流星
『大海巨鯨 リヴァイアタン』はとてつもなく大きな魔獣だっては聞いてた。
特徴は大きくなり続ける身体。他の魔獣は魔力のせいで身体は大きくなっても、ある程度で止まる。
人間の身長は大体の人が平均170cmもいけば止まるのと同じで、魔獣も普通はある程度までしか大きくならない。
個体差はあるけど、法則はあるんだって。ノンちゃんなんかはかなり大きくなれた個体で珍しいって協会の研究員の人が言ってた。
種の限界?とか物理的な質量?とか色々言ってたけど、とにかく魔獣だって大きくなり過ぎたら不便だもんね。
でも『リヴァイアタン』は違うんだって。最初確認された時は大体20メートルくらい。学校のプールくらいの大きさで、それでとやっぱり大きな魔獣。
見つかった時はニュースになって、みんな大騒ぎしたんだってママが言ってた。
そのあと、もう一度見つけた時に『リヴァイアタン』は30メートルくらいになってたんだって。
最初に見つけた時より10メートルも大きくなってた。
世界で一番大きな生き物、シロナガスクジラでも最大で29.9メートル。だからとうとう『リヴァイアタン』は世界で一番大きな生き物になった。
それでもまた大きくなっていって、50メートルくらいになった時、身体が大きくなり過ぎて、身体を動かすための魔力が足りなくなっちゃったんだって。
だから、海の底でおやすみしてた。大きくなり過ぎた『リヴァイアタン』は海の王様になってから寝ちゃったけど、寝たからって海で人が自由に船を出せるかって言ったらそうじゃなかったみたい。
海は元々生き物が陸上よりずっとずっとずーっと多いから、魔獣の量も多い。
だから人は海でもなく陸でもなく、空を使って移動を始めた。
『バハムート』がいなくなったのも大きいって言ってた。諸星がお金持ちになったのもそこだって教わった。
「……怒ってるのかな。無理矢理起こされて、機嫌悪そう」
ノワールは『リヴァイアタン』はあんまり悪い魔獣じゃないと思ってる。
とっても強い魔獣なのはそう。S級魔獣で物凄く強いのは見れば分かるよ。
でも、『人滅獣忌 白面金毛の九尾』とか『天幻魔竜 バハムート』みたいなたくさんの人を襲ったりしたってお話は聞いた事がない。
ただ大きくて強い魔獣。海の王様。それが『大海巨鯨 リヴァイアタン』。
ただ、大きくなり過ぎて、海の底で寝てただけの魔獣。
今、ノワールの前にいる『リヴァイアタン』はなんだか怒ってるような気がする。少なくとも、ご機嫌ナナメかなって。
「いや、怒ってるってより苦しいんだな。無理矢理、属性も相性も考えなしに魔力をあるだけ突っ込まれて、それなのに腹は減ってるんだ」
「わかるんですか?」
「不思議とな。この姿の能力かもしんねぇ。海に関わる生き物との気持ちが分かるのかもな。ノンの言葉も分かるぜ」
「ぎゃう!!」
良いなぁ、羨ましい。
でも、そっか『リヴァイアタン』は苦しいんだ。そうだよね。寝てる間に勝手に身体に色々されて、無理矢理に魔力を入れられたらきっと苦しいと思う。
「元々、食っても食っても満たされなかったんだ。どんなに食べても、腹一杯にならない。身体ばっか大きくなって、どんどん腹ばかり減るようになってった。……みてぇだな」
「満たされない食欲、ですか……。苦しいでしょうね。寝ている間に勝手に身体を大きくさせられたのなら、なおのこと」
「だな。ウチの耳には、子供の泣き声みてぇなのがずっと聴こえてるよ。腹減った、ってな」
前に、真白お姉ちゃんが言ってた。本当の意味での被害者は魔獣だって。
自分の意思で魔獣になったわけでもないのに魔獣になって、ご飯の魔力が欲しくて人のいるところに来ちゃって、人に殺される。
魔力が来たのはショルシエのせい。人間のせいでもないし、魔獣のせいでも、パッシオ達妖精のせいでもない。
1人の自分勝手が作り出した。最悪な結果の一つだって。
「GYAAAAAAAAAA!!!!」
「お前ら、もうひと踏ん張り出来るな?」
「それはこちらのセリフです」
「アメティアお姉ちゃんも無理はだめだよ。余裕があるのノワールだから、任せて」
「ぎゃう!!」
ぐるぐるの海の中を回ってた『リヴァイアタン』がこちらに気が付いてまた咆える。
苛立ちに似た敵意をぶつけられてるのをヒシヒシと感じながら、ノワール達は武器を構えた。




