エンドレスラグナロク
他にも続々と仲間達が合流してくる。どうやら彼女達を足止めしていた雑魚たちは一掃し終わったようね。
「残念だったわね。私を狙った作戦は失敗みたいよ?」
『獣の王』による、私を狙った一連の作戦は完全に失敗に終わった。こうなれば、私達の有利はより揺るがないものになる。
私という中心人物を喪うことによる混乱と決定打の欠如。何より『繋げる力』が無くなったことによる『獣の力』の全力での行使が可能になれば、いくら残りのメンツが壁を破壊する方法を複数持っていたとしても、圧倒的な数の蹂躙によって勝利を掴むことが出来ただろう。
私という存在そのものが『獣の王』にとって目の上のたん瘤であり、最も嫌な敵。いるだけで自身の能力に制約がかかる天敵。
それを仕留め損なったのは大きな意味がある。
「諦めろ、『獣の王』。お前は僕たちに勝てない」
「勝てないだと……? この私が負けると?」
「あぁ、そうだ。お前は勝てない。心の無いお前に、僕たちは絶対に負けない」
再び、『獣の王』を囲むようにして集まった私達。彼女にとって絶体絶命の状況。少なくともかなり不利な状況だ。
逃げようにも、未来視を持つノワールや『繋がりを視る力』を持つリアンシさんがこの場にいることで逃走の出足は潰され、逃げ先はすぐに割れるだろう。
それを突き付けるように宣言するパッシオに対して、『獣の王』はくつくつと笑い始める。もはやいつもの反応とまで言える。
『獣の王』は自分の優位性に絶対の自信を持っている。そういう風に出来ているのかも知れないし、事実として彼女の力の巨大さは本物で私達に倒し切れるかどうかはまだ未知数とも言える。
もしかするとほんの少しでも『獣の力』の一端が残っていれば、何千何万と時を重ねることでまた復活するかもしれない。
そう考えると『獣の王』という存在に負けは無いと考えられる。この最後の決戦が始まった時にも言っていた。
ここで負けても、私達がいなくなった頃にまた現れると。そうして、何度も何度もその時代の英雄たちと戦って、最後に勝てればそれでいいと。
それが『獣の王』としての勝利。絶対に負けない戦い。
「まるで心があれば勝てるかのような言いザマだ。それが一体何の役にたつ? 団結力には優れるかも知れんが、同時にそれは諍いも生む。そんなものがあるから貴様らは一生争いを止めんのだ。そんなくだらないモノを消すために私はいるのだ……!!」
心があるから人は団結する。同時にそれがあるから諍いと争いが生まれる。それに関しては同意する。私もそれを何度も見て来た。人の心の薄汚い部分と言って差し支えはないだろう。
同意するけど、同時に違和感も覚える。まるで『獣の王』が争いを止めるための存在かのような言いよう。
「世界を壊して、人が、心を持った存在がいなくなれば世界が平和になるとでも言いたげね」
「その通りだろう? 人が心を持つから争いは起きる。ならば、そんなものは無い方が賢明だ。あらゆる世界にいる人は進化し過ぎた。故に、私がリセットする」
「……まさか、それが『獣の王』だっていうの?」
高い知能を持った人は心を持った。勿論、他の生き物にも心や意志はあるだろう。一定の知能を超えたところから、そういうものを持っていると考えてもそうおかしくはない主張だと私は思う。
だけど、それがあるから人は徒党を組み、領土や地位を争うようになった。それは野生動物の縄張り争いのそれを大きく超える。
被害の規模が野生動物のそれとどれだけの差があるのかは、数字に表すのもバカらしいくらいの差がある。
『獣の王』はそれを否定するために心を否定するというのか。そして、心を否定するということは高度な知性や文明も否定するという事。
「如何にも。私が、『獣の王』が争いの無い、あるべき平和を世界にもたらしているのだ!! あらゆる世界を破壊しつくし、文明を破壊し、人を破壊する!!」
両手を広げて、演説をするかのように『獣の王』はその力を振り撒く。地中や空中にいくつもの魔力の塊が出来る。
魔法じゃない。アレは獣を作っている。その量は、今までの比じゃない。
「これは終わらない聖戦だ!!」
その言葉と共に獣たちが産声を上げた。




