侵攻
街中の警報ベルが鳴り響く。
地面の大きな揺れを伴って始まったそれに、街の住民達は大小のパニックを招きながらも、大急ぎで近くの店舗や商業施設などに逃げ込む。
今回流れたのは最上位の警報。全域にいる住民達に直ちに家屋を含めた建屋の中に入る事を促すものだ。
実際の避難には、警察や魔法庁、協会が連動し、安全を担保した上で行われる事になる。
つまり、外にいたら死ぬぞ。というレベルの警報なのだ。
「被害状況確認はまだか?!」
「街の外周障壁及び、その近辺の倉庫街の半径300mが壊滅しています!!」
「近くにいる住民を直ちに避難させろ!!」
突如発生した強力な攻撃に、協会内部では怒号と職員達が駆けずり回る姿が散見される。
外周に張ってある障壁は簡易なもので、B級程度の魔獣なら破れる。
それを飛び越えて、倉庫街にまで被害が出ているとするなら、相手は必然的に強敵だ。
「魔法少女達と連絡は!!」
「全員取れました!!現場に向かわせます!!」
「単騎での突入は絶対にするな!!全員揃ってから戦闘を始めろ!!」
一部の魔法少女達は各々の都合で別行動をしていたため、協会内にいなかったが怪我等はないようだ。
連絡が取れた事を確認した番長に視線を送ると、無言のGOサインを送られる。
のんびりはしていられない。
「っしやぁ、行くぞお前ら!!」
リーダーである碧ちゃんの号令と共に私達はそれぞれ構える。
「『激流変身』!!」
「『ジュエルセット・アメジスト』!!」
「『オープンライブラリー。開け、私の心、私の世界』!!」
「『チェンジ!!フルーレ・フローレ!!』」
ひとまず、その場にいた魔法少女は4人。
その全員が一斉に変身して、協会の窓から飛び出していった。
敵のいる地域は分かりやすい。もうもうと煙が上がっているその方角がそれだろう。
【敵の姿を確認してから戦闘に移れ。未確認の強力な相手だ。迂闊に手を出すな】
「りょーかい。ところで番長的には今回のこれ、どう見るよ?」
【……【ノーブル】だろう。出し惜しみもしなければ、油断も無い。確実にこちらを倒しに来ている】
「オッケー。んじゃこっちも気を引き締めますかね」
移動を開始したところで通信機から番長の警戒を促す指示が飛ぶ。
それに了解したアズールは返事に番長の意見を仰いだ。
これだけの騒ぎを起こせる魔獣なんてそんなゴロゴロいない。
それだけの魔獣を操るないし、自分達で魔法を使う相手なんて【ノーブル】くらいしかいない。
半月前のカレジの襲来から、短いスパンでやって来た【ノーブル】に奴らが攻勢を仕掛けて来ていると感じている。
当のカレジ本人は今日は美弥子さんと行動を共にしている。
カレジ本人に裏があるようには私は感じていないけど、もし動くのならこのタイミングだろう。
美弥子さん達お屋敷の人には何かカレジに異変を感じれば光さんや協会、フェイツェイや私に連絡を入れるようになっているしね。
それに、個人的にカレジの事は信用してあげたい。彼は根っからの悪人じゃないからね。
「パッシオ、誰の魔力がある?」
「ショルシエとクライスは確実かな。あとは分からない魔力が2つある。凄い、嫌な感じだ。その2つが邪魔をしてる」
パッシオが嫌な感じという魔力は私も感じてる。
魔獣の魔力、だとは思うけど酷く淀んでいるというかドロドロとした気配を感じる。
物凄く気持ち悪いというか、顔を顰めたくなるくらいには嫌な気配だ。
「お待たせ!!」
「がうっ!!」
「合流っす!!」
「全く、毎度毎度タイミングが悪い……」
私とパッシオが正体不明の魔力について意見を交わしていると、別行動していたリオ君に跨ってやって来たルビーとクルボレレ、『鷹』の翼を生やしたフェイツェイが合流する。
フェイツェイは毎回毎回デート中やその準備中に戦闘になるのでモヤモヤした表情をしている。
今日もデート中だったはずなのでどうにかして抜け出して来たようだ。ドンマイ。
【私も準備完了!!補助が欲しかったら言ってね!!】
【ノワールもオッケー。いつでも撃てる】
グレースアとノワールもそれぞれ位置についた。機関銃と狙撃、それぞれを役割にする2人の後方支援はありがたい限りだ。
グレースアは狙撃に集中するノワールの護衛も兼ねている。
【準備は良いな!!そろそろ壊滅した倉庫街に出る。視界が開けたら足を一度止めろ】
「「「了解」」」
魔法少女はこれで準備万端。真正面からやり合おうというなら、望むところだ。




