魔法少女交流会
半纏を羽織り、股引と草鞋を履いて、頭には鉢巻を巻いている鼓の格好は祭装束のそれだ。しかもどちらかと言えば男性用の。
つくづく変わった格好をした魔法少女だ。関西弁とノリの軽さから不思議とその違和感は薄くなりがちだが、魔法少女の中ではかなり特異な出で立ちなのは間違いないだろう。
「改まってなんだ?出来ればクルボレレの手伝いをしてやりたいんだが」
「そんな怖い顔せんでな。ウチも支部長からアレコレ聞いて来いって指示されて大変やねん。それに、言うほど苦にも思ってへんやろあの子。適材適所、やで」
身振り手振りも交えた返事が若干胡散臭いが、それが大阪スタイルと思うことにしよう。
クルボレレの方は申し訳ないが後で労うとして、だ。
わざわざ大阪支部長が鼓を介して聞きたい事とは何なんだろうか。
「いや、な。ウチの支部長は色々がめつい人でな?魔法少女の手柄を自分の手柄みたいにするんやけども」
「クズじゃねぇか」
「まあまあ、それ以外は割と無害やから」
何処の支部もトップがクズなのは様式美なのか?自分の保身と立場が大事な輩が上に行けば行くほど多い気がする。
世の中の情勢を考えれば自らの身を守るのは重要だが、他人を利用したり蹴落としたりしてまで立場とやらを守る必要があるのかどうかは疑問だな。
そういう風に思うのが、世の中的には子供なのかもしれないが。そうであるなら私はそのままで良いと思ってしまう。
それに、力のある諸星家にいるからこそ言えることなのかも知れない。
力のない者がのし上がるために必死なのであるなら、仕方のないことなのだろうか。わからないな。
きっとそういうことに答えを出し切れないのがまだまだ子供、なんだろうけどな。
なんて生意気な考えもしてみるが、よくよく考えれば将来は諸星姓ではないかも知れないんだよな。いや、家を出るとかではなくだ。その、嫁入り的な話で。いや、私は何を言っているんだ。
「百面相してておもろいなこの人」
「隠し事はウチらの中で一番苦手だからなコイツ」
「聞こえてるぞ」
ごほん、と咳払いをして緩んだ空気をリセットする。とにかく、要件とやらを聞こうじゃないか。内容次第で答えるか答えないかは変わって来るが。
「いやいや、聞きたいことは簡単なんよ。ぶっちゃけアンタらの中で誰が一番強いんか、って話やねん」
「ウチらの中で誰が強いか、ねぇ」
「野暮な話だな」
「せやろ?ウチもアンタらの強みは個人プレーやなくて、連携プレーやっちゅーのはよぉーく知ってんねんけど、ウチの支部長は個が強いから複数で戦っても当然強いって考えてんねん。そんな簡単な話とちゃうんやけどなぁ」
肩をガックリ落として項垂れる鼓はこう見えて中々気苦労が多いのかも知れない。飄々としているように見えて、案外頼まれごとは断れない性格なんだろう。
私とアズールなら、くだらないの一言で一丁両断してその後の話は無視するところだ。
仕方ない。そのくらいなら、個人の見解も多いが話してやるとしよう。
「ホンマ?!いやぁ、助かるわぁ~。聞いて来んかったら小言だけで2時間聞かされるねん」
それは確かに嫌だ。どれだけ器の狭いトップなんだか、逆に気になって来る。
しかし、私達の強さを敢えてランク付けするなら、というのが強さを測る上ではわかりやすい考え方だろう。
何をもって強さとするか、とか色々詳細を定義することも出来るが、それでも私達の中で最も強い魔法少女と言われれば――。
「「花びらの魔法少女 アリウムフルールだな」」
意図せず、アズールと声が被る。お互い顔を見合わせてから、まぁそうなるよなと言外に語らった。
「へぇ〜、攻撃力に関しては1番無さそうやったけどなぁ。理由聞いてもええか?」
「攻撃能力に関して言えば、恐らく全魔法少女の中でも最底辺なのは間違いない。身体能力も低い。跳躍で言えば、私とアズールが5mジャンプ出来るのに対して、アリウムは精々2m半が精一杯だ」
アリウムの攻撃能力、身体能力は魔法少女の中でも飛び抜けて低い方だろう。
今までの移動の中で、私達が体力を温存しながら移動するスピードはアリウムにとっては全速力だったのは最近気が付いた認識の違いだ。
だから、基本的にアリウムの最近の移動方法はパッシオで、戦闘時は基本的に動かない事を前提とした戦い方を好む。
動き回る戦術を取れるようになるのは、ロゼやランディッシュと言ったメモリーを使った強化フォームの時くらいだ。
強化をして、身体能力はようやく並レベルまで上げられる。というのが、数字上のアリウムの評価になるがあの子の真価はそもそも数字で示す部分には無い。
「アリウムがウチらの中で最強だと判断する理由は、飛び抜けた発想力と機転の良さ、そしてそれを実現可能にするだけの圧倒的なまでの魔力保有量と魔力操作能力だ」
「アイツが使える魔法は治癒魔法と障壁魔法だけなのは事実だけど、お前も見ただろ。尋常じゃねぇ量の障壁を同時に操作しながら、鋼鉄みてぇに堅くて分厚い結界を工夫だけでブチ破りやがった。お前、アレと同じこと出来る魔法少女知ってるか?」
「おらへんなぁ。そもそも、数万単位の魔法を常に展開し続けながら、それをありとあらゆる形状性質に変化させて操れる。なんてムリやろ」
でもそれをやってるのがアリウムだ。私達も、考えれば考えるだけ、あの子がどれだけ並み外れた事をしているのかを理解するたびにゾッとする事はある。
魔法を操る才能は天才的、とまで評されたアメティアですら操れるのは精々数百。
文字通り桁が違う。本物の天才とは、こうもレベルが違うのかと私だって思うよ。




