流星
海面ギリギリまでやって来てた大きな魔獣はその巨体で海を膨らませて、また海の底に戻って行った。
「ノワール!!ノンちゃん!!」
「アメティアお姉ちゃん!!」
今までで一番荒れてる海のせいで揺れるノンちゃんの背中に必死にしがみ付いていると、アメティアお姉ちゃんが飛んで来て、ノワールを空中の障壁の上に避難させてくれる。
「『風よ!!運んで!!』『鋼よ!!斬り裂いて!!』」
ノワールを避難させた後に、アメティアお姉ちゃんは魔法を発動させて、ノンちゃんの背中に乗ってたコンテナの中から皆の荷物とノワールの『30式狙撃銃』の装備とかを全部運んで、障壁の上にごちゃっと載せる。
コンテナは何だっけ、鋼魔法だっけ?金属を操るのに特化した魔法を使って、ノンちゃんの背中から強制的に取り外してた。
これでノンちゃんは自由に戦える。今までノワールを背中に乗せててくれてありがとね。
「海に潜った?ノワールもコンテナボックス濡れてるけど」
「うん。戦ってる時に少しだけ」
「なるほど。念には念を入れて、防水タイプのコンテナボックスに入れてて正解だったわね」
「片付けしといて良かった」
『30式狙撃銃』の換装をした後も、戦いが始まる前も。しっかり片づけをしてなかったら今頃荷物は全部びしょぬれだったね。
ノワールの装備とか、濡れたら壊れちゃうから良かった。後片付けは大事。
「おーい、わりぃけど上げてくれ」
ノワールとアメティアお姉ちゃんがいる障壁の下、ノンちゃんに掴まっているのはアズールお姉ちゃんだ。
怪我したところから血が出てる。慌ててアメティアお姉ちゃんが魔法で引き上げて、バタバタと治療を始めた。
「助かったぜノワール。危うく丸のみされるとこだった」
「ううん。お手伝い出来なくてごめんね」
アメティアお姉ちゃんが治癒魔法を使いながら、アズールお姉ちゃんの頭に包帯を巻いてる途中でありがとうってされる。
ノワールは全然お手伝い出来なかったから。出来たのは最後だけだ。それでも、アズールお姉ちゃんは頭を撫でてくれた。
「久々に死んだと思ったからな。それがどうにかなったのはノワールのむがっ?!」
「バカな事言ってないでそれ食べてください。魔力が回復しますから」
「むぐっ。豆か?どうしたんだよこれ」
「フェイツェイからの手土産です」
アメティアお姉ちゃんがアズールお姉ちゃんのお口に入れたのは、大豆みたいな食べ物。お父さんがお酒を飲む時にパクパク食べてるのと似てる。
それだけで魔力が回復するって言ってるけどホントかな?フェイツェイお姉ちゃんが嘘をつくとは思えないから、嘘じゃないとは思うけど。
そう思って一粒もらうと、本当に回復したから本物だ。これ、どうしたんだろう?
「それにしても、土壇場でノワールも化けたな。おかげでマジで助かった」
「はい。魔法具顕現、おめでとうございます」
「え?あ……」
お姉ちゃん達に言われて、はじめてノワールも魔法具が出来たことに気が付いた。
『30式狙撃銃』のスコープが全然違う形に変わっている。
少し長くなって、流れ星のマークが入った。名前は、えっと……。
「『星見の狙撃鏡』」
「良い名前じゃねーか」
「ノワールらしくて素敵です」
『星見の狙撃鏡』。それがノワールの魔法具。少しだけだけど、お姉ちゃん達に追いついた証。
嬉しくてふんふんとしてると、アメティアお姉ちゃんとアズールお姉ちゃんに撫でられる。
治療は一応終わったみたいで、アズールお姉ちゃんはまたおっきくなった魔法具の斧を簡単にに片手で持ち上げて、海の方を睨んだ。
ノワールとアメティアお姉ちゃんも一緒にそっちを見る。海は物凄く荒れてる。ノンちゃんも泳ぐのが大変そうなくらいには大きな波がたくさん立っている。
「……とんだ大物とやり合う事になっちまったな」
「一体、何メートルあるんでしょうか……」
その海に背びれが見える。何個もあって数えるのが大変なくらい。その中で一番大きいのが一つあって、それだけでノンちゃんより大きい。
海の中に隠れている身体はどのくらい大きいんだろう。
ノワールには想像も出来なくて、胸が痛いくらいバクバク動いてる。
「――――GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaa!!!!!!!! 」
「聞いてた話よりもデケェってのは流石に予想外だぜ……!!全長だけで100メートルあるんじゃねぇのか、コイツ……っ?!」
あれが、S級魔獣『大海巨鯨 リヴァイアタン』。今から、ノワール達が戦わなきゃいけない魔獣。
人類の天敵。




