何処かで芽吹く不屈の話
巣を作るタイプの蜘蛛型魔獣以外にも、当然ながらショルシエがばら撒いた節足動物型の魔獣達はあちこちに配置されている。
出来る限りそれらとの戦闘も避けつつ、行けそうな場合は手早く相当する。
特にイモムシ型の場合は動きも遅く、特殊な能力と言えばこれまた糸を吐いてくるくらい。
これなら遠距離から魔法を放てば十分だ。
こういった節足動物型の魔獣達は、どうやら数パターンに分かれるようであり。
アリやハチなどの群れでの巣を作り、広域に狩りを行う種。
ハエトリグモやカマキリ、トンボのように、単独で周囲を徘徊し狩りを行う種。
周囲を飛び回り、毒性を含んだ鱗粉を振りまく蛾や蝶とその幼虫。
などのようだ。
魔獣そのものが、本来の生態から大きく外れないという特徴があるし、どうやら昆虫型魔獣達は互いを捕食し合っている形跡もある。
社会性を持ち、群れでの狩りを行うアリやハチを筆頭の最上位に、捕食者と被捕食者の自然界の上下関係や習性も大きく変わらないと見ていいと思う。
意外にもこの辺りの生態にはシャドウが詳しく、彼を主導にどういった魔獣であれば突破を判断するか決めていた。
「カマキリか……。流石に別の道を選ぶぞ」
「さっきから肉食のヤツばっかりね」
「恐らく蝶や蛾のような被捕食者の魔獣はああいうのに殆ど食われたんだろう。自然界のように逃げ場や隠れ場があるならまだしも、コンクリートの通路じゃどうしようもない」
通路をそっと覗き込み、魔獣の有無を確認すると。堂々と待ち構えていたのは体長2mはあろう巨大なカマキリ型の魔獣。
高さは成人男性の背丈ほど。私よりも頭二つくらい大きい。
鋭利な棘が並ぶ鎌に捕まればその場でモグモグと食べられる事だろう。
しかも単体であれば間違いなく昆虫界最強のハンターだ。流石にむやみやたらと挑みたくはない。
「カマキリのカマの速度は0.05秒。高性能なカメラでようやく捉えられるレベルだ。強化されてる事を考えれば、音速クラスで獲物を捕らえる可能性もある」
「……てか、やけに詳しいじゃん。虫、好きなの?」
「……別に好きではない」
ホンマか?とじろじろと見つめるも、シャドウは目を合わせようとしない。
愛菜さんはシャドウの背中で笑うまいとぷるぷる震えている。
敵地のど真ん中にいるとは思えない緩い緊張感の中、カマキリに見つからないよう、十字路を素早く駆け抜け、次の通路へと向かう。
「だいぶ出口には近付いてるわ。根気よく行きましょう」
「最悪、エレベーターが動かなくても何とかなるメンツなのが幸いだな」
「あぁ、乗って来たあのエレベーターね。アストゥートとショルシエの性格の悪さから考えると、壊されてても不思議では無いわよね」
あの二人の性格の悪さは折り紙付きだ。特にアストゥートのような小物な性格の持ち主は、私達を妨害してやろうと、海底を脱出するエレベーターの破壊くらいならやってる可能性は高い。
シャドウの言う通り、私とシャドウなら問題ない。私は障壁で、シャドウは土属性の魔法でそれぞれ足場を作ればそれでおしまいだからね。
こういう時に物理的に干渉できる魔法は使い勝手が良いわね。
「此処の通路を右に曲がれれば、出口は目と鼻の……」
「退いて退いてー!!」
「逃げてください姫さまーー!!」
「「「ん?」」」
あと少しだと説明する愛菜さんのセリフを遮るように聞き覚えのある声二つが物凄いスピードで進もうとした逆の通路から、聞こえて来る。
つまり、私達の進行方向へ向けて近付いている感じだ。
「げっ」
「うわー」
「……はぁ」
露骨に嫌な顔するシャドウ。呆れた様子の愛菜さん、頭を抱える私。
三者三様の反応を示しながら、此方へ猛スピードで向かって来る妖精二匹と、ハチの大群が私達へ向けて迫って来ていた。
「おい」
「ホントごめん」
「お姫様お付きの騎士君と勇者君かぁ〜。確かにあの二人、真白ちゃん居ないとポンコツそうだよね」
皆まで言わないで欲しい。大体、迎えに来てとは言ったけど余計なお客まで連れて来いとは言ってない。
どうにかしろと目で訴えて来るシャドウと、あれどうするの?って顔をしてる愛菜さん。
しょうがないから、私が対処します、ハイ。
妖精二匹が私達の横を駆け抜けた瞬間。通行を妨げるように通路を全面に障壁を張る。
高速で突っ込んで来たハチの魔獣は突然の壁に回避が間に合わず、次々と突っ込んで来ては地面へと落ち、それを更に障壁で潰し、仕留める。
「いやー、助かった。まさかあんなに速い魔獣がいるなんてね」
「危うく文字通りの蜂の巣にされるところでした」
へらへらと笑うパッシオと、彼なりのジョークのつもりらしいカレジ。
横を駆け抜けてから戻って来た二人と感動の再会……。
「パッシオ!!カレジ!!そこに正座っ!!!!」
とはならず、一発目が私のお説教から始まったのは言うまでもない。




