キャンパス
だって、足並みが揃っているから私達は仲間として、友達として一緒に戦えているんじゃないんですか?足並みがバラバラだったら、一緒に肩を並べてだなんてそんな事出来ないと思います。
「真面目で全体が見えているからこそ、そういう勘違いをしてしまうのかもね」
「勘違い?」
「えぇ、足並みが揃うなんて言うのは基本的に勘違いだとお母さんは思っているわ」
足並みが揃う。そういう感覚や考え自体が間違いで勘違いだとお母さんは口にします。
それを聞いた私は頭の上にはてなマークを浮かべるばかりです。
足並みが揃ってるからこそ、私達は私達最大の強みである連携を活かせているんだとばかり思っていましたけど、それも違うんでしょうか。
「そもそもによ、大前提としてね?あれだけ個性的な貴女達全員の足並みが揃うと思う?」
「……」
盲点だったと言わざるを得ません。確かにそれはそうです。というか、私達はそもそもに足並みなんて一つも揃っていなかったハズです。
1年ほど前、間違いなく私達の足並みはその先端どころか向きも歩幅もバラバラで、辛うじて同じグループにいる私と碧ちゃん、朱莉ちゃん。諸星姉妹として千草さんと墨亜ちゃんがいました。
このグループ二つの仲は別によくありませんでしたし、何ならお互いにさほど興味もないくらいの勢いだったハズです。
今ではその面影も無く、何なら碧ちゃんと千草さんは普通に仲が良いですし、朱莉ちゃんと真白ちゃんは親友と呼べるくらいに仲良しで、墨亜ちゃんと私もよく一緒に訓練したり勉強したりしています。
そこに舞ちゃんや要さんといった新たなメンバーも加わって、いつの間にか一つのグループになっていました。
「グループやチームの良し悪しはね、足並みを揃えることじゃなくて、お互いが上手く噛み合う事よ。例えばそうね、パズル。チーム作りは人間同士のパズルに近いわね」
「お互いの相性的な感じですか?」
「そうそう。性格の相性とか、得意分野とかね。面白いのはこの人とこの人の相性は悪いのに、その間にもう一人入ると物凄くいいチームになったりすることね」
あぁ、多分それは真白さんの事だとすぐに検討が付きましたし、成程と思いました。
パズルというものに当てはめて言えば、真白さんは私達を繋ぐとても大事なピースだったんだと思います。
彼女のおかげで結束し、高め合い、強くなった。これは誰もが口を揃えて言っていることですから間違いありません。
「足並みを揃えるって言うのはね、言っちゃえば全員仲良しこよしで手を繋いで、横一列に進むことじゃない?誰かの抜け駆けも許さないし、誰かが別の方向に行くのも許さない。全員が同じ方向、同じ速度、同じ考えでいないといけない。これって不自然でしょう?」
「なんというか、全員の長所を潰しているというか、互いを監視しているというか、絶対に足が遅いっていうのは分かります」
「決して足並みを揃えるのが悪いとは言わないけどね。どうしても足が遅い子のために、待ってあげることも確かに重要だし、話し合いでアレコレ決めて、全員で向かうのもそれはそれで上手な戦略だけど」
「私達には、絶対に向いてませんね……」
でしょう?とお母さんは笑います。私達はそれぞれの個性が強すぎますから。
思想や得意分野、将来やりたい事から戦う理由まで全員が面白いくらいにバラバラです。
それでも今こうして一緒に戦えているのは、確かにパズルのように上手く噛み合っているからのように思います。
だとすると、このモヤモヤはどうやって解消すればいいのでしょう。私の今回の悩みは私だけが足並みを揃えられていない、そんな感覚から来るものでした。
それ自体が間違いや勘違いだと言われてしまうと、私のこの悩みの解消方法がいよいよ分かりません。
どうしようかと考え込んでいると、お母さんがまた私の眉間を小突いて来ました。
「それよそれ。それがきっと、悩みの種の原因の一つ」
「それ?」
困ったように笑うお母さんが、真面目過ぎるのも考え物ね。誰に似たんだか。と呟いてるのを眺めながら、次の言葉を待つことにします。
それ、とは何でしょうか。




