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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
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流星

ノンちゃんの背中の上。『30式狙撃銃』を構えながら、ジッと待つ。

ノワールには今、それしか出来ない。ルビーお姉ちゃんはバハムートに勝った、アメティアお姉ちゃんは沢山の魔獣を一人で倒した。アズールお姉ちゃんも、きっと勝つ。


お姉ちゃんたちは強いから。フェイツェイお姉ちゃんもグレースアお姉ちゃんもクルボレレお姉ちゃんも、アリウムお姉ちゃんも。パッシオもカレジも、皆強い。


力だったり、心だったり、ノワールより色んなところが強い。ノワールも負けないように頑張ってるけど、やっぱりお姉ちゃん達の方が強いと思う。


「海、荒れてるね」


「ぎゃう」


海はとても荒れてる。何かあるたびにざっぱーんと大きな波が起きて、ノンちゃんだから平気だけど普通のお舟ならひっくり返っちゃいそう。


海の中で今、アズールお姉ちゃんが戦っている。海が荒れてるのは、多分そのせい。怪我をしているアズールお姉ちゃんが心配だけど、ノワールは水の中では殆ど戦えない。アズールお姉ちゃんみたいに水の中で息で出来ないから。

途中から上で待つしか無くなっちゃった。


とっても悔しい。ノワールはいつもお姉ちゃん達に大事にしてもらってる。ノワールもお姉ちゃん達を助けたいのに、それが中々出来ない。

たくさん強くなる努力をした。訓練も勉強も沢山したし、『30式狙撃銃』だって、いっぱい改造してもらって、色んな事が出来るようにした。


でも、足りない。あと少し。あともうちょっと。ノワールの魔法はいつも肝心なところに届かない。

悔しい。仲間なのに、お姉ちゃん達と同じくらい強くなれない。とっても、悔しい。


「でも諦めない。絶対、ノワールの魔法が必要な時があるから」


「ぎゃうぎゃう。ぎゃーう」


「ありがと。よろしくね、ノンちゃん」


狙撃手はジッと息を潜めて、一発で確実に標的を仕留める。二発目は許されない。

自衛隊のおじさん達に教わった事。狙撃手の役割は待つ事。待って待って、待ち続けて確実に狙撃する。


外したら、自分の居場所がバレる。それだけでもうピンチになる。カウンタースナイプだってあるかも知れないし、敵の警護が強固になってもう狙撃が出来なくなるかも知れない。


だから、狙撃手は待つ。集中力を研ぎ澄ませて、いつでも引き金を引けるように構え続ける。


ノンちゃんにも励まされて、ノワールは待つ。絶対に必要になる一撃を撃つために。でも、待ってるだけじゃダメ。


お姉ちゃん達は訓練して戦って強くなった。ノワールだって同じはずだもん。

訓練はした、強くもなった。でも決定的に何かが変わったわけじゃない。


新しい力を得たり、新しい技を身に付けたり、ノワールはそういうのがまだ出来てない。

お姉ちゃん達が魔法少女としての実力を上げて、魔法具とか新しい『固有魔法』を発動させたりとかしてる中で、ノワールだけはそれが無い。


それだけが魔法じゃないし、強さじゃないのは分かってる。でも、必殺技が無いってだけで戦力の幅は全然違う。


ノワールの今出来る、最強で最高の魔法をここで作る。それがノワールが出来る事。


集中して、考えて。ノワールに何が出来るのか、ノワールは今どんな魔法が欲しいのか。

魔法は気持ちが強ければ強いほど強くなる。


ノワールが欲しいのはーー。


「いつでも、どこでも、絶対に撃ち抜ける魔法の弾丸」


それがノワールが欲しい魔法。でも、それに届かないのはわかってる。ノワールはまだそこに行けない。『固有魔法』を発動出来るだけの努力にはまだ届いてない。


だから、せめて。


「何処までも見通せる目」


ノワールが誰にも負けないこと。目の良さを更に活かせる物が欲しい。

そんな事を願いながら。『30式狙撃銃』を構え続ける。


「……ぎゃう?ぎゃぎゃ!!」


「どうしたのノンちゃ?!」


海に渦潮が出来たと思ったら、アズールお姉ちゃんとクライスが飛び出して来る。

アズールお姉ちゃんはさっきの姿が違う。アズールお姉ちゃんはまた一つ強くなった。


それを羨ましく思いながら、アズールお姉ちゃんが放つ渾身の一撃をノンちゃんの背から見てたけど、そのノンちゃんが反応したのはアズールお姉ちゃんの『固有魔法』じゃないみたいだ。


もっと下。海底の奥底から、何かが上がって来てる。海を睨み付けて、それが何なのかを見る。


「――ッ!!」


それで気付いた。海の底からやって来てるのが、とてもとても大きな何かだって事を。

それがアズールお姉ちゃんとクライスを狙っている事を。


このままじゃ、アズールお姉ちゃんが大変なことになっちゃうかも知れない。

絶対に止めなきゃいけない。ここがノワールが唯一お姉ちゃん達のために出来る事だから。撃ち抜くことは出来なくても、アズールお姉ちゃんからやって来る何かを逸らすことくらいなら出来るんだ。


見えないはずの水底を睨んで、見えないはずの急所を撃ち抜いて見せる。この目はそのためにあるんだから。


構えた『30式狙撃銃』。そのスコープを覗き込んで、海底にいる何かを必死に見る。見える。絶対見える。必ず、当てる。


そう思っていたらスコープの見え方が急に変わった。ノワールの中の何かが確実に変わった。深い深い海の底だって、突然見えるようになった。

何が起こったのか分からないまま、引き金を引く。海の底から迫る大きな大きな魔獣を狙撃して、ギリギリでアズールお姉ちゃんに近付く一歩手前で、魔獣はUターンした。


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