魔法少女戦線
「埼玉ってぶっちゃけなにあんの?」
「私の地元バカにしてる???」
埼玉行きへの飛行機の中で碧ちゃんに言われた一言に少々ムッとしながら、埼玉の名物を頭に浮かべてみる。
観光地と言えば、私の地元の川越か秩父くらいだと思う。元々ベッドタウンとして発展した街が多いから住宅街が中心なのよね。
名物と言えば、そうね。草加煎餅、春日部焼きそば、十万石まんじゅう、うどん、あぁ、ゼリーフライなんてのもあったわね。
「ゼリーフライ、ってあのゼリーですか?」
「違うわよ。おからをコロッケみたいに衣をつけてフライにしたやつ」
「なんか地味ね」
「パッとしねぇな」
ひと様の地元に地味だのパッとしないだのとのたまう朱莉と碧ちゃんの頭をぱちんぱちーんと小気味よくひっ叩いておく。
地味言うな。私達の街よりよっぽど都会よ都会。東京にも今でも比較的自由に行き来出来るしね。
10年以上前と変わらず、埼玉は東京に仕事に行く人のベッドタウンとして多くの人口を有しているわ。
規模も人も、私達の街よりもずっと大きいんだから。
「東北の片田舎ですからね。福島は街も点々としてますし」
「一つの都道府県で街が5つ以上に分かれてるのは福島と北海道くらいよ」
「他の県は県庁所在地+2〜3くらいなんだっけか」
埼玉はさいたま市、川越市、川口市のあたりがまるっとひと塊になって大きな街として機能している。
人口こそ多いけど、県の大きさ自体は小さい方だしそういった県は県庁所在地を中心に発展していったみたい。
東京も23区は残ってるけど、それ以外は街としてはあまり機能していない。
私達の街で言う倉庫街的な役割のようだ。
「しかし真白が埼玉生まれねー。てっきりあの街で生まれ育ったとばかり思ってたけど」
「……父と折り合いが悪かったのよ。母は亡くなってたし、実家に帰る意味が無いなら、違う街に行こう的なノリだったはずよ」
「そういうとこの行動力は昔からなのな」
おっしゃる通りで言い返す言葉もない。
なんて雑談をしながら、私ちらりと飛行機の窓から外を見る。眼下には関東平野が広がり、かつての街並みが自然の中に飲み込まれていっているさまを見ることが出来る。
ちらほらと発展した街並みも見えるけれど、やはり10年前の風景とは随分と様変わりしてしまっていた。
これは世界各国で見られる光景で、特に発展国に著しい衰退の跡が見られる。
それだけ、人類は魔獣という脅威に劣勢を強いられた証だった。
「しっかし第二回交流会という名の潜入ね。番長達も大胆な事考えるな」
「以前に向こうから協会の視察に来てますからね。こちらが魔法庁に行くこと自体に不自然な要素は無いですし、断る理由がないんだと思いますよ」
今回、埼玉へと向かう理由は2つ。というか2グループが正しい。
実家へと帰省をして、色々な確認をしたい私と美弥子さん。そして、東京にある魔法庁本部へと向かう碧ちゃん、朱莉、紫ちゃんとその保護者として、玄太郎さんがいる。
玄太郎さんは東京にいる本社への用事もあるんだけど、忙しい光さんの代役として『魔法少女協会』関係者という肩書きでの動向だ。
美弥子さんは勿論私の保護者役。パッシオとカレジ?あの2人なら今頃飛行機の荷室で仲良くケージの中よ。
私は何とかなったらしいけど、あの2人は本当に人間じゃないから飛行機に乗るにはそうするしかなかったのよね。
後で恨み節を言われる前に食べ物でご機嫌を取らないとね。
「真白様、目的地はこちらでよろしかったですか?」
「うん、大丈夫」
「かしこまりました。お車の手配をしておきます。旦那様は荒川経由の移動でよろしかったですか?」
「あぁ、船はウチのを使う。連絡をしておいてくれ」
「かしこまりました」
今回、付いてきた使用人は美弥子さんだけ。忙しそうに飛行機内を歩き回り、スマホで連絡を取っているようだ。
なお、当たり前のようにしているけどこの飛行機は諸星家所有のプライベートジェットだ。内装から何から、一般的なそれとは全く違うということだけ言っておく。
ここら辺はいつも通り諸星クオリティです。
「お嬢様の金銭感覚に侵食されてる自分が怖いわ」
「私達庶民なのに……」
諦めて庶民組。私達の半数はお嬢様だし、運営側が諸星だからね。




