キャンパス
ぶーぶーと不平不満を漏らしている内にお母さんがあっという間にお茶の用意をして、私の話を聞く態勢を整えている。
どう足掻いても聞くつもりらしい。部屋に戻っても良いんだけど、こうなるとお母さんはしつこいんです。怒ったところで軽くあしらわれるのは目に見えているので、こうなるとさっさと話をした方が早かったりします。
「ほら、観念しなさい。全部話したら案外スッキリするものよ」
「む~~~~」
むくれる私の頬をつんつんとわざとらしく指で突くお母さんを恨めしく思いつつ、用意された席に着きます。だってどうせ逃がしてくれませんし。
お茶を啜ってお母さんをジトっと睨みつけると満足そうな表情をしてるのが恨めしいです。
「で?何に悩んでるのかしら?」
「別に悩みって程じゃないです。自分に嫌気がさしてるだけですから」
「ふーん?」
それだけ言うとお母さんは不思議そうに首を傾げます。ニュースなどで聞く私達魔法少女の戦果や戦績は上々です。勿論、タダで帰って来ている訳では無いことはお母さんたちも知っています。
朱莉ちゃんのお母さんなんかは、朱莉ちゃんが何かを隠しているのは察しているようでしたし。本人の口から語るまでは聞くつもりは無いようでしたので、私達からわざわざ話すことはしませんでしたけど。
あんまり隠し事は得意じゃないですからね、朱莉ちゃんは。バレる人にはすぐバレますけど、本人が喋らないなら、本人で解決する意気込みがあるという事なのを周りもよく理解しています。
私と対応が違うような気もしますが、それは個人個人における性格差から来る対応の違いみたいなものですから、不満を言っても仕方ありませんし。
「嫌気って?貴女は頑張っているじゃない。それは結果に出てる。何がそんなに不満なの?」
「結果に関しては、私自身は別に不満じゃありません。ただ、これが最善だったと納得している自分に嫌気が指しているんです」
「どうして?貴女的には最善だった、それならそれで良かったんじゃない?」
「そのはず、なんです。今はそれで全部飲み込めば良い話なのは分かっています。でも、何というか、喉に魚の骨が引っ掛かっているような嫌な感覚がずっとしてて。私だけが、皆と足並みを並べていないような、そんな感じがしてるんです」
麦茶の注がれたグラスに、表情を歪めた私の姿が映っていてそれがやたらと目につきます。嫌なものは好きなものより先に見つけて目立ってしまうってやつを無駄に実感しちゃいますね。
私だけが上手く行ってないかのような焦燥感。実際、私は皆の成長ペースに比べるとずっと遅いです。
皆が皆、メキメキと頭角を現していくその中で、私だけが停滞している。その焦りもきっとこの胸の内のわだかまりを作っているような気がします。
どんどんと顔をしかめていく私にお母さんはまず、眉間を指で強めに小突いて来ました。
「まずはその後ろ向きな思考を辞めることね。難しいかも知れないけど、貴女が疎外感を感じる理由の一つだと思うわよ。貴女達は基本的に前向きだったり上昇志向の高い子達ばかり、その中で後ろ向きな思考をしてたら、そりゃ置いてかれるに決まってるわ」
「それは、確かに……」
ごもっとも過ぎてぐうの音も出ません。私以外の皆は物凄い前向きか上昇志向で、今の自分に何が出来るかではなく、これから何が出来るのか、何が出来るようになるのが望まれているのか、これをよく考えています。
この筆頭はやはり真白さんです。元々皆が持っている気質を、この傾向をひと際強く持っている真白さんが更に引き上げているんじゃないかなと思います。
やっぱり、私達の中心は真白さんですよね。何度考えてもそう思います。だからこそ、その彼女が折れてしまった事が私達の中では衝撃であり、同時に彼女を心配しながらも彼女は必ず戻って来れると信じているんですよね。
戻って来た真白さんに笑われないようにする、きっとそんな感じで私もどこかでそれを思っているから、今こうして悩んでいるのかも。
「それに、足並みが揃わないのはある意味当然よ。貴女みたいに聡くて人に敏感なタイプはそれを特に感じるんでしょうね」
「足並みが揃わないのは、当然……?」
そして今度は私が首を傾げる番になります。足並みが揃わないのは当然と言うのは、どういうことなんでしょう。
2021年、明けましておめでとうございます。3ヶ日はお休みをいただきましてありがとうございます。
あと新年早々更新遅刻してすみません。
今年も読者の皆様に私なりの面白いを届けられたら幸いです。2周年も近いアリフルをよろしくお願いいたします。




