新入り歓迎会
訓練で魔法を維持出来なくなるほど魔力を使うおバカがいるか、とため息を吐きながら訓練場の床の上で大の字になって転がっているグレースアを障壁で持ち上げてこちらに転がす。
少し雑な移動方法だけど、本人は笑っているので問題はないだろう。
「アリウム、今のもっかい!!」
「遊んだわけじゃありません。全く、訓練で魔力使い切るおバカは貴女で二人目よ」
去年のルビーじゃあるまいし、その辺のセーブの仕方も覚えさせないと。戦う前から戦闘不能なんてお話にならないし、そのあたりのコントロールが出来ないと戦いの場で一緒に、というのは出来ない。
ましてや張り切り過ぎて魔力切れしたなんてどうしようもない理由でね。テンションはあげても、頭は冷静に、ね。
「なんか飛び火して来たんだけど」
「自業自得だろ。ほら、やるぞ」
それを去年もっと酷い、本当に魔力を枯渇させて大目玉を貰っているルビーが釈然としない表情をしたまま、訓練場の中央へとフェイツェイに引きずられていく。
フェイツェイの言う通り自業自得、一度やらかすと一生言われるのよ。
「酷い目にあった……」
「おう、お疲れー。水飲むか?」
「飲むけどそのわしゃわしゃやるのやめてくれよ」
グレースアの相手をしていたカレジも疲れた様子で戻ってくる。
出迎えたアズールが大型犬を相手にする時のそれで対応しているあたり、完全にペット扱いだ。
「デッカい犬って良いよなぁ」
「犬じゃない」
「大型犬が可愛いのはわかるけど、そんなことうっかり口にすると翔也さんが買って帰って来るわよ。あの人も身内に甘いんだから」
「犬じゃないからな???」
文句を言っているカレジだけど振り解かないあたり悪い気はしてないのだろう。
やり過ぎると犬だろうと誰だろうと嫌になるだろうから、アズールには程々にしてもらいたいところ。
「随分溶け込めたじゃない?人が良いのね」
「姫のおかげですよ。そうでなければ独房の中でしょう」
「否定はしないけど、その姫って言うの止めてくれないの?」
「姫は姫ですので、譲れませんね」
カレジがここまで早く私達に溶け込むとは思ってもなかった。
もう少し、みんな距離を取るだろうとは思っていたけれどずっと早い段階でカレジは周りと上手くやり始めていた。
元よりマメな性格みたいで、決まった時間に決まった事をするのが好きなようだ。
いわゆる仕事好きなタイプ。使命感で仕事をするパッシオとは違い、指示があれば忠実にそれを熟す。
融通が効かないところがあるのが妖精らしさ、かな。
自分の中のルールのようなものは直すつもりは無さそうなので、周りの使い方で評価も変わりそうかな。
「でもまぁ、アリウム先輩がお姫様って言うのは異論は無いっすよね」
「衣装は1番ドレスっぽいですもんね。ティアラを乗せたら完璧じゃないですか?」
「アリウム姫様〜」
「茶化さないの」
お姫様みたいだと茶化される。だからお姫様じゃないってば。
見た目は、まぁ否定は出来ないけど。どうにもむず痒いというか、恥ずかしい。
この歳になって、お姫様ってねえ?
「僕は良いと思うよアリウム姫。騎士としてのやりがいアップだ」
「うるさい」
「あだっ」
パッシオにまでからかわれて、少しほっぺが赤くなる感じがする。
お姫様と騎士だなんてそんなありがちなの、尚更柄じゃないってば。もうっ。
ぺちりと膝で丸くなっているパッシオの頭を叩き、静かにさせる。
その様子を見ていたカレジが何か言いたげな視線を向けていたけど、息を吐いてからそっぽを向いていた。
「そうだ、今日終わったらファミレス行かね?」
「ファミレス?何でまた?」
私を茶化す流れが落ち着いて、剣と刀をぶつけ合うルビーとフェイツェイを見ているとアズールからファミレスに行かないかと提案される。
突然な話だ。しかもファミレスなんてここ数年行ってない場所に。
諸星家にいるようになってからは更に縁遠くなったそこに、諸星本家の娘になるアズールから提案とは。
「ここ最近新入りが多いだろ?パーティーなんて大袈裟なのはいらねーけど、歓迎会くらいはウチらの中ではしてみるのもいいじゃねぇかってさ」
「誰の提案?」
「私っ!!」
「その新人からの提案じゃないっすか」
これただファミレス行ってみたいだけだ。良いけどさ。たまにはそういうのも楽しいし、特に不満点は無い。
妖精の2人も人間の姿になれるしね。あーでもリオ君はお留守番か。後でお高い猫缶でもあげるか。
「んじゃ、けってーい!!初ファミレス!!」
「ノワールも楽しみ!!」
「はしゃぎ過ぎないで下さいね」
一度もファミレスに行った事がない生まれながらのお嬢様であるグレースアとノワールは随分楽しみにしている様子。
ファミレスを知らない妖精2人は首を傾げてナニソレ状態。
私も久々だし、楽しむ事にしよう。




