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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
アリウム・コワニー

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こちらでされてる密やかな話

はぁぁ、と一通りの今日の業務を終えた私は大きく息を吐いて、愛用しているデスクチェアに深く腰掛ける。


腰が痛くなりにくい高価なそれは存分に力を発揮し、普通なら長時間座り込んでいた私の腰は未だに何とか保っている。


20代で腰を痛めたくは無い。その辺りは流石の諸星とあって、職場のデスクワーク用品ですら良いモノを揃えている。


従業員の心身を守る事こそが最大の効率化とは光さんの金言だ。まさしくその通りだと思う。

まぁ、お金に困らない諸星だから出来る事であって、一般の企業で同じことを出来るのかと言われれば、難しいだろうが。


なにせデスクチェア一つに10万近いお金を使っている。普通の会社では無理だ。

中には仕事の効率化のために高性能なパソコンを用意してもらい、モニターも3枚ある専用デスクを作り上げている猛者もいる。


……ちなみにこれは雛森先輩のことだ。あの人は生粋のパソコンオタクだからな。


そんな雛森先輩も、今は病院のベッドの上。未だに目が覚めないらしい。

無理もない、脳への過剰負荷で脳出血までしたとのことなのだから。


担当した医師からはあと少しでも魔法を使えば次は無い。むしろ今回のことで生きていること自体がラッキーなことだと告げられている。


同時に身体の何処かに麻痺が残る可能性や、このまま目を覚さない可能性もあるとまでな。


これらの事は魔法少女達には伝えていない。不用意に責任を感じさせることや不安を増長させることは伝えない方がいいからな。


最終的には伝える事にはなるだろうが、タイミングだ。今は彼女達に目の前の事柄に集中してもらう必要がある。


朱莉と碧はお互いが持つお互いに必要な部分の共有を進めている。

バハムートの魔力が朱莉の身体にどんな影響を及ぼすか、メモリーの力を引き出すコツ。それぞれ重要な事だ。


紫は自分の中でブレイクスルー的な何かがあったようだ。以前は指揮を行うことに集中し、攻撃への積極性がどうしても無かったのだが『紫水晶の片眼鏡』の存在もあるのか、随分面白い形に舵を切り始めた。


もし大成した場合、本人の予想よりも遥かに上の実力を手にする事だろう。


千草と要は現在のところは治療と基礎訓練が中心だが、どうやら舞と同じく一度この街を離れる事を考えているようだ。


一縷の望みに賭けた、細い糸を手繰るようなものだが、実例がある以上何かあるんじゃないかと期待もある。

私達も支援をして、魔法具の修復に全力を注ごう。


一番最年少の墨亜は正直なところこの戦いで最も戦線を離脱する可能性があると思っていた。


何せ目の前で慕う姉達が次々と大怪我をして倒れて行く様を見せ付けられていたのだ。

その精神的ダメージは真白と同等にも並ぶだろう。まだ数えで12という歳を考えれば、この仕事から離れるのは当然にも思える。


だが、彼女が求めたのはより専門的な知識だった。銃器の扱い、弾の種類、状況に応じた戦術。

この街には昔からある自衛隊の駐屯地で、恐るべきスピードでこれらの知識を吸収しているようだ。


元々、魔法少女という職を続ける事自体に理由や意欲が無かった方ではあるが、あのショッキングな光景が逆に彼女の原動力になっているようだ。


墨亜は好きや興味のある事にはのめり込むタイプなようだから、一度決断すれば早いだろう。その辺りはあの三姉妹はよく似ている。


舞はいの1番にこの街を離れる決断をした。このスピーディーさは彼女の長所だ。

理由は簡単。自分の実力不足を痛感したから。


ドンナに師事はしていたけど、福岡とここはどうしても離れている。

より実力を伸ばすには直接の指導が1番だ。福岡へ飛ぶ事自体は真っ当なものだし、彼女の長所を伸ばすには最も適しているだろう。


それに、飛行機で飛び立つ前に何やら顔付きが変わっていた。

あれは覚悟を決めた顔だ。彼女はあのまま己の道を邁進する事だろう。


そして、大問題だった真白だが、これは蓋を開けて見ればビックリするほど元気だった。


代わりに鬼のように無理難題を投げ付けて来る。人間ではないパッシオとカレジへのスマホの所持やら、埼玉への移動申請やら、外泊申請やら、雛森先輩への手術立ち合いなどなど。


彼女はまだ自分の戸籍があやふやで宙ぶらりんな事を忘れてないだろうか。

しかも最速でとの要望だ。1番のワガママお嬢様なのは間違いない。


まぁ、文句を言っても必要だからやっているのだろう。彼女はそういうタイプだ。感情の整理がついたのなら、まずは良しとする。


「……帰るか」


そんな魔法少女達それぞれの動きを振り返り、私は私以外がいなくなったオフィスを見渡して立ち上がる。


もう少しで0時を回る。あまり残り過ぎるとそれはそれで光さんから小言が出るんだ。あの人だってオーバーワークだろうに。


そんなことを考えつつ、荷物をまとめたところでスマホが鳴る。

画面を見れば、着信が来ている。相手はドンナ改めて東雲(シノノメ) 音那(オトナ)からだ。


こんな夜更けになんのようかしら?


「もしもし?音那?どうしたの?」


「急ぎの用件よ芽依。東京本部とマギサがやられたわ」


それは耳を疑う話だった。

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