DEEP BLUE
渦巻き、纏わりついた海水が激流となって辺りの流れを一気に変える。
突然起こった勢いの強い流れにクライスは流されまいと烏賊足の吸盤を海底の岩場に吸い付け耐えているみてぇだ。
ウチはと言うと、渦の中心で暴力的な力を受け止めようと必死だ。
流石は妖精の魔法。馬鹿げた性能を持ってる。
(ぐっ……!!)
【ねじ伏せようとしない!!受け止めるんじゃなくて、モノにしようとするんじゃない!!受け入れなさい!!それは最初から貴女の力よ!!】
(んな、こと言っても、なっ!!)
海の持つパワーを身体強化に使ってやろうって感じのこの魔法が持つエネルギーはとにかく凄まじい。
普通にビビるし、まるで攻撃をされてる気分だ。
それでもテレネッツァは受け入れろと言う。それがウチの魔法であるなら、ウチは受け入れられるハズだって理屈も分からなくはない。
だが、コイツは流石に厳しいぜ……!!
【そんなんだから自分の魔法に意識を持ってかれるのよ!!いい?!魔法のコントロールはイメージと根性よ!!ハッキリ言って理屈を捏ねてる暇があるなら反復練習の方がよっぽど効果があるわ!!】
(元も子もねぇこと言ってんじゃねぇよ!!)
魔法は根性でコントロール出来るって最近のスポコンより酷えぞ。いや、イメージで発動させてんだからコントロールだって精神的なもんが重要なのはわかるんだけどよ。
根性論でこの力を受け入れろはちと無理があるぜ。
【ビビるな!!ビビってるからミスるし、ミスるのが怖いからまたビビるのよ!!ミスって当たり前!!一発で出来なきゃ二回目で出来れば最高。そうじゃなきゃ出来るようになるまでやりなさい!!】
(スパルタかよ!!)
【自信と根性はそうやって付けるもんよ!!ミスるのビビるな!!それで責めるクズだと思わないでちょうだい!!】
チクショウ、根性論と理屈を同時に持って来やがって反論出来やしねぇ。
とんだ鬼教官だぜ。部下にぜってえ恨まれてるタイプだコイツ。
魔法のコントロールに自信がないのはもう昔からだ。
大雑把な性格も相まって狙いを定めて放つ遠距離魔法は得意じゃないし、元々の『固有魔法』。『WILD OUT』も結局今の今までコントロール出来てない。
『優しさ』のメモリー、つまりテレネッツァの魔力を借りて、『WILD OUT』のデメリット効果である意識がトぶのを防いだ強化改善版『WILD BLUE』を使ってようやくだ。
だから実質、ウチは自分の魔法をちゃんとコントロール出来た事がない。
向いてないと素直に思うし、魔法に頼らない戦い方をして来た。
【ここで諦めて死ぬか、しっかりきっかり魔法を発動させて勝つか、選びなさい!!】
(究極の二択過ぎるだろうがよ!!分かってるっての!!やりゃ良いんだろ!!やりゃあ!!)
ぎゃあぎゃあと頭の中で騒いで腹を括る。ここまで来てんだ。今更引けねぇし、勝つ以外はあり得ねぇ。
リーダーとして、姉貴として、後ろをついて来る連中が不安になるようなザマを見せられるかよ!!
身体に纏わりついて来る海水の渦を自分で掴んで身体に叩き付ける。
受け入れるとかそんなのどうやるか知らねぇからな。力になるなら使う。後は勝手に入って来やがれ!!
半分はヤケになってやったそれはどうやら正解だったらしい。
あんだけ荒れ狂ってた海はあっという間に静かになり、薄暗さはそのままだけど少し前の状態に戻っていた。
【イケるわね?】
(当たり前だ。行くぜ)
テレネッツァとの会話はそれだけ。たったそれだけで理解出来る程に力が漲ってる。
海が穏やかになり、また動き出したクライスの烏賊足目掛けて『ヴォルティチェ』を振る。
当たらない距離から振ったそれは、海水を巻き込み、渦を巻いてクライスの烏賊足を捕らえると、まるで洗濯機の中に入れたティシュみてぇにズタズタに引きちぎった。




