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アリスとお兄ちゃんとシリーズ  作者: ピシコ
アリスとお兄ちゃんと文化祭症候群
36/41

13 オープニングセレモニー

一か月近く開いてしまいました。

まだ開ききってない眼をこすりながらカーテンを開ける。

「くもり……」

ついに迎えた文化祭一日目。

曇り空なのが残念だけど、ついに文化祭が始まる。


居間に降りると、テーブルの上には二人分の朝ご飯が用意してあった。

「おはようアリスちゃん。今日は文化祭でしょう? 何時に学校行くの?」

お母さんが、いちごのジャムたっぷりのトーストを食べながら聞いてきた。

あ、そういえば、うちのお母さんが登場するのって、初めてよね。一応紹介しておくわ。

うちのお母さんの名前は、小山内花子。ちなみにお母さんは下の名前で呼ばれるのが嫌い(日本的で良い名前よねぇ?)。

うちのお母さんは、一言で言うなら、超がつくほど海外が大好きな人で、英語がペラペラだ。テレビで見ているのはいつだって、海外のニュースだし、ドラマも海外ドラマばっかり。何故か海外の新聞すら購読している。

それを活かして仕事は翻訳家とか通訳の仕事をしているの。

お父さんとはイギリスに留学した時に知り合ったんだって。

「今日もいつも通り8時には家を出るわ」

「そうなの? でもお兄ちゃんはもう家を出ていったわよ?」

「え?」

時計を見ると時刻はまだ7時を過ぎたあたりだった。

「多分、文化祭の準備で早く行かないとなんじゃない?」

「ふ~ん、忙しそうねぇ。それにしても文化祭楽しみだわぁ」

「お母さんが来れるのは明日だからね」

私は、マーマレードをトーストに塗りながら答える。

「分かってる分かってる。お母さん、去年はお兄ちゃんの文化祭は仕事でいけなかったから今年は楽しみにしてるのよねぇ。でもお母さんお化け屋敷とか怖いから、当日は誰かと一緒に回ろうかしら?」

