友達
用意された魔法と幾つあってどんな能力なのかがまだわかってない『権能』。それを目の前にして、私達の取れる策は何があるだろう。
最も脅威なのは私達の能力を奪う『強奪』の権能なのは決定的。ほとんどのダメージを無効化する『淫蕩』の権能については今のところ使って来る様子は無し。
他にはさっきまでやり取りで最低でも2つの権能は使っている。1つは魔法を弱体化させる能力、もう1つは多分幻覚か何かの能力。知覚誤認とかたぶんそういうのだ。
全部厄介。というか、全部が全部頭がおかしいくらい強力だ。どれか一つでも使われるとこっちは一瞬で状況がリセットされるどころか不利になる。
「じゃあ、何も出来ずに死ね!!」
無慈悲な攻撃。それを目の前にしても結論は出ない。こんな無茶苦茶なのを相手にどうやって戦えば良いのか、さっぱり答えが出て来ない。
『希望』のメモリーで変身しても、下手に攻めようものなら至近距離で変身解除をされかねない以上、逃げの一手しかない。
でも、それすら難しい。どうすれば、どうすればいいの……!!
「スバル!!」
結論を、答えを出せずに固まる私にピリアからの鋭い声が飛んで来た。それだけで言いたい事は伝わる。
私が弱気になってどうするんだって意味だ。分かってる分かってる。私が諦めたら絶対に勝てない。
でもどうすれば。
「出来る。スバルなら出来る」
必死になって頭を回転させる私の手をそっとピリアが握る。その手の中で、何かが震え光り輝いているのが見える。
この光を、私は知っている。これは魔力の光で、メモリーが出来る時の光だって。
「私の、私達の知ってるスバルは、どんなことがあっても諦めない。だからできる。そのためになら私達も全力で力を貸すから」
開いた手の中にあるメモリーに紋様が浮かび上がる。1つの円の中に二つ円の図形が渦を巻くようにして混ざり合うような図形。漫画とかでよく見る、太極図だっけ? アレにも似た紋様。
「だから、諦めないでスバル。きっとスクィーもそう言ってる」
ピリアがそう言うと同時にメモリーが激しく明滅して、私達の手から飛び出して宙を舞う。
まるで喜んでいるみたいな動きには見覚えがある。
ピリアと一緒にいたネズミにも似た姿の生き物。ピリアとずっと一緒にいた、大事な友達だ。
ずっと、ピリアと一緒にいたんだ。リュミーと同じように、私達が1人にならないように。
「スクィー、スバルをお願いね!!」
スクィー君の魂が入ったメモリーが完成し、動き回るメモリーにそう言うとピリアは一歩下がる。
メモリーを増やして戦えば、その戦闘能力は飛躍的に上昇する。私が持っている『光』『希望』の二枚のメモリーと合わせれば、合計3枚。相当なパワーアップになる。
でも、スクィー君のご要望はどうやらそうじゃなかったらしい。
「わっ、ちょ、スクィー?!」
飛び回るメモリーは一歩下がったピリアの背中をどついて立ち位置を元に戻したあと、私のポケットの周りをウロチョロする。
釣られるように出て来たのはリュミーの魂が入った『光』のメモリー。挙句の果てには私の『思い出チェンジャー』に入っていた『希望』のメモリーを追い出すように叩き出すと二枚一緒になって勝手に『思い出チェンジャー』の中に入ってしまった。
【思い出チェンジャー!! 『光』!! 『友情』!!】
起動した思い出チャンジャーが私達2人を囲うようにして魔法陣が展開する。何が起こっているのかは分からないけど、多分こうしろってスクィー君とリュミーが言ってるなら、これがきっと最適解。
「えっ、え?! 何々?! これ1人用アイテムなんじゃないの?!」
「良いから行くよ!!」
騒ぐピリア。構える私。『思い出チェンジャー』の中にいるリュミーとスクィー君は、なんだか楽しそうにしている気配を感じる。
目の前に魔法がめちゃ来てるんだけどね? 結構肝据わってて似た者同士?
【『同調』!! 友情確認、準備は良いかぁっ?!】
「ダメに決まってんでしょ!!」
「『思い出チェンジ』!!」
「ちょ」
大騒ぎするピリアを差し置いて、私達は奇跡を信じて変身した。
ダメです!!!!




