破壊者の力
諸星のお屋敷で集まった翌日、私は碧に呼び出されて初めて碧が引っ越したマンションへとやって来ていた。
「でっか……。てか、これどうやって入るのよ」
碧のお母さんの雫さんの婚約者、諸星 翔也さんと同棲しているとあってそのマンションは高級マンションのそれだ。
私が住んでいる団地とはわけが違う。なんか入口にパネルがあるし、出入りするには住人か、住人が呼んだ人じゃないと入れないっぽい。
どうすれば良いのかとマンションのロビー前でビクビクしていると、スマホから着信音が鳴り響く。画面を確認したら碧の文字だ。
【よう、そろそろ着いたか?】
「着いたけど、これどうすればいいのよ。ちゃんと説明してくれなきゃわからないんだけど」
【わりーわりー。今開けるから待ってろよ。よし、OK。開いたぜ】
電話に出れば碧の軽い調子の声が電話口から聞こえて来る。こんな風になってるなんて聞いてないんだから、ちゃんと事前連絡くらいはしていて欲しいわね。
高級マンションだってことは知ってるけど、こちとら生まれてこの方団地住まいなんだから勝手なんて一つもわからないんだから。
その苦情を伝えると碧はケラケラ笑いながらロビーのカギを開けたらしい。どういうシステムなのかイマイチよく分からない。
【管理人にウチの名前言ってくれ。何も言わずに行くと警備員すっ飛んでくるぞ】
「そう言うことは早く言ってよ!!」
危うく管理人室の前を素通りし掛けた私は慌てて戻って管理人に要件を伝える。管理人は気の良さそうなおじいさんで、幾つかの質問と電話を少ししてから通って良いですよとにっこりと笑って通された。
妙に緊張するわね。碧の家に遊びに行くだけなのにこんなに緊張する日が来るなんて思ってもいなかったわ。
ピカピカに磨かれた床も落ち着かない。全体的にはシンプルなんだけど、シンプルだからこそお金が掛かってるのが分かる的な?
下品な感じにお金が掛かっているんじゃなくて、上品にまとまってるからこそ高級感があるというか。
庶民の私がそんなことハッキリわかるとは思わないけどね。でも絶対高いわよね。
【エレベーター乗って25階な】
「当たり前のように最上階で笑えて来るわね」
電話は繋ぎっぱなしだった青いから指示を受けてエレベーターのパネルを見ると、最上階がその25階だ。
最上階って一番高いんじゃなかったかしら?ホント、生きてる世界が変わったんだなって思うわね。
あ、でも碧の血筋を考えると妥当なのかしら。碧のお母さんの雫さんて、良いところのお嬢様だったらしいし。
それでも、姉妹みたいに思ってた一人が全然違うレベルで生活をしていることにはちょっと寂しいというか、そんな気軽な相手じゃなくなっちゃたのかなとは、思っちゃうわよね。
なーんて柄にもなく感傷に浸る辺り、リオの件は効いてるのかもね。私としては、私の使い魔だものショルシエに何かされようものなら腕の一本くらい噛み千切るくらいはするだろうって思ってるわ。
だって私の使い魔よ?やってそうだし、そのくらいの反抗心と行動力は持ってるのくらい分かってる。
心配をしていない、というよりは信用しているとかそっちの方に近いわね。
ただでは絶対にやられない。それに、絶対に取り戻すわ。今はそのための色々考える時間だって番長も光さんも言ってたし。
「おっす。わざわざ来てもらってわりぃな。広いから案内するぜ」
「すっかりお嬢様に染まってるわよね。ていうか、ここもしかして……」
「おう、ワンフロア全部がウチの家。いやー、金持ちって何考えてるかわっかんねぇよな」
「今のアンタが言う、それ?」
エレベーターを出てすぐに出迎えられた碧の言い草にツッコミを入れながら、碧のお金持ちの考えることは分からないという言葉自体には同意しておく。
ちょうど私達のトップが世界トップクラスのお金持ちだからね。おかげで何でも無茶が通るけど、振られる無茶も無理難題ばかりだから困るわ。
「で?用ってなによ?」
「相変わらずせっかちだな。ま、さっさと言っておけばお前の中にあるメモリーについてだ。詳しい話はウチの部屋ですっぞ。一応、機密だからな」
で、ここまで来ても呼ばれた理由が分からなかったからさっさと聞いてみると、あっさりとその答えは返って来た。
そろそろ2020年も終わる頃となってまいりました。長期休暇の頃合いはいつも数日ほど更新のお休みをいただいておりますが、今回の年末年始も少しばかりお休みをいただく場合がございますので、なにとぞ。
さて、物語は後半戦へと突入し、一気に散りばめていたフラグの回収や怒涛の展開を予定していますが、読者の皆様に満足いただけるように精進いたしますので、楽しんでいただければ嬉しいです。
2月末にはアリフルも連載3年目に突入します。ブクマも2000件を超えまして、記念の番外編を現在鋭意製作中ですので、そちらも完成次第ご連絡いたします。
少しお早いですが、2021年もよろしくお願いいたします。
2020/12/27 伊崎詩音




