不調
いつになく手こずってる。感想としてはハッキリ言ってこのザマ以外に言いようがない状況ってのがウチの認識だ。
「ギャギャギャギャ!!」
「ちっ、笑ってやがる」
烏賊のゲソ。足の部分だな。それを下半身に人間の頭とゴリラみてぇに筋骨隆々な両腕。毛むくじゃらの身体の一部は甲虫の身体みたいに硬質化してて鎧みたいになってやがる。
人間の知能と手先の器用さ。ゴリラのパワーに虫の軽量で高い防御力。烏賊の柔軟性の高い足と吸盤や墨と言った特殊能力。
他にも細かく調整してるんだろうな。見た目の気持ち悪さ以上に、コイツの動きは機敏で力強く、何より頭が良い。
今までの命じられたことしか出来ないような半端な改造じゃねぇ。ただ力が強いだけでもなく、ただ堅いだけでもなく、海で戦うためにバランスよく調整されてやがる。
「まほうぅ、しょうじょぉおぉ~~っ!!」
「気持ちわりぃっての!!どんだけウチらに執着してやがる!!」
烏賊の足を伸ばし、その吸盤をウチの身体に吸い付けて来ようとするのを『ヴォルティチェ』で叩き切る。切った端から再生して来るのは相変わらずだ。
それでも切った方がタイムラグが出て避けることが簡単になる以上、斬るのがウチが出来る対応として一番手っ取り早い。
「ぎゃうっ!!」
「サンキュー、ノン。助かるわ」
「ぎゃうぎゃう」
伸びて来る足。烏賊的には腕の方が正しいらしいがどうでもいい。それを幾つか吹き飛ばしてくれたノンにも礼を言う。
頼もしい味方だぜ。コイツがいなかったらウチは今頃海底に引きずり込まれてるだろうな。
「ノワール。準備はどうだ?」
「もうちょっと。仕組みが複雑だから、どうしても時間がかかっちゃう」
「焦らなくて良いぜ。確実に頼む」
「うん」
ノンの背中に設置されてるコンテナの中で作業中なのは、ウチらの中で最年少でスナイパーのノワール。
どうやら装備の換装中らしく、持ち込んでいたドデカいツールボックスの中を漁っている。
確か、『三〇式狙撃銃 Mk-Ⅱ』だったか?最初に作った時からまただいぶ改良したみてぇだ。
どうにも状況に応じてパーツを換装することで狙撃以外の役割も持ちたいっていうノワールの要望も汲んだ装備らしい。
欠点として装備の数が膨大になって小回りが利かない事だ。ノワールの戦闘スタイルが狙撃だから、そこまでではないのが本来なんだろが、戦地のど真ん中での戦闘となるとちょっとの隙が命取りだ。
現状できる事を全てやったけど、まだまだ改良の余地あり。ってのがノワールと協会、どっちからの意見らしい。
ノワールに頼んだのは拘束。だからそれに対応した装備に換装中なんだろが、どうやらこれがかなり大掛かりらしい。
戦闘中で揺れる室内ので作業は思ったように進んでないみてぇだ。
「んな事よりウチの体たらくだな。ったく、こんな時に限って調子がイマイチと来た」
それよりも何よりも、旗色が悪い最大の理由はウチの調子が悪いことだ。体調ってワケじゃねぇ。どっちかと言うと『優しさ』のメモリーからの魔力供給が上手く行ってないって事が問題だ。
此処に来た最初はむしろ調子が良かったくらいなんだがな。クライスとの戦闘が始まってしばらくしてからだ。
魔力の出力が体感3割落ちしてる。ハッキリ言って致命的。火力30%ダウンのデバフだぞ?ゲームで考えたらとんでもないクソデバフだ。
しかも原因が分かんねぇと来た。メモリーからの供給が上手く行ってねぇからSlot Absorberの故障も考えられるけど、そういうのじゃねぇ気がする。
もっと根本的なところでズレてる気がしてならねぇ。それがよく分かんねぇから困ってんだけどな。
「ぐぎゃぎゃぎゃぎゃ!!」
「ホント、ウザいぜ。こっちの調子が悪いのを分かった上で、わざと攻撃し続けないのがよ」
いたぶってるつもりかよ。クソったれが。
悪態をつきながら『ヴォルティチェ』を担ぎ直す。この違和感の正体をさっさと突き止める必要があるな。
ったく、最終決戦にやる事かよ。




