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魔法少女アリウムフルール!! 魔法少女を守る魔法少女の話 + 魔法少女を守る妖精の話  作者: 伊崎詩音
真実と暴虐と黒紫の魔力

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新入り歓迎会

妖精、と言われて思い浮かべるのは多くの人は小さな小人に羽の生えた可愛らしいものを思い浮かべるのではないだろうか。


実はそれは日本人などのイメージであり、妖精、ピクシーと呼ばれるそれの原典はケルト神話などを始めとしたイギリスあたりの民話が元だ。


日本風に言うと悪戯妖怪が正しい認識で、伝わる外観は餓鬼やゴブリンに近かったりと実は実はな事実があるのだけれど、今回指す妖精はそれではない。


先ほども言ったように、妖精と私達の間で通称される種族は異世界からやって来た完全な別種族。

この世界には本来いないはずの生命であり、出会うこともないはずの生き物。


それが何故こちらに来れるようになってしまったのか。ここのところは実は詳細が現時点ではわかっていない。


分かっているのは、妖精界にいた一部の者達が何かをしようとして失敗。その失敗から起こった強大な魔力の暴発が妖精界の一部を不毛の大地へと変え、そして妖精界と人間界を隔てていた世界の壁すら壊してしまった。


その世界に空いた穴から妖精界からすれば酸素と同義のエネルギーである魔力が人間界に流れ込んでしまう。


人間界に流れ込んできた魔力は次々と人間界の自然に影響を与え、自然に住む生き物たちを凶暴な魔獣へと変えてしまった。


魔力で強化された獣達に、人間の科学技術は歯が立たなかった。妖精の法則である魔力で強化された魔獣たちに、人間界の科学法則では効果的な対処策が生み出すことが出来なかったのだ。


人間は必死に魔法を科学的に解明しようと研究をするけれど、そもそも魔法は妖精界の法則。人間界の法則である科学では証明のしようがない。


地球上はあっという間に魔獣で覆われ、挙句の果てには小さな国であれば一息で滅ぼせるような超強力な魔獣、S級魔獣と呼ばれる3体の獣まで現れる。


このまま人類は滅びるのかと、衰退し続けて行く人間に希望の光をもたらしたのが、人間でありながら魔法を操る存在。


『魔法少女』


彼女達の登場により、人類は魔獣に対して反撃を始め、人類最大の天敵である3体のS級魔獣はそれぞれ討伐、封印、眠りと決着する。


これが人間から見たここ10年。衰退と反撃の激動の10年の裏で、妖精もまた凄まじい10年を過ごしていたのだ。


妖精界はどうやら10年以上前から戦乱が広がる戦国時代のような時世だったようだ。


パッシオとカレジが生まれ育ったミルディース王国という妖精界の国も、その戦火に見舞われたようで、帝国とパッシオ達が呼んでいる。恐らく巨大で力の強い国なのだろう。


それにより、国は滅び、パッシオ達は捕虜などとして捕らえられた。


そして、冷酷無比な帝国は捕らえた敵国の妖精達を次々と世界の穴から人間界へと落としたのだ。

妖精にとって生命を維持するために必要不可欠な魔力の薄い、人間界へと。


人間に例えるなら、呼吸の出来ない水中へと無理矢理顔を押し付けられているのに等しいんだと思う。

生きるために絶対に必要な魔力。それが自然に存在せず、妖精界から流入してくる妖精からすれば薄すぎる魔力。


それだけでは妖精はとてもじゃないけど人間界で生きていけなかった。魔力の小さな子供や弱い者達からバタバタと倒れて行ったという。


全滅するのも時間の問題。そんな妖精達が少しでも生き永らえるために編み出した方法が『魔法少女を作る』ことだ。


魔法少女とは魔力を貯め込む才能を持った少女達と考えればいい。魔力と親和性が高く、絶対数こそ少ないものの、短期間で多くの魔力を貯め込んだ少女達は例えるのであれば魔力の詰まったタンクだ。


