高嶺
「焦っても良いこと無いよ?」
「分かってはいるさ。ただまぁそれでもな」
焦っても仕方ないのは頭では理解しているが、立ち止まっている暇が無いというのも事実だ。
多くの仲間達が次に勝利を勝ち取るために動き始めている中で、私一人だけが停滞。下手をすれば後退している。
真白ですら、言ってしまえば今の苦しいところを乗り越えれば真白はきっと更に強くなる。そんな気がする。
本人からすれば他人からの無責任な発言かも知れんがな。だが、それくらいのことはしてくれると誰もが信じている。だからこそ、皆は自分の事に集中している訳だ。
真白なら大丈夫とな。
「何をすれば良いのか、何が出来るのか、皆目見当がつかないというのも焦りの原因なんだろう。ただ寝ているだけなのが性分に合わないだけじゃない、妙な焦燥感があるよ」
「とは言っても、出て来た情報がまだ曖昧だもんね……」
一応、既に番長からはこういう話がある。というものだけは聞いている。それが確かなのか不確かなのかすら分かっていない曖昧で眉唾なものだというのが問題だ。
藤姉さんの師匠、『絶剣の魔法少女 グランディー』は魔法具を一度破損させているのは確かであり、数ヶ月後には魔法具を直してした。
これは間違いなく事実であるらしい。藤姉さんが嘘を言うとは思わないし、不確かなら不確かだとハッキリ言うハズだ。
だが、問題のその方法に関してまでは残念ながらほぼ知らないという事だった。
「しかし魔法具無しで戦うための武者修行とは、世界を救う程の魔法少女はやることがぶっ飛んでるな」
「それで何でか知らないけど、魔法具を直して帰って来るんだもん意味がわからないよ」
どうやらグランディー氏は魔法具を破損させてしまった後は一度戦線から離れ、それでも戦うために単身生身で魔獣が蔓延る街の外へと旅に出たんだとか。
周りの静止を一つも聞かず、泣いて止めてくださいと頼み込む藤姉さんに『破絶』の二つ名を与えて旅に出て、数ヶ月後にはケロッとした顔で戻って来た時はそれは凄い騒ぎになったらしい。
主に藤姉さんがキレて。
「何かヒントがあればと思ったが、想像以上に何も無いとはな」
「諦める?」
「まさか」
諦めるワケがない。自らの行動理念をヒーローと認めた時点でその単語は私の中から取っ払ってある。
地べたを這い、泥水を啜ろうとも私は私として最前線に立つ。
それが私が魔法少女をやる意味だからな。
それに、そんな事をしたら隣に立つ相棒にどやされる。それが一番効くかもな。
目を合わせ、お互いに唇を上げると要は鞄からノートと大きな地図を開く。
「さて、じゃあ先人の道筋を辿ろうじゃありませんか」
「成る程、その先で何かあったから魔法具が直った可能性は確かにあるな」
地図はこの街を含めた東北地方の地図だ。最新の物で、街の表記が昔と比べてずっと小さくなっているのがこの10年で人類がどれだけのダメージを負って来たのかを物語っている。
さて、そんな久々に見る紙の地図で何をするのかと言えば、グランディー氏の足跡とやらを辿って行くのが順当なところだろう。
何を隠そう。武者修行の旅に出たグランディーは愛知県の名古屋市から、東北へと足を運んでいる事が分かっているからだ。
何せただでさえ有名人だ。各地に散っているとは言え、魔法少女同士のネットワーク自体はその頃にも多少は存在していたらしく、目撃の情報があったようだ。
番長と藤姉さんが言うには、名古屋、浜松、鎌倉、多摩、さいたま、宇都宮、那須、白河、などと今も残る大きな街に寄っては補給と休養をして、それからまた次の街に向かう事を繰り返していたらしい。
そして、その最後の目撃情報がーー。
「宮城県仙台市、か。車や新幹線があればここからなら決して遠くないな」
「問題はここから何処へ向かったのか、だよ。それにもしかしたらここに着くまでには魔法具がもう直っていたかも知れないし」
この街からさらに北にある宮城県は仙台市。かつては城下町として栄え、東北唯一の政令指定都市だった街だ。
今でもこの街より大きく、人も物資も豊富な東北の中心地。
番長達が短期間で集めた情報はここまで。あくまで目撃情報だから、どの段階で魔法具が直ったのかも分からないし、以前としてその方法も全く不明。
だが、この道程を辿る価値はありそうだ。




