何処かで芽吹く不屈の話
「まっっったく、目を離すとこれなんだから……」
「すみませんでした」
「面目なく……」
床に正座する2人の妖精を前に腰にてを添えて溜め息を吐く。
反省した様子のパッシオとカレジにこれ以上怒っても仕方がないし、こんな事をしてる場合ではないのはそれはそうだ。
「あはは、パッシオ君も勇者君も相変わらずだね」
「そっちは健在で何よりです。光さんからスパイについてはほんの少しだけ小耳に挟んでましたから」
「お姫様にお世話になってなんとかね。代わりにこの子の事頼むよ。今は味方だからね」
「分かってます」
愛菜さんとシャドウ、パッシオとカレジとが改めて対面し、言葉を交わす。
屈託の無い笑顔で接する愛菜さんと素顔を晒すシャドウ自体は一度交流もある。
愛菜さんの協力もあるし、私が此処にいるのだってシャドウからの依頼を受けたから。
今更ここで敵だの味方だのと過去の話を蒸し返す事はしない。
「良い顔をするようになったなシャドウ。いや、殿下と呼んだ方が良いか?」
「止めろ。そこそこ馴染みのある顔にそんな呼ばれ方されても気味が悪いだけだ」
「ハハハ、人形だのと言ってた頃がもはや懐かしい。今の君は立派な人間だ。俺が保障する」
「そんな昔の話は忘れたな」
シャドウとカレジは元々【ノーブル】に所属していた者同士、知った仲という感じで軽く戯れ合っているのは少し意外だ。
割と【ノーブル】時代から友人関係だったのだろうか?少なくとも虫はあってそうだ。
「さて、カッコ悪いところを見せちゃったけど、改めて。仰せの通りにお迎えに上がりました、お姫様」
「ホント今更カッコつけても遅すぎ。でも、ありがと」
場を仕切り直すように咳払いをしてから、パッシオはやたらとカッコつけて恭しく礼をすると、私へと手を差し伸べる。
カッコつけても遅いけど、まぁそういう茶目っけもパッシオらしいと言えばらしい。
くすくす笑いながら、パッシオの手を取り、そのままヒョイっと抱き上げられる。
いつもの定位置というやつね。
「絵面だけは絵になるわ。絵面だけは」
「情緒もへったくれもないな」
「姫様の優しさが目に染みます」
「君達、僕に辛辣過ぎない??」
三人から散々な評価を受け、酷いもんだと笑うパッシオ。
うんうん、いつもの感じだ。事態の進展の手綱をイマイチ手繰り寄せられてなかった気がしてたけど、こうなると何とかなる気がして来る。
変にネガティブな発想は何処かに行ってしまいそうな心強さ。安定感。私が一番前を向ける場所は此処だと改めて認識する。
「パッシオ、カレジ。他に海底施設まで降りて来たメンバーはいる?」
「ハッ。フェイツェイ殿とグレースア殿が」
「二人は僕らに代わってショルシエと戦っているよ。加勢をした方が良いと思う。この戦力なら、通路にいる魔獣達は問題無く蹴散らせるし、最短距離で行こう」
合流を喜ぶのもそこそこに、次の目標を立てる。外にいたパッシオとカレジが合流出来たなら情報を仕入れられる。
それに基づいて次の行動を立てれば状況をより良くする事が出来る筈だ。
「あー、あとそうだ。番長から伝言を預かってるよ」
「番長から?」
さっさと行動指針を決め、いざ動こうとしたところでパッシオからもう一言。どうやら番長からの伝言らしい。
恐らくは協会に残って、何らかの指揮を執っているんだろうけど、私になんだろうか。
「忘れてるだろうから伝言をしておく。『イキシア』を使って連絡が取れるようになったら、連絡をしろ。だってさ」
「……」
「番長殿の予想は的中していたようですね」
『イキシア』の能力について、また完全にすっぽ抜けていた。
『イキシア』の能力は何処にいても繋がる能力。通話は勿論。インターネットも海中だろうと地中だろうと問題無い。
GPSも拾えるから、今回の作戦はそれを利用した強襲なはずだけど、さっき言った通り『イキシア』は電波が無くても通話が可能だ。
ただ、こちらから信号を発して通信や発見は出来ても、向こうから通話や連絡をする事は出来ない。
あくまで『イキシア』からの通信を繋ぐ事が出来るだけ。連絡のやり取りをするなら、こちらから連絡しないとダメだ。
「切れ者のようで肝心なところが抜けてるのもそっくりね」
「うるさいぞ」
愛菜さんからの茶々入れにシャドウがめんどくさそうな顔をして返しているところで、私は黙って『イキシア』を起動して番長に電話をかける。
当然だけどコール音が響いて無事、電話は繋がったみたいだ。
【やっと連絡を寄越したな、おっちょこちょいめ】
「ぐうの音も出ません」
数回のコール音が響いた後、早速小言を言われて久々の番長の声が『イキシア』越しに聞こえて来た。




