高嶺
だが辿るにしてもこの怪我だ。動き出すにも半月は掛かるだろう。
無茶をした結果で、あの時はアレが最善手だったと思っているし後悔も無いが、こうして動きを制限されてしまうのはキツいな。
「とりあえず、今すぐ動ける私は番長達に協力してもらいながら、この街に前からいる元魔法少女の人達に話を聞いて見るよ。此処にも立ち寄ったみたいだし」
「悪いな」
「後でラーメンよろしく〜」
自由の効く要が私の代わりに動いてくれるようで迷惑をかけると頭を下げると、後で奢れと手をヒラヒラされた。
ラーメンくらいならお安い御用だ。しかし、生粋のお嬢様だった要も随分と庶民感覚に染まったものだ。最近はファストフードがお好みらしい。太るぞ。
「千草お姉ちゃんの剣、直るの?」
「分からん。が、絶対に直すつもりでいるから安心しろ」
「うん」
大人しく話を聞いていた墨亜の頭を撫でてやり、グランディー氏が辿ったと思われる名古屋から仙台までの道筋を視線で追う。
現代人感覚で言えば、歩いて進む距離ではない。恐らく歩き詰めで軽く半月以上はかかるんじゃないだろうか。
江戸時代のような、交通が馬か徒歩だった時代の人ならさておき。私達は長距離を歩くことに慣れてないからな。
魔獣とも戦いながらとなると、恐らくひと月近い。
ホント、無茶苦茶な事をする人だ。それをなぞらえる必要があるかも知れないと思うと、少し溜め息が出そうになる。
弱音なんて吐くヒマはないから、吐かないけどな。
「怪我が直ったとしたら、まず向かうのは福島かな?」
「だろうな。そこから飛んで仙台になるが……、まずは近場とグランディー氏が最後に訪れただろう地域に向かうのがいいと思う」
「そこでその時の魔法具の状態を知ってる人を探して、かな。それで仙台近郊で魔法具が直ったのか、それまでの道中なのかが分かるもんね」
アテの無い旅路になりそうだ。飛行機を使って街から街へ移動しても良さそうだし、番長達元魔法少女の繋がりを利用すれば、時間さえ掛ければ後々ある程度の情報は出て来そうな話だが。
恐らく決定的なものは自分の脚で探す必要がある。
それが道中にあるのか、はたまた仙台の先か。そもそも存在しないのか。
蓋を開けただけでは分からない。中身をかき混ぜて取り出さない限りはな。
つまるところ、だ。
「私も生身で旅に出る必要がありそうだな」
「その時は付き合うよ。ダメって言っても無駄だからね」
私達も生身で魔獣が蔓延る街の外へと旅立つ必要性が大いにありそうだ。
まずは情報を集めなければならないが、さっきも言ったように最終的には自分の脚が頼りになる。
というか、それしか無くなるだろう。
無茶なのは百も承知。既にやった奴がいるんだ。2人で行く分安全だろう。
「失礼いたします」
初期の情報収集を要と番長達に任せ、私は怪我の治療に専念。これは確定だなと考えていると、ノックが聞こえたので返事をして中にその人物を招き入れる。
入って来たのは十三さんだ。恐らくは墨亜の迎えに来たのだろう。この後、また駐屯地での勉強をしに行く予定だからな。
「もう時間?」
「えぇ、お約束の時間でございます。……おや?そちらの地図は」
その十三は墨亜にニッコリと笑いかけてから、私達が広げていた紙の地図を珍しそうに見ている。
紙の地図なんて今時自宅で広げる人なんてそうそういないだろうからな。
最近はスマホやタブレット、パソコンやカーナビ等で確認するのが大半。紙製の地図なんてアイテムは最早レアと言えるかも知れない。
それに何故か十三さんが反応を示していたのが私達も不思議だった。
「何かお分かりに?」
「そんな大層なことじゃない。むしろ可能性があるかを確かめに行く、その計画を立てていたところだ」
「成る程、成る程。しかし仙台でございますか。懐かしいですね」
「知ってるの?十三さん」
仙台の文字を見て懐かしむ十三さん。そう言えば、確か宮城県出身の人だったな。
ウチの使用人の多くが十三さんと同郷だと聞いているけど、昨今では一度街から離れると戻るのは一般人には難しい。
故郷の地名を久々に見て、嬉しいのだろうか。
「ええ、今の地図にはもう名前はありませんが、仙台に近い名取という市の側に笠山という街があったのです。そこが私の住んでいた街なのですよ」
今はもう無い、と言うことは恐らく魔獣に滅ぼされてしまった街の一つなのだろう。
察した私達の顔色は曇るが、当の本人は何でもない様子でニコニコとした表情で地図を眺めていた。




