ過ぎだと思うのだけれど、皆から早くしろと目で訴えられる。
「さっさとしなさいよ。アンタが一番変えたんだから」
「そう事だね。君自身の変化もそうだけど、何より君が巻き起こした変化の方が遥かに大きい」
「今最も影響力のある魔法少女である我れらが姫様以外に、この大役はあり得ません」
ルビー、パッシオ、カレジにまで急かされてしょうがないとため息を吐いて、覚悟を決める。
と言っても何を言えば良いかなんて分からないから手短に報告、って感じだけど。
「防御と回復は全て私が請け負います!!皆さんは攻撃に全神経を集中して下さい!!」
大声を張り上げて、自分が何をするのかを伝える。きっとそれだけで大丈夫。
それほどの人材が、今ここに揃っている。
「必ず守ります。誰一人欠けさせません。全力で、お願いしますっ!!」
魔力を練り上げながら伝える。守る。
私は魔法少女を守る魔法少女。この戦いで、ただの1人も欠けさせない。
その思いを声に変え、皆に伝えると応えるように全員が魔力を練り上げる。
全力で守り、全力で攻める。ただそれだけの最強の戦法を今ここでやって見せる。
「『固有魔法』ッ!!」
この城は、そのための魔法。
「『幾千年紡ぎ紡いだ我が居城』」




