二人で一人 / リターンマッチ
だからと言ってここで終わるつもりは毛頭ない。こちらだってこの戦いに備えて鍛えて来たのだから。
「伸びろ!!『真竹』ッ!!」
「うらららららっ!!」
『鷹の目』で見つけた障壁魔法の弱いところを刀身が伸びる高嶺流の技で貫こうと試みる。その意図に合わせて、グレースアも魔法を乱打し、障壁魔法に確実に食い込んだ。
舌打ちしたショルシエは尻尾を1本動かし、魔法を薙ぎ払う。残りの2本は私達へとそれぞれ伸びて、私達を分断するような動きを見せる。
「策にハマるなよ!!」
「分かってる!!」
私は空中を飛び交いながら、グレースアはスケートリンクのように足元に広げた薄氷の上をスケートシューズ状に変化させた『ネーヴェ』で滑りながら回避する。
お互い、それぞれの声が届く位置にいることを把握しながら避け続けるのは困難だが、ショルシエが分断を狙うという事は私達の何が厄介だと言っているようなものだ。
ショルシエにとって、私の剣技よりも、グレースアの変幻自在の高速生成される氷魔法よりも私達二人の連携こそが最大の脅威だと認識している訳だ。
そうなれば、何が何でもここを崩すわけにはいかない。
「風に舞え!!『楓』ッ!!」
ショルシエの尾の追撃を掻い潜り、一瞬の隙をついて風の斬撃を飛ばす。勿論、今までの風の斬撃では無いし、悠さんが見せてくれた高嶺流の魔法剣技とも微妙に違う。
風の斬撃も『楓』も魔力で操作した風の斬撃を幾つか飛ばすという技だが、今回は敢えて斬撃を一つに絞った。
ばらけさせてもショルシエには届かないことは明白。なら少しでも一撃の威力を上げるべきだろう。
そうやって変化を加えられた私なりの高嶺流剣技『楓』はその名前の通り楓、或いは紅葉のような手のひら型へと変化し、斬撃や刃というよりはノコギリのように回転しながらショルシエの障壁へとぶつかる。
ガリガリと障壁を削り、食い込んでいく様子はこの戦法が決して間違いではないという事を示しているだろう。
『古い魔法』である高嶺流を、現代流の魔法少女風にアレンジして行く。これが悠さんの言っていた模倣の次にある技術だと思う。
古いものを古いまま、元あった形で残して行くのも大事な事だ。だけど、技術とは進歩して進化していくものでもある。悠さんが私に求めていたものはきっとこういう事だと思う。
これが、私の使う高嶺流だ。
もう一度『翠嵐』を振るい、『楓』を飛ばす。障壁をこれ以上削られたくはないのか、飛んで行った『楓』を破壊しようと尾の動きが変わるが、それは下から吹いて来た粉雪に触れて凍り付いた。
「小賢しい!!」
「搦め手の使い方なら最高の教師がいるもんでね!!」
それは違いない。思わず笑ってしまいそうなグレースアのセリフを聞きながら、追加で障壁に激突した『楓』。
その横では凍り付き、動けなくなった3本の尾を力任せに動かそうとしたところで、蜘蛛の巣のように地面や壁、天井から伸びて来た氷柱により更に強固に固定されている。
変幻自在に形を変えられ、生成が高速なグレースアの氷魔法は真白の障壁魔法に割とよく似ている。
違いを上げるなら、障壁はより防御や妨害に、氷魔法は攻撃や援護により向いていると思う。
だから、グレースアの氷魔法は真白のそれと比べると攻撃的な側面が強い。今も『ネーヴェ』を巨大なハンマーに変えて振りかぶってるしな。
「フェイツェイ、風!!」
「当て損ねるなよ!!」
強烈な追い風を拭かせてハンマーをグレースアの細腕でも振り抜けるようにしてやる。
そうしてグレースアが振り抜いた氷のハンマーは3本の尾と、障壁を削る『楓』を巻き込んで障壁に大きなヒビを入れる。
あともう少し。そう思った時。
「ガアアァァァッ!!」
ショルシエの唸り声が魔力を伴って発され、私達は壁際まで吹き飛ばされる。翼で姿勢を整えられた私に対して、グレースアは完全に成す術なく吹き飛ばされており、壁へと強かに身体を打ち付けていた。
「げほっ、げほっ!!」
「大丈夫か?」
「うん、平気。それにしても面倒。時間を掛ければ絶対に勝てるから、防御にめちゃくちゃ力入れてる」
「あぁ、今までみたいに下手に攻撃するより、私達の攻撃そのものが通らないレベルに防御を固めてる。それだけ、私達の連携が有効だってことでもあるがな」
今回、ショルシエは積極的に攻撃して来ている訳では無い。私達を追い立て、その結果攻撃を当てることが出来れば良いという風に見える。
その分、防御に尋常じゃない力を入れている。私達だってかなり実力を上げたつもりだ。それだというのに工夫に工夫を重ね、針の穴に糸を通すような事をして行かないと障壁にヒビも入れられない。
時間が経ち、『大海巨鯨 リヴァイアタン』が復活すれば【ノーブル】の目的は大よそ達成されるのだろうし、ショルシエ個人としてもその方が都合が良いという話もしていた。
ショルシエからすれば今回の戦いは時間を掛ければ掛けるだけ、勝手に勝利に近付く。長期戦で私達が不利なのはいつもの事だが、今回はそれを最大限に活用した戦術を取って来ているのが面倒なポイントだな。
今までのように遊びで私達を戦ってるわけではない、というのは評価されていると喜ぶべきなのか、隙が無くなったと嘆くべきなのか、悩むところだよ。




