キャンパス
どうして今までこんな大事な事を忘れていたんだろう。魔法少女をするうえで始めた理由というのはとても重要な事だと思う。
それを変に恥ずかしがって、斜に構えた挙句、目的と手段が曖昧になって初心を忘れるなんて。
「うんうん、良いわね。ちゃんと思い出せたのならそれを大事にして。今、貴女が悩んでいることの大半はそれを忘れなければきっと解決出来る」
嬉しそうに笑うお母さんを見て、私はやっぱりこれで良いんだと実感する。私のやりたい事にちゃんと向き合って、それでいて皆と一緒に戦う。
皆と歩幅も歩くペースも違う。さらに言えば将来の道筋すら違う。
番長さんと雛森さんが言っていた「今は同じ道を進んでいるだけだから、ちゃんと自分の道を歩け」っていう言葉の意味もようやく分かりました。
今、私達は共通の敵を目の前にしている事で歩幅や歩く速度は違くても同じ方向を向いています。
手を取りあって、声を掛け合って、【ノーブル】という強大な敵を倒すことを目下の目標としている私達。
じゃあ、もし【ノーブル】を倒したその後は?
明確な事は言えません。その時の世の中の情勢や、周囲の環境にも左右される事でしょう。ですが、きっと。
私達は別々の道を歩み始める事になるでしょう。
例えば、真白さんは魔法少女を無くす、その未来を勝ち取るためにパッシオさんと共に。
例えば、朱莉ちゃんはより多くの人を助ける為に世界へと視線を向けるかも知れません。
きっと千差万別で、予測不可能な未来。ですが自分の人生、自分がこれから歩む道です。
今は同じ道にいても、きっと何処かで別れ道になります。
ずっと一緒にはいられない。今だけの大事な時間だからこそ、誰かに決めてもらうより、自分で決めて道を選んだ方がきっと良い。
多分そんな意味だと思います。子供なりの、私なりの解釈はそれです。
私は、そんな皆の凄いを応援したいんです。道は決まった。後はやるだけ。
決して主人公ではない立ち回りですけど、元々目立つのは苦手ですし、ちょうどいいです。
色々吹っ切れました。お母さんの言う通り、確かに沢山の人の話を聞いた方がいいと思えます。
その回答が、その人の道。聞けば聞くだけ道しるべになるハズですから。
「さて、吹っ切れた紫にもう一つ注意をしておくわ。貴女と私が選んだ道は同じ、誰かの強みを引き出したり、弱いところをカバーする支援者。言っちゃえば生涯脇役。だからこそ、覚悟しておく部分もあるの」
「覚悟、ですか?」
脇役故の覚悟とはなんでしょうか?
出しゃばるな的な事ですかね?脇役ですからね、主役級の人達を邪魔することは良くないとは確かに思います。
お母さんと私が選んだのは縁の下の力持ち的な立場。最前線にいながら、支援者として影にいるそんな役回り。
人によっては損だと思うかも知れませんが、私はそれがしたいからそれでいいんですけど。
「どんなに脇役でも、自分の人生は自分が主役。自分の人生を、やると決めたその事を守る為に役割を捨てて、主役を張る必要が必ず何処かである」
「主役、ですか……」
「えぇ、必ず。お母さんも自分のブランドを危うく企業に取られそうになった事があるわ。その時ばかりはもう死にものぐるいで動いたわ」
あの時は大変だったわと軽く笑っているけど、実際は本当に大変だったんだと思う。
そういう時に、脇役だからと長いものに巻かれてしまうと本当に大事にしていたものまでめちゃくちゃにされてしまう事もあるということかな?
どうするにしても最後は自分で決めた方が後悔が少ないんだと思う。
たとえ他人に言われた事でも、周りに流されるにしても、そうしようと選択して決定する決意と覚悟をしっかり持ちなさいって。
なあなあのままだとその程度の結果しか出ない、出せない。それを悔やむなら、確かに自分で選んで間違えた方がいい気がする。
きっと、皆は自然とそうやってるんだろうな。今までの私が流されてるだけだったんだ。
それはやめた方がいい。そういう忠告。
「きっと、自分から主人公にならなきゃいけない時が、紫は目の前に迫って来てる気がするの。だから、その覚悟だけはしっかりもって、自分の腕を磨いておきなさい」
「わかりました。……ありがとね、お母さん」
「ふふっ、親くらいには敬語やめた方が気が楽よ?いつも言ってるけどね」
久しぶりに敬語が外せた気がします。そういう誰にでも他人行儀なところも、人目ばかり気にしてた私の良くないとこなのかも。
でもまぁ、しばらくはそれでお願いします。まだ少し恥ずかしいので。




