エンドレスラグナロク
様々な獣の雄叫びが聞こえて来る。10や20ではない、100や200といった数の獣たちが一斉にその産声となる咆哮を上げる姿はまるで地獄か何かのようにも見える。
姿は動物に似たそれで、絶妙に人間界の動物のそれとは特徴が合わない生き物たちは生き物らしさよりも禍々しさの方が先に感じ取れるのは何故だろうか。
一斉に現れ、即座に敵意をこちらに向けるその凶暴性からだろうか。それとも、その絶妙に生き物として破綻しているようにも見える姿形からだろうか。
「『繋ぐ』!! サポートして!!」
とにもかくにも、『獣の王』が本気で自身の能力を使って来た。それに抵抗するにはこちらも『繋がりの力』を全力で行使する以外に抵抗手段は無い。
『繋がりの力』とは『獣の力』を無力化するために生み出された力なのだから。
そのためには『幾千年紡ぎ紡いだ我が居城』をもう一度発動させる必要がある。
私はまだまだ『繋がりの力』を使うには半端者。『固有魔法』を介して『繋がりの力』を行使した方が精度が良い。
私の一声で皆が動き出す。先鋒を担うスピードアタッカーのクルボレレ、ルビー、フェイツェイは変わらず最前線で『獣の王』本人と直接の殴り合いを。
メモリスターズの面々とアズールは数が多い獣達の相手を率先してしながら、『獣の王』と戦う3人のフォローを。
アメティア、グレースア、ノワールも変わらず遠距離からのサポート。少し変わったのはグレースアは主にフェイツェイ達のフォローを中心に、ノワールは獲得した飛行能力を使って遊撃も兼ねるようになったこと。
司令塔のアメティアは俯瞰しながら全体のフォロー。
そして、私が『固有魔法』の再発動の準備を整えるまでの間、護衛をするのが。
「まさか君と組むことが来るとはね」
「2人で組むのは初めてか。ま、悪い気はしない」
「だね。じゃあ頼むよ!!」
「あぁ、任せろ」
パッシオとシャドウの2人だ。紅蓮の炎と白衣をそれぞれはためかせながら、私に襲い掛かって来る獣達を蹴散らして行く。
範囲と魔法火力に優れたパッシオと一撃の重さと小回りが効くシャドウの組み合わせは傍目に見ていても相性が良さそうに見える。
そもそもあの2人、結構仲良いしね。
3年前まで敵だったのが、ホント嘘みたいだ。
「『幾千年紡ぎ紡いだ我が居城』とやらはあっちを使えば良いんじゃないのかい?」
『獣の王』に破壊された『幾千年紡ぎ紡いだ我が居城』を指差して質問しているリアンシさんは非戦闘員なので今回は私のそばだ。
そもそも『繋がりを視る力』は『繋ぐ力』と『繋がりを断つ力』と一緒に行動しないとほぼ意味が無いしね。
『繋がりを断つ力』を持つスタン君、もといブレーダーメモリーはメモリスターズの一員なので戦闘優先だ。
「一度壊されたのを直すのが結構手間なんです。一から作るのと、修繕どっちが楽か考えてもらえると」
「確かに複雑なモノを直すよりはリセットして最初からの方が楽か」
「そういうことです」
『固有魔法』は簡単に発動しているように見られがちだけど、A級魔法少女になる条件にも設定されるくらいには高等な魔法技術だ。
世の中の魔法少女の殆どがB級以下。ボリュームゾーンとしてはBの下からCの上くらいの実力を持った子達がその殆どを占めていると言って良い。
そもそもにA級に行くのは全体で見ても一握りのエリート。『固有魔法』を使えるのも同じ人数だ。
複雑な術式は他の魔法少女では模倣することが困難。だから『固有』の魔法とされているわけで。
『幾千年紡ぎ紡いだ我が居城』はその中でも特別難解な術式を持つ『固有魔法』だ。
一瞬で発動させているように見えるけど、複雑な上にその場に展開するタイプの魔法なため融通も利かない。
こうして破壊されてしまうと修繕する方が手間がかかるのだ。それなら、解体して最初から発動し直した方が良い。
本来なら、この規模の『固有魔法』をぽんぽんと発動することも出来ないことも言っておこう。




