二人で一人 / リターンマッチ
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「しかし、そうだな。認めよう」
怒りの形相を収めることなく、3本の尾をゆらゆらさせながらショルシエは唐突に口にする。
突然過ぎると同時にその言葉と共にショルシエが今まで以上に魔力を放出し始める。
なんて魔力だ。あのバハムートから感じた以上のヒリついた魔力が肌を刺し、重圧が全身を襲う。
「貴様らは脅威だ。放置しておけばこの私の目的すら挫いて来る。それに、ここに来て【ノーブル】の作戦をめちゃくちゃにされては私も困る」
空気すら歪み、ショルシエの姿の視認すら難しくなっている中で赤黒い魔力がショルシエの周囲を取り囲み、彼女の目が同じ色に輝き揺らめきだす。
今までとは明らかに違う変化に私もグレースアも警戒を高める。一体何をするつもりなのかと思考を巡らせながら、緊張感で伝う汗を拭い。
そして、その瞬間は訪れた。
「本気を出してやろう。貴様らを徹底的に蹂躙するためにな。これが妖精界の魔法の極致の一つだ。――『魔力解放』」
『魔力解放』の一言と共に、その変化は一瞬で訪れた。
膨れ上がるショルシエの肉体。人の身体を保っていたはずのそれは獣の形へと変貌する。
パッシオの人型から本来の姿になるそれとは過程や方法が違うのだろう。
スムーズに変化していたパッシオのそれに比べて、ショルシエのそれは見せつけるようにゆっくりと変化して行き、その身体を巨大化させる。
高さは目測3m。生き物としては相当に巨大な狐のような姿を取ったショルシエはその獣の顔をニタリ歪め。
「死ね」
一瞬で並の魔法少女が姿形も残らないだろう程の魔力の塊を叩きつけられた。
「――ッ!!」
考えるより先に身体が動いた。それはグレースアも同じらしく、複数に分割している『ネーヴェ』を一つにまとめ、布状に広げてそれを幾重にも重ねるようにしている。その隙間には氷の壁を張り巡らせ、完全な防御態勢。
対して私は修行により強化された『翠嵐』を構え。『鷹の目』で魔力の継ぎ目を探す。魔力の塊とは言え、薄いところと濃いところ、強いところと弱いところがある。
『鷹の目』とはただ視力を上げるだけじゃない。そう言った敵の弱点を視覚的に理解する魔法だ。
ただこれだけの魔力の塊。弱いところとは言ってもただの魔力を纏わせた斬撃では両断することは敵わない。
だから、この判断は咄嗟だった。
「――頭を落とせ」
刀身に一瞬で注ぎ込める魔力をありったけ注ぎ、暴風を巻き起こしながら『翠嵐』を振り抜く。
「『椿』ッ!!」
放った技は高嶺流の技である椿。一番最初に覚え、唯一練度が高いと言えるこの技。
本来、高嶺流は少ない魔力で高い威力を引き出す魔法だ。一般人でも極めれば扱えるという『古い魔法』を私達魔法少女の間隔で魔力を注ぎ込んで放ったそれは、突破不能とも思える魔力の塊の一部を斬り裂いた。
「フェイツェイ!!」
「しっかり捕まれよ!!」
阿吽の呼吸で飛び付いて来たグレースアを抱え、魔力の塊を斬り裂いて出来た隙間に翼を思いっきり叩いて急加速した私達が飛び込む。グレースアが布状に展開していた『ネーヴェ』は私達を覆い、魔力に触れてしまった時の防御策として機能した。
なにせ魔力は水で例えられる通り、隙間が空けば時間差で埋まって来る。量が多ければ埋まるスピードも速い。
斬り開いた隙間を抜けられるかどうかは一か八か。今まで起きたことが殆ど賭けのようなものばかりの中で。
「お返ししてやれ!!」
「勿論!!」
私達は賭けに勝つ。隙間が埋まる前に魔力塊を抜け出した私達は魔法生成速が早いグレースアに反撃を任せる。
すぐさま放たれた巨大な氷の氷柱はショルシエ目掛けて放たれる。
「本当に忌々しい小娘共だ」
しかし、それはショルシエが張っていた分厚い障壁に阻まれた。今までなら油断していただろう一撃に対して備えている。
本気というのは伊達ではないらしい。私達を相手取るにあたって、油断も隙も見せるつもりは無い様子だった。
作者の伊崎です。
日頃より本作、『魔法少女アリウムフルール』をお楽しみいただきありがとうございます。
以前、仕事が多忙なため不定期にお休みしますとのお知らせを致しましたが、こちらをしばらくの間不定期の更新とさせていただきます。
理由は以前のとおり、現在作者の仕事が大変多忙であり、作者の体力体調が万全とは言い難く、安定した更新、並びに作品のクオリティ維持が難しいためです。
このような形になってしまい大変申し訳無いです。以前申したとおり、途中で投げ出すつもりは毛頭なく、最低でも作者のお仕事の定休日である日曜日と月曜日、その翌日の火曜日の更新はするつもりです。
梅雨が明けました。本格的な夏到来です。流行り病により、夏を満喫するのも難しいですが、そんな日々に楽しいエンタメを提供出来るよう頑張ります。
熱中症にはお気を付け下さい。ではまた何かありましたらご連絡いたします。
2021/07/16
伊崎詩音




