新入り歓迎会
新たな仲間、カレジが加わって半月。時期は初夏の雰囲気を匂わせる5月へと突入し、私達はGWの休暇真っ只中だった。
だったのだけど、私はいつもと変わらず協会に来ていた。
私自身はあんまり関係無いし、何ならパッシオも関係ない。
「うおっ?!」
「だりゃぁぁっ!!」
誰が関係あるのかと言うと、主にカレジだった。
協会内にある訓練場で模造の直剣を咥えながら、迫り来る氷の短刀達をやり過ごす。
狼に良く似た姿であるが実に器用に使うもので、斬り落とし、叩き落とし、身体を回転させたりしてグレースアの氷の短刀の切り抜け飛び出して行く様子はまるで曲芸だ。
「うっそ、今の抜けて来る!?」
「数だけじゃ俺は止まらないぜ!!」
そんなカレジだけど、人間換算した場合の年齢が大体20歳手前頃という事で、精神的にも私達に近くて特に委員長みたいな元々人付き合いが得意なタイプはあっという間に打ち解けていた。
「よっ、とぅ!!」
「上手い上手い!!戦いの基本は足運び!!良い感じだぜ!!」
そんなこんなで、近距離戦闘も学び始めてオールラウンダーを目指す委員長ことグレースアの良い練習相手になっていた。
カレジは妖精にしては珍しく近接戦闘を主体に戦うスタイルを取る。
理由としては妖精としては生来魔力総量が少ない方らしく、大量の魔力を使う妖精達の攻撃用魔法には向いていないかららしい。
無論、だからといって妖精としてダメダメだったのかと言うとそうではなく、むしろ攻撃用魔法をバンバン撃てる妖精の方が少ないらしい。
それもそうだ。人間に例えれば国民全員が銃を撃てる訳では無い。
体格に恵まれていたり、訓練を積んだ結果として銃の心得ている。
人間界の民間人がそうであるように、妖精界での民間人も戦うための術を覚えるわけではない、というわけだ。
「言っただろう。僕は軍人だって」
「はいはい、凄いですねエリート様」
「むっ、自分だってそうなクセに」
つまり、パッシオは魔力にも家柄にも恵まれた本物のエリートという事だ。
代々騎士をやってるらしいからね。まぁ、反論の通り私も親の影響や環境、才能に恵まれていた事は自覚しているつもりだ。嫌味とかじゃなくてね?
自分の才能を否定するなんて馬鹿らしいし、自分の良いところはまずは自分で褒めないと千草みたいに捻くれるよ。
「言われてるわよ」
「捻くれ者なのは自覚しているが、頑固者には言われたくないな」
と、思っていたのが口に漏れていたらしい。少し離れた所にいたルビーに告げ口をされ、フェイツェイが不満そうにしている。
別にそこまで頑固じゃないもん。私がやる事やりたいだけですー。
「それを頑固っていうんだよ、アリウムお姉ちゃん」
「結局似た者同士、ってことっすね」
最後にノワールとクルボレレに締めくくられる。
ま、全員自己主張が激しいタイプなのは否定しない。上手い具合に噛み合ってるから衝突しないだけだ。
それにしても退屈ね。戦闘訓練って言っても私は基本的に殆どその場から動かない戦い方をするから訓練をするよりは、まず身体作りを優先した方がいいんだけども。
まぁ、たまにはと思ったらノリノリのグレースアとカレジがずっと戦ってるから空かないのだ。
身体が良くなってから、グレースアの体調は右肩上がりで元気が有り余ってるみたい。
当初予定していた後方からの援護射撃や、フェイツェイのサポートだけでは飽き足らず、近接戦闘も含めたオールラウンドな戦術を身に付けたいんだとか。
彼女なりにかなり張り切っているから止める理由もないけど、ほどほどにね。
「うおおおおおおぉ〜〜っ!!」
「ちょっ?!」
ぼーっと眺めてたら、テンションが上がって来たらしい委員長が様々武器の形をした氷を一瞬で、しかも大量に作り上げる
それをカレジに向けて縦横無尽に操り、本人も手に持って振り回すのだから相手をしてるカレジは大変だ。
彼は彼で本気でやるわけにはいかないからね。怪我させると問題だし。
だからといって手を抜くと自分がボコボコにされるジレンマ。まぁ、ドンマイとしか。
「うわっ、えげつねぇ……」
「私やアズール、アリウムとはまた違う物量を使った戦闘ですね。壊しても壊しても次から次へと……。相手にしたくはないです」
ドン引きするアズールと冷静に分析するアメティアの評価に頷きながらパッシオの毛を手櫛で梳いていると、途端に氷の魔法がパッと消える。
「あははは!!魔力無いなった!!」
全員、肩の力がガックリ抜けたのは言うまでもない。




