魔法少女交流会
ふう、と息を吐いて肩の力を抜く。何度目かも分からない動作だが、仕方が無いだろう。見事にバラバラにされた私達3姉妹、その長女として妹達を心配するのは当然のことだ。
墨亜はあぁ見えて取り繕うのは得意だ。元より小学生くらいなら友達を作るのはそこまで難しくない年頃だと思う。
問題は真白だ。いや、パッシオが付いているから問題は無いのは分かっている。最近は人に囲まれることにも慣れて来て、教室ではけろっとしているから同年代や年下も多いこの集まりなら動けなくなってしまうというのも早々あるまい。
昨日固まってしまったのは他の魔法少女から変なことを言われてびっくりしただけだから、とも言っていたし、アメティアだっている。問題ない、問題ないったら問題ないんだ。
「――い。おい、フェイツェイ。聞いてんのか?」
「ん?あぁ、スマン。なんだ?」
「なんだじゃねぇよバカ。一番年長のお前が不機嫌面でいるせいで案内役がクルボレレになっちまってるじゃねぇか。こういう時くらいちゃんと仕切れっつーの」
そう言われてハッと顔を上げると、同じ帽子班のクルボレレが相変わらず元気いっぱいに協会の施設を改めて紹介している。
しまったと後悔するが時すでに遅し、快活で明朗、誰にでも平等にニコニコとした笑顔で接するクルボレレは年下や同年代の魔法少女達を中心に懐かれている様子だった。
「ったく、どうせアリウムとノワールのことだろ?あいつらなら上手くやるだろうよ。いい加減心配のし過ぎだっつうの」
「分かってはいるんだがな……」
「わかってねぇからそうなってんだろうが全く。姉として自覚があんのは良いことだけど、過保護過ぎると妹らに嫌われるぞ」
「うっ……」
アズールに指摘されて押し黙るしかない。全く以てその通りだと思う。アズール達は元から住む場所もそもそも一つの家族でも無いが、そこら辺の姉妹より仲が良いだろう。
その秘訣は私が思うに信頼関係だ。仲間や友達ではなく、もっと近しい部分での信頼だ。
理由の無い信用、無意識での信頼とも言えるかも知れない。
実際、紫も朱莉も相談事は真っ先に碧にしている事が多い。碧はそれに応えられ、明確な答えを持っていなくても妹達を叱咤激励する術を持っている。
これが碧の持つリーダーシップの正体だろう。褒めて持ち上げるのが上手いのだ。それだけでも心が上向きになれば可能性もやる気もグンっと上がるのは何度も経験していること。
それに比べて私は、と思ったところで頭を引っ叩かれる。
「うじうじしてんじゃねぇよ。胸張れっつうの。上が胸張らなかったら下がついて来るわけねぇだろうが」
「いや、スマン。悪い癖なのは理解してるんだが、中々な」
考え過ぎて思考が後ろ向きになるのは昔からの私の悪癖だ。周囲からは散々注意されているのだが、やはりそう簡単に治るものではない。
どうにも一人になるとダメだ。まだまだ私も半端者だなと改めて実感する。
「あぁ、もうダメだな。すぐ気持ちが後ろ向きだ」
「ちっとは肩の力抜けよ。姉だからって何でもかんでもしてやらなきゃいけないわけじゃねぇんだ。お前は真面目過ぎんの」
「それが私には難しいんだ」
二人揃ってため息を吐き、肩を竦める。私が気にし過ぎなのは分かってはいるつもりだ。
元より墨亜も真白も自分で自分の事をするくらいの器用さは持ち合わせている。何なら真白は本来持ち合わせていた経験も踏まえると、私達の中ではダントツで生きるための知恵を持っているだろう。
……本人がそれを自分のために使うかどうかはまた別なのだが。アイツは自分の事は後回しにする傾向があるからな。
「……自立を促すためにバラバラにされたんだろうな」
「十中八九そうだろ。ま、ウチは問題ないけどな。アメティアは問題起こすような奴じゃないし、ルビーが相手によるけど、理不尽に怒鳴ることはねぇからな。そっちだって実際のところ、心配ごとはほぼねぇだろ?」
「まぁ、確かに……」
私が気にしすぎなだけか。事実として私が心配し過ぎているだけで、墨亜も真白も案外平然とした顔で対処しているだろうことは目に浮かぶ。
自立出来てないのは私の方か。参ったなこれは。
「お二人さん、ちーっと話聞いてもらってもええやろか?」
「ん?」
「お?」
数えるのも面倒になって来たため息を吐きそうになったところで、声を掛けられる。
この関西弁を喋る魔法少女は確か、音撃の魔法少女 鼓、だったか。




