道程
ジッと私達に一斉に見られて、番長はん?といった表情を見せてから、うーん、と考える。
その思考は割とすぐに回答を導き出したらしく、番長は口を開いた。
「そうだな、今更お前達に戦略を変えろと言っても無茶だろう。一年掛けて構築したものをまた練り直すとなったら、同じくらいの時間かそれ以上の時間がかかるからな」
「んじゃどうするんだよ」
碧の言う通り、ではどうするのか、ここが重要なんだから早く言って欲しいわ。
なんで大人ってこう勿体ぶった話し方をするのかしら。結論から言って欲しい。
「話だけで言えば簡単さ。今以上に尖れば良い。お前達が得意とする分野で誰にも負けないくらい強くなれば、【ノーブル】にも十分に対抗出来るはずだ」
「それが出来たら苦労しないわよ」
「だから話だけで言えば、と言ったんだ。極めるってのは簡単な事じゃない。それは私も嫌でも理解している。しかし、有効な打開策が無い以上はこれが最も現実的だ」
私達が今以上に強くなる。言ってる事は単純だけど、簡単な事じゃないのも当然のこと。
私達全員、短期間で相当にレベルを上げている。これ以上のレベルアップは時間をかけて行う必要がある。
短い時間でどうにか出来る伸び代を私達はもう殆ど消化してしまった。
でも、最も現実的なのもコレなのよね。他から人員を借りる事は難しいもの。
他の街の魔法少女はその街で手一杯だから。
「これ以上に強く、か……」
「お前に関してはまず傷の治療と魔法具の修繕方法からだがな。魔法具の方は私がツテを使って手当たり次第に情報を集めてみる。お前は傷をしっかり治せ」
「お願いします」
ポツリと呟いた千草自身、最近一枚壁を破ったばかりの段階で、その上魔法具が壊れてるからハッキリ言って戦線復帰は絶望的。
このまま、裏方に回ってもらう可能性の方が正直高い。
それでも、番長は諦めるなと肩を叩く。何か方法があるかも知れないし、まずはそれらを調べてからという事だと思う。
千草と真白、それにパッシオ。戦力としても指折りの3人が抜ける前提で私達は鍛えないといけない以上、色々考えて取り組む必要はあるわね。
そのための療養期間でもあるのかしら。相変わらず、光さんは抜け目のない人よね。
「ここからはお前達は一旦個人戦だ。個々に合わせて、自分の強みの再認識、鍛え方、進退。考える事は山程ある。時間が足りないのは百も承知だが、お前達の強みは諦めの悪さだ」
全員を見渡して、番長は私達に告げる。
私達は今までお互いの長所を活かし合うための訓練を中心にして来た。常に誰かといた。
それを一旦崩す。崩してでも、私達は急ぐ必要がある。脅威がすぐそこまで迫っていることは私達だって何となく分かっているから。
「その諦めの悪さを存分に見せる時だ。足掻くだけ足掻いて、もがくだけもがいて、その先にお前達は行ける。私が保証する、お前達はやれる」
番長の言葉を聞きながら、それぞれが反応する。目を閉じて考えるのもいれば、手のひらを見つめてるのもいる。
私みたいに爛々と瞳を輝かせるのもいる。相変わらず、性格はバラバラな私達だけど、不思議と後ろ向きなヤツはいないわね。
じゃなきゃ、魔法少女なんてやってないんでしょうけど。
「訓練方法、場所、情報、人。あらゆるワガママと提案をしろ。師匠が欲しければ相応しい人材を探すし、情報が欲しければ探す」
「そのための『魔法少女協会』で、そのための私達大人よ。自由にやりなさい。貴女達なら、世界だって変えられる」
「そういう事だ。まずは休んで何をしたいか考えろ。相談にも乗る」
そう言って番長と光さんはニッと笑う。私達の期待と要求に応えるという自信がありありと見える。
そのくらいの自信を私達も持って良いってことかしらね。
「世界を変えれるだってよ。どうするお前ら?」
「良いじゃない。やってやりましょ」
「無理も無茶ももう何回も乗り越えたもんね。何回やっても変わらない。ね!!千草!!」
「いてて、叩くなよ。でもまぁ、やる価値しか無いからな。やるだけやるさ」
「そうですね。やってやりましょう。しばらく、学校はお休みですね」
「よっしゃー!!やるっすよ!!」
「墨亜も頑張る!!」
全員やる気十分。やってやるわよ。出来ないってどんだけ言われてもね。
だから、アンタも早く戻って来なさいよ真白。アンタがいないと、張り合いがないのよ。
目標で、ライバルで、親友のアンタの事、信じてるわよ。