元々解放弁の無かったタンクに解放弁を付けてやる事で、少女達は貯め込んだ魔力を解放する術を得る。

この魔力の解放弁を最初に付ける時に、大量の魔力が漏れ出す。妖精はそれを狙った。


時を同じくして、人間は魔獣の脅威怯える毎日を過ごしていたけど、妖精らのその行動により生まれた魔法少女達が魔獣へと反撃の狼煙を上げる。


どちらも生きるために。偶然ではあったが、両者共々なんとかここで生き残りの戦略に成功する。しかし、それも長くは続かなかった。


それまでは妖精達が解放してあげないと魔力を外へ出す手立てを得られなかった人間の少女の中に、自分で解放する子達が現れ始めたのだ。


現在、殆どの魔法少女達が自分の力で魔力を解放した子達だ。その結果、人間界の妖精達は再び窮地に陥る。


人間は魔獣への対抗策を自分達で得られるように適応したが、妖精達は出来なかったのだ。


そもそも、外敵を駆除すれば盛り返せる人間と、食料や呼吸の生命活動レベルの問題を抱えていた妖精とでは、土台が違う。

一度は立て直したかに見えた妖精達は、こうしてまた数を減らし、恐らくこの世界にはもう殆ど妖精は生き残っていないだろう。


その数少ない生き残り。工夫や生きる場所を得た二人の妖精が、パッシオとカレジだ。



パッシオーネ・ノブル・グラナーデ。パッシオのフルネームはこうらしい。

代々続く騎士の家系であり、ミルディース王国の王家に仕える貴族。その長男というのがパッシオの立場だった様子。


仕事は勿論騎士。王家直属近衛騎士団の副団長という中々立派な役職も持っていたようで、今もその事にはそれなりの誇りがあるようだ。


そんな副団長様も、ミルディース王国が滅んでしまった際に捕虜として捕らえられ、人間界へと棄てられた。

ただ、彼が少し周りと違ったのは工夫を凝らし、魔力の消費を抑えようとした点だ。


彼は自らの身体の大きさを調整することで、日常的な魔力の消費を抑えたのだ。人間で言えば、代謝を抑えたという事になる。そもそも身体が小さければそれを維持するエネルギーも比例して小さくなるのは道理。


これは上手くいき、パッシオは他の妖精よりも長い期間を一人で生き抜くことに成功する。


その果てに、私に出会い、少し色々あったけど今は私の大事な相棒だ。


「……なにかあったかい?」


「ううん、なんでもない」


隣でガーリックチキンステーキを頬張るパッシオを見ながら、今までの事を思い返していると、バレて首を傾げられた。

ソースついてるよ?だらしないなぁ。口元を拭いてあげるとお返しにチキンステーキを差し出されたのでカプリと頬張る。


うん、男の子が好きそうな味だ。しょっぱくてガーリックの香ばしさと匂いが食欲をそそる。


「姫様、こちらも美味しいですよ」


「ありがと、カレジ」


向かいに座るカレジも食べていた小エビのサラダを差し出して来る。口いっぱいに頬張っているのは完全に食いしん坊のワンちゃんのそれだ。


カレジもまた、別の方法でというよりも環境で、かな。ここまで生き延びた妖精の一人だ。


彼の場合は【ノーブル】という魔獣信仰のテロ組織に所属することで、対価としての魔力を得ていたようだ。


その環境からか、酷く精神を痛め、『勇者』と呼ばれていたその心を歪めていたが、魔力を十分に得て、新たな環境に馴染み始めたカレジはとても明るく快活な少年という印象を持つ。


色んな食べ物を食べては目をキラキラさせているのは、餌付けをしたくなる衝動に駆られる。

紫ちゃんもその衝動にかられたのか、自分の食べていた料理を分けてあげている。


その度に、今は生やしていないはずの尻尾がブンブンと振られているのが見える気がする。やっぱり犬だなこの子。



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― 新着の感想 ―
[一言] 原典とか言い伝えの妖精って、可愛いくないのが多いよね よくあんなのから今の萌える妖精像ができたもんだよね
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