S級魔獣を討伐せよ!!
海水に押し上げられて、私達は悲鳴と共に空中高くへと放り出される。下にはボロボロになった海上施設部分と眠りから目覚めたであろうS級魔獣『大海巨鯨 リヴァイアタン』の姿。
そしてそれに立ち向かうアズール、アメティア、ノワールの姿だった。
無謀にも思える、たった三人でのS級魔獣への対峙にすぐに増援が必要だと判断。近くの【ノーブル】施設の海上部分へと着地をして、各自体勢を整えると共に、障壁で【ノーブル】のボス、シャグランの拘束と保護をする。
既に意識があるのかないのか、分からないくらいの状態ではあるけれど、生きてはいる。彼には【ノーブル】という組織の詳細やその他さまざまな情報を引き出すために必要な証人であり、そして裁かれなければならない罪人であり、救われなければならない被害者でもある。
そういう意味では茫然自失している今の状態はありがたい。何をするでも無いからね。
「にゃーん!!」
「リオ君?……朱莉?!」
手早く準備を整え、アズール達の元へ向かおうとした時、素早く駆けて来たリオ君の鳴き声を聞いて、彼が示す方向を見ると二人の人影が横たわっている。
女性が二人、内一人は朱莉で呑気なことにすやすやと寝息を立てていた。
「起きなさい!!」
「ふぎゃ?!」
激戦の後は周りを見ればわかる。それでも緊急事態だ。心を鬼にして、耳元で大声を張り上げると、朱莉はすぐ飛び起きる。
様子からして大きな怪我は無さそうだ、疲労感はあるだろうけどここはもうひと踏ん張りしてもらうしかない。
「おはようねぼすけ」
「――っ!!アリウム、アンタねぇ……」
「起きて早々悪いんだけど、緊急事態よ。積もる話は後で」
「……!!OK。ま、とりあえず無事に戻って来れたみたいで良かったわ」
叩き起こされて不満そうにする朱莉だけど、じゃれている暇は生憎ない。周囲の状況を一言で把握してもらって、手短に言葉を交わす。
お互い、笑いながら拳をぶつけ合ってひとまずの無事を喜ぶくらいに留めて、すぐに戦闘態勢に入る。
一緒に意識を失っていた【ノーブル】関係者と思われる女性もシャグランと同じ障壁に入れ、これで準備は良いだろう。
既に他の面々は『大海巨鯨 リヴァイアタン』との戦闘に加わっており、苛烈な戦闘音が聞こえて来る。
一足先に合流に向かったシャイニールビーの背中を追い、皆がいる場所へと向かう。……少し懐かしい感覚に思わず口角が上がったのは内緒だ。
「お待たせ!!」
「遅いですよ!!」
「へっ、無事で何より、だぜ!!」
「お帰り!!アリウムお姉ちゃん!!」
先にリヴァイアタンとの戦闘を始めていた面々からの激励を受け、私も障壁を展開。防御を中心に皆の戦闘サポートと可能なら拘束を視野に入れる。
あの巨体を拘束出来るとは思ってないけどね。出来る事は試すまでだ。
「クルボレレがいないのが残念だね」
「そうね。それだけが少し――」
【誰がいないのが残念だって?】
クルボレレ以外の全員が揃った。パッシオの言う通り、彼女だけがこの場にいないのは仲間として少しだけ残念に思う。
そんな勝手な事を思っていたところに、突然の通信だ。いくらマトモな電波が無いからと言って、通信手段を用意していないのは連携をするうえで問題。
私達はいつも通り、首に巻くタイプの通信端末をそれぞれ身に着けているのだけれど、そこから聞こえて来るのはトランシーバーモードにしている味方からの通信くらい。
そこから、今は遠く離れた場所にいるはずの番長の声が聞こえて来る。いつでもどこからでも通信が繋がる私の魔法具『イキシア』は今は発動していないはずなんだけれど。
間違いなく、通信が繋がっている時の特有が聞こえて来る。
【言っただろう。とびっきりの増援を送る、と。まずは第一弾だ】
番長の自信満々な一言の直後、雷鳴が轟き、稲妻を奔らせた一撃がリヴァイアタンの横っ腹を蹴り飛ばす。
超高速から繰り出される打撃技とそれに伴った雷属性の魔法で怒りの咆哮を上げるリヴァイアタン。
それでも大きなダメージになっていない様子がS級魔獣足る所以を見せつけているけれど、その雷光の主が誰なのかを理解した私達は全員、ニッと笑う。
「遅刻だぜ、クルボレレ」
「すみません。でもその分の仕事はして来たつもりっすから」
肩を組み、嬉しそうにするアズールと戦闘態勢を崩さぬまま集まった私達。これで全員集合だ。
そう思っていると、人影は更に増え続ける。
「ちょうどええタイミングやなぁ。ウチらが片し損ねた仕事、ここで終わらせておかんと」
「大将ノリノリやん。でもまぁ、こんな大仕事久々や。手伝いに来たで」
「雷速にゃ流石に敵わねぇなぁ。でもまぁ、音速にだってやることはあんだろ」
「うわー!!でっか!!あれと戦うの皆?!」
「でも私達がバッチリサポートしちゃうもんね!!」
「「「「「「ねー!!」」」」」」
「騒がしい子達だ」
「良いじゃないか。彼女達はそういう魔法使いだ。私達の世代とは違う」
「そうそう。彼女達の応援魔法はお墨付きです。私の料理魔法も腕を振るいますよ」
「先輩達との共闘とは胸が高鳴りますな。なぁ、忍どの?」
「あぁ、各地域の腕利きも揃っている。我ら伊賀甲賀、かつては争えど同じ忍びとして腕を振るおうぞ」
「借りを返しに来たわ。手伝わせてちょうだい」
「はい!!瑞鬼たちも精一杯頑張ります!!」
「アリウムさんがいるから、結界魔法がどこまで役立つか分からないけど、頑張ります」
「私の水晶魔法も彼女の前だと霞ますからね……」
「何を言ってるのクリス。貴女の魔法硬度は最高クラスなんだから胸を張りなさい」
「S級魔法少女の巨人の魔法少女に言われてもじゃない?インパクトなら最強でしょ」
「それは貴女もよウィスティー」
「どんぐりの背比べね」
「まぁまぁリエンダオさんもドンナさんもそう言わずに」
やって来たのは23人。見知った顔も多いそれが、ズラリと並ぶ。
「皆、連れて来たっす!!」
魔法少女の大連合。私達も合わせて総勢31人の魔法少女が、S級魔獣『大海巨鯨 リヴァイアタン』を倒すために集まった。




