二人で百人 / 凍風刀華
魔力の弾丸を抜け出た先には当然、ショルシエが操る三本の尾が魔力を纏わせて待ち構えている。
今までと違うのは、その纏わせている魔力の量。
向こう側が歪んで見えるほどの魔力。一撃でも貰えばそれでお終いだ。
全ての攻撃を防ぎ、避けながらショルシエに通じる攻撃をする。
中々な無茶だ。冷静に考えずとも無謀な挑戦ではあるが。
「「出来ないなんて言わないでよ、フェイツェイ」」
「「人の身体で突然喋るのは止めてくれよ」」
相棒にけしかけられる。私達なら出来ると。信じてやまないグレースア。
勿論、私もそうだと思っている。
「「魔法の制御は任せる」」
「「OK。風も氷もフェイツェイ以上に使いこなしてあげる」」
臆する事なく突撃を敢行した私達に、三本の尾は容赦無く殺到する。
一撃目は普通に避ける。二撃目は風魔法で加速して。三撃目は氷魔法で対応。
その後も次々と攻撃を避けて防いで、少しずつでもショルシエへと近付く。
確実に、ほんの少しでも一歩前へ。1m先へ。
「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇぇぇぇっ!!!!!!!!!!!!!」
気が狂ったように無差別広範囲攻撃を乱打するショルシエ。もはや理性や知性は感じられない。
妖精よりは魔獣に近いのではと思えるほどに狂気を振りまくその様は、今までのそれとは違う光景であり、凄まじく苛烈だった。
「「冷静さを失った方が負ける。だよね」」
「「分かってるじゃないか」」
「「郁斗さんにも注意されたしね。一瞬の判断は任せるよ、フェイツェイ」」
魔法の制御はグレースアが。近接戦闘を含めた戦局の判断は私がそれぞれ担当する。
お互いが一つの身体で別々に明確な役割分担をする事で、集中出来る。
そのおかげか、高いレベルのパフォーマンスが長い時間続けられているような気がする。
さっきから紙一重の攻防が続くが、息が上がるような事にもなってないしな。
「何故だ!!!!何故私の魔法が届かない!!貴様らのような矮小な存在にっ!!!!」
「「そうやって見下し続けてれば?私達は上を見上げて、もっと高みに行く」」
何かを見下すという事は自然な行為だろう。誰だって、コイツよりはマシだとどこかで思っている事は多い。
比べる事は悪い事じゃないし、それを糧に出来れば最高だ。だがあらゆる物を見下し、自分の方が上だと思い続けているとそのうちそう思っている者の足が止まる。
自分が上だと思っているからな。頂点にいる者は既に頂点なのだからそれ以上登る必要性は確かに無いように思う。
ただしその頂点は常に更新され続ける物だ。足を止めれば上を見上げ、歩みを止めなかった物達にいずれ追い越される。
気付いた時には追い越された後だ。そうなったらもう遅い。
「「私達は今から、お前を飛び越える」」
一陣の風が私達の身体を一気に加速させる。ショルシエの懐へと飛び込み、『翠嵐』を鞘に納め、居合い抜きの姿勢を取る。
無差別攻撃に集中していたショルシエが急いで障壁を張ろうとするが。
「「八輪一同、一瞬に咲け。『月下美人・凍凪』っ!!」」
私の魔法とグレースアの魔法。そして高嶺流。三つが集約した一撃は、障壁を張るその前にショルシエの左前脚を八回斬りつけ、両断する。
「ーーっ?!ぎっ?!ああぁぁぁぁっっ?!?!」
崩れ落ち、痛みに悶え苦しむショルシエが悲鳴を上げてのたうち回る。
痛みそのものに慣れていないのだろう。本当に子供が泣き喚くような声をあげ、斬り落とされた左前脚から漏れ出る魔力の燐光は地下で薄暗い辺りを照らす程だ。
「おのれおのれおのれおのれおのれっ!!!!この私をっ!!コケにした挙句!!私の腕を斬り落とすとは!!絶対に殺す!!貴様だけはっ!!!!」
「「それが、お前が今まで蹂躙して来た者達が感じた痛みだ。それでも足りない。アンタのして来た事を考えれば考えるほど、ショルシエ。お前を此処で倒す」」
「おおおおのれぇぇっ!!!!」
吠えたくり、片腕のショルシエが暴れ回りながらこちらに向かって来る。
怒りでとうとう我を忘れたようだ。ヤツの最大の攻撃だろうが、最大の隙でもあるそれを私達は逃しはしない。
「「行くぞ」」
「「OK」」
一つの身体で別々に短い言葉を交わし、私達は次を最後の一撃と決めた。




