花結びの園
『イキシア』を介してシャドウと私は私自身に、正確には私の中にある『繋がりの力』。その源泉に接続する。
殆ど勘だ。私が『繋がりの力』を知ったあの場所。あそこに行って、あの人に出会って、私は初めて『繋がりの力』という特別な力を使えるようになった。
それはつまり、あの花園こそが『繋がりの力』と直接的な関係があり、あの人も大きく関係しているだろう。
……あの人が誰なのかも、一応見当はついている。そういう意味でも私はあの場所に行きたいと思うと同時に、行くことにとても勇気が必要だった。
「……――!!」
「ここは……?」
気が付いた時に景色は一変していた。ついさっきまでいたはずの海底施設の無機質な通路ではなく、青空が澄み渡り、何処までも続く広大な花畑。
花園と呼ぶに相応しいそこに、私は二度目の脚を踏み入れた。
「ここは『花結びの園』。ミルディース王国王家が繋いで来た人と歴史が、花となって寄り集まる場所よ」
絶景。普通に生活していたら。いや、この世のものでは無いとさえ確信できる景色に私達が飲まれていると、優しい声音が聞こえて来る。
あぁ、そうだ。どうしてあの時気が付かなかったんだろう。幼い頃、既に20年近く前を最後に聞くことは叶わなくなった。この優しい声をどうして私は忘れていたのか。
大好きだったこの人を、あの時どうして見抜けなかったのか。
「――お母さんっ!!」
振り向いて、無我夢中で飛び付く。二度と会う事は出来ないと、出来るはずのない奇跡の再会。
20年近くも前に亡くなったはずの母の胸に私は飛び込んでいた。
「あらあら、相変わらずの甘えん坊ね。良い子にしてたかしら?真白」
「……良い子かどうかは分からないけど、自分なりに頑張ってる」
「そういう理屈っぽいところはよく似たわねぇ」
私のお母さん、小野 プリムラの腕の中で頭を撫でられながら、私が答えるとお母さんは笑っている。
似ているとは私の父、小野 真司の事だろう。確かに性格は母より父似なのは嫌でも自覚している。父と生活している時間の方が長かったのだから、それはそうだ。
子供は親に似る。蛙の子は蛙。どんなに関係が劣悪でも、だ。
「こっちは案外プリムラに似ているかな?図鑑が好きでフィールドワークや自然を愛している」
「……アンタは」
抱き合う私の後ろ。シャドウの肩を叩く音と共に聞こえて来たのは、これもまた懐かしい声。
やっぱり、二度と会えないと。和解も謝罪もままならないままに、別れてしまった人。
母との再会で感極まっていた私はその声を聞いて急いで振り向く。
「初めましてシャドウ。俺は小野 真司。君の父親だよ」
「お父、さん……」
そこにいたのは父、小野 真司。母はともかく父との再会は私の予想の範疇から飛び越えていて、予想外過ぎる展開に私の視界が滲みだす。
会いたかった人。謝りたかった人。これから仲良しこよしをしていくだろう人。
母と、父と、シャドウ(弟)と私。二度と集まれるはずのない家族4人がこの場所。『花結びの園』で初めて全員集まった。
「やっと、全員集合ね。ほら、真白泣かないで。こういう時は笑顔よ、笑顔」
「写真が撮れないのが残念だ。そうだ、私の書斎に少々古いが良いカメラがあるんだ。シャドウ、君にあげよう。君には誕生日プレゼントは用意出来なかったからな」
「待て待て、話を勝手に進めるな」
「ぐすっ。ちゃんと順を追って話してよ」
勝手に話を進める両親に私達は揃って待ったをかける。そうだそうだ。何というか二人ともこっちの話を聞かないというか、お母さんは純粋に天然に、お父さんは頭の回転が良すぎるのかこちらが理解をする前に会話をすっ飛ばして来る傾向があった。
子供ながらに二人に振り回されていたことを思い出す。特にシャドウなんかは2人とは事実上初対面。手加減しないとついてけなくて呆然としちゃうよ。
涙を拭い笑いながら両親を手で制して、私は場を仕切る。取っ散らかる前に制御権はこっちで握らないと。




