何処かで芽吹く不屈の話
地味で普段は使い道が殆ど無い『イキシア』の繋がる能力。そのことをすっかり忘れて第三者から指摘を受けてる時点で完全にこっちの落ち度だから仕方ない。
とは言っても『イキシア』自体が私の手元に戻って来たのだってついさっきだし、多少は多めに見て欲しい。
【ま、連絡自体は念のためだ。どちらかと言えば安否確認の側面が強い。お前が何の策も無しに単身敵地に飛び込んでいるとは欠片も思っていないが、光さん達は気が気で無かった様子だからな】
「……はい、その件については後でしっかりと謝っておきます」
【当然だ】
光さん達が心配するのは当然の事。多分、光さんの事だから心配している様子は周りには悟られないようにしてただろうけど、それは立場上の問題。
親として子供を心配する気持ちは誰だって変わらない。鋼のような強い精神力でそれを耐えているだけだ。
帰ったら、まず真っ先に謝らなきゃいけない。
物凄く怒られるだろうから、覚悟しておかないと。あぁ、嫌だなぁ。
「自業自得ですよ。私達だって相当に肝を冷やしたのです」
「美弥子さんにもね。帰ったら全員に怒られると思うよ」
「あははは……」
自業自得に因果応報とはこの事だ。勝手な事をして凄い規模の人や組織に迷惑をかけたのだから、仕方がないのだけどそれはそれ。怒られるのはやっぱり嫌。苦笑いしか浮かばない。
【長話はここまでだ。戦況を伝えろ】
「はい。現在、アリウムフルール、パッシオ、カレジ、シャドウ、愛菜さんが【ノーブル】海底施設にて合流しました。この後、ショルシエと交戦していると思われるフェイツェイ、グレースアと合流。ショルシエを打破或いは離脱を試みた後、海上で戦闘中のアズール以下と合流予定です」
【概ね順調な進捗か。予定通り早急にフェイツェイと合流を図り、海上へと急げ。海底施設は何が仕組まれているか分からん。焦った奴らが施設ごと潰しに来た事例は過去にあるしな】
「了解です」
番長からの指示を受け、改めて私達の行動指針が具体的に明示される。海底、と言う時点で危険と言うのは言われてみれば確かにそうだ。捕虜とは思えないほど厚い待遇を受けていたからその危険性をすっかり忘れていた。
「自分の事に鈍感なのもそっくりね」
「さっきから一々うるさいぞ」
「血は争えないな」
「図星を刺されると面白く無さそうな顔するところとかもね」
本当に外野がうるさいな。私達姉弟のことを一々弄らないで欲しい。新しいおもちゃじゃないんだから。
渋い顔をする私達姉弟と、やいのやいのと騒ぐ他四人。とても敵の本拠地にいるとは思えない。
ハイハイと手を叩いて場を切り替え、番長に一言謝罪してから話を続ける。
【いつも通りなのは良いことだ。作戦の子細については現状アリウムフルール、お前任せになる。決定的な判断を誤るとは到底思っていないが、慎重にしかし臆病になり過ぎず事を進めろ。正直、あまり心配はしていないがな】
「普段から期待以上の仕事はしてるつもりです」
【全く以てその通りだ。任せるぞ】
いつも通り、慢心ではなく自信を持って答える。それだけの実績と努力を積み重ねて来たつもりだ。そうじゃなくちゃ単身で敵地に飛び込むなんて馬鹿な作戦はしない。
私なら出来るという自信と状況。仲間達が駆けつけてくれるという絶対の信頼から生まれた作戦だ。
それは上手く行っている。あとは私達が海底施設からの脱出を成功させれば、この作戦の7割は成功したと言っても良いだろう。
【それともう一つだけ。『神器』についてだ。パッシオから簡単な話は聞いている。お前が持っているのはありとあらゆるものを弾き返す盾だったな】
「はい。生憎使用方法が……」
【分かっていない。だが、お前の事だ。心当たりの一つくらいはついているんじゃないか?】
うっ、と言葉を詰まらせる。相変わらず、人を良く見ている。教え子である魔法少女達への理解度は番長はとても高く、的確に私達の事を言い当ててくる。その指揮官としての素質と勘には舌を巻く。
隠し事も大体バレているから困るんだけど。
『神器』についても使用方法は分からないけど、それを教えてくれそうな人には心当たりがある。今まではそこにどうやって行くのか分からなかったけど、今の私になら出来ない事はないという自信もある。
【大方、確証が持てないから二の足を踏んでるって感じだろう?】
「ズバズバ当てないで下さい」
【ハハハハ、お前にはそのくらいの方が効く。でだ、まずはやってみろ。お前の心当たりは大体良い線を言ってる事が多い。全くの見当外れでは無いと、私は踏んでいる】
確かに私自身も見当外れだとは思っていない。思っていないけれど確証も無い。それに個人的に少し勇気がいるというのもある。
二の足を踏んでいるとはその通りで、一歩踏み出せば変わりそうな事に私はその一歩を踏み出す勇気が無いでいた。
【半分以上はお前の家柄の話だ。私が首を突っ込むことでは無いのだが、状況が状況だからな。ここぞという時のキリフダが欲しい】
「……わかりました。試してみます」
【悪いな。代わりにとびっきりの増援を用意した。この戦い、私達が勝つぞ】
「期待以上を、期待してますね」
任せておけという言葉を最後に私達は通話を終わらせる。さて、期待をされている以上は答える必要がある。善は急げだ。早速取りかかろう。
「フェイツェイ達と合流しますが、戦闘は無し。合流次第、海上へ」
「OK。他には?」
「私とシャドウは多分しばらく意識が無い状態になるから、パッシオとカレジは3人運んでね」
「任されました」
短い指示と返事で話はまとまって行く。シャドウと愛菜さんだけは首を傾げているけど、説明している時間はあまり無い。まずは私の言う通りに動いてもらおう。
カレジの背中にシャドウと愛菜さん。パッシオの背中に私が乗り込み、『イキシア』を起動させる。接続先はシャドウと、私自身。
「パッシオ、カレジ、移動お願い。シャドウ、行くわよ」
「何処に連れて行かれるかは分からんが、構わん」
さぁ、行こう。もう一度あの花園へ。
あの人が待っているだろう、あの花畑に。