「多分、私もお兄ちゃんも忙しいわよ」

「それは残念。そしたらアリスちゃんの学校でイケメンの男の子を見つけて、その子と回ることにしようかしら」

「ちょっと、私が恥ずかしいからやめてよ?」

「うふふ、お父さんよりカッコいい子がいたら分からないわよ~?」

お母さんはにっこり笑って言う。

「お父さんに報告しないといけないから、たくさん写真とらないとね~」

「……そうだね」

お父さんにも、文化祭来てほしかったな……。

もはや叶わない話だけどね。

プルルルル……

その時、家の電話が鳴り響いた。

「あらあら、こんな朝早くから……はい小山内です……はい……はい……あらぁ、あなたが……娘がお世話に……えぇ、いますよ。代わりますね」

「誰?」

「兼崎真衣さんですって」

「真衣?」

こんな朝早くに……

「はいもしもし」

電話を代わる。

「アリス? まだ家なの?」

「へ? だってまだ七時……」

「アリスもしかして、オープニングセレモニーの事、忘れてるわね?」

「オープニング……」

あっ。

「ああーっ!!」

「……はぁ。昨日言ったのに……ねぇ、7時半には学校これそう? 45分にはもうリハーサルらしいのよ」

私は時計を見る。

「ごめん。今すぐに出るわ。多分ギリギリ間に合う」

「分かった。ケガしないようにね。アリス」

真衣は、そう言って通話を切った。

「アリスちゃんも、急ぎの用事?」

「うん。今すぐ家を出ないと。」

髪の毛ぼさぼさだけど、仕方ないよね……。

「それなら、お母さん車で送って行こうか?」

「いいの?」

「自転車で行くんでしょう? 今晩は雨が降るって予報だから、送っていくわ」

渡りに船とはこのことね。

「ありがとうお母さん。それじゃあ早速行きましょ」

車なら、7時半には余裕で間に合うわね……よかったぁ。



体育館には既に数十名の生徒がいた。そして真衣からちょっぴり怒られて、生徒会の人たちからオープニングセレモニーの話を聞くことにした。

「各団体、アピールタイムは45秒になります。これを超えて、アピールを続けると、次回以降の文化祭に出店できなくなりますので、お気を付けください」

丸い眼鏡におさげカットの女子生徒が優しく言う。この人は、我が校の生徒会長で、二年の円満堂目覚えんまんどう めざめ先輩だ。実家がお寺なんだって。

「アピール時間、45秒しかないんだ……」

「まぁ、時間かかるからね。数が多いし」

そう、数が多い。オープニングセレモニーのアピールタイムに参加するのは全部で60団体以上。

60よ? 60。

うちの高校は全クラスあわせて24クラスあるの。つまり、40ちかい部活、クラブ、同好会がうちの高校には存在してて、文化祭で出し物をするの。

私は、この話を聞いたとき、高校の文化祭ってすごいなぁって思ったわ。

でも、冷静に考えて、うちの高校がおかしいだけよねこれ。

そもそも、うちの高校は、メンバーが三人集まれば、先生がいなくても同好会に。10人以上集まれば、クラブに。そして顧問が付くと部活になるってシステムなの。

だから、同好会を作るだけならとっても簡単なの。(真衣もこのシステムを知ってれば、四月の時にあんなことしなくても良かったと思う)

「それでは、皆さんには、一度体育館の端の方でスタンバイお願いします。そろそろ生徒たちが体育館に入ってくる時間ですので」

ふと時計を見ると、時刻はもうすぐ8時になろうとしていた。

なんだか、ソワソワしてきたわ……

「あ、アリスたちもいたのか」

声をかけてきたのは、亮太だった。隣には椎名君もいる。

「おはよう小山内さん」

「おはよう椎名君。二人とも、うちのクラスのアピールタイムに出るんだっけ?」

「そう! まぁ、メインを張るのは太平だけどな」

亮太が得意げにそう言うと、椎名君は少しだけ恥ずかしそうにしながら

「まぁ、任されたからには、ちゃんとやらないとね……」

椎名君は、亮太に比べて、っていうかクラスの男子の中でもかなり大人しい人だと思う。

いっつものほほんとしてて、優しそうだなってイメージ。

だから、椎名君がどんな風にうちのお化け屋敷をアピールするのか、とっても楽しみなのよね。

「頑張ってね。椎名君」

「うん……小山内さんも頑張ってね」

「ありがと。まぁ、私の出番は、小道具をステージに運ぶぐらいなんだけどね」

「あら、アリスってば、そんなにみんなの前でマジックを披露したかったのなら、言ってくれればよかったのに」

真衣はくすくす笑いながら、そう言った。

「私はお手伝いで十分です」

「あら残念。あ、ほらみてアリス。みんな体育館に入って来たわ」

真衣の指差した方向には、うちのクラスメイトたちの姿が見えた。

「……」

亮太は、神妙な視線でクラスのみんな……いや、夏美を見ていた。

「アリス」

「なに?」

亮太が、ぼそっと呟いてきた。

「緊張するな」

「……うん。ドキドキする」

楽しみと不安と緊張。色んな感情が灰色に混ぜあって、自分の感情がコントロールできないような感覚。

ふわふわと、足元がおぼつかないような、不思議な気分……。

パッと、体育館の電気が一斉に消えた。そして、ステージにライトが当てられる。

「みなさん。おはようございます。本日から、明日にかけての二日間。一年間の中でも最大のイベント言える、文化祭が始まります」

円満堂会長が、ゆっくりと、優しい声であいさつを続ける。

「この文化祭が、みなさんの素敵な記憶になるように願っています。そして、そのためには、是非とも、皆さんに楽しんでもらいたいのです」

楽しむ……。

「そして、怪我や争いはなく……と、これ以上続けると、時間が無くなってしまいますので、割愛させていただきますが、私から皆さんに伝えたいことは、楽しんで欲しい。この一言に集約されます。さぁ、それではオープニングセレモニーの開始です」

会長の声に合わせて、ステージ横にスタンバイしていた吹奏楽部がファンファーレを鳴らす。

「さぁ、まずは早速各団体のアピールタイムだ! たとえどんなに滑っても、みんな拍手は忘れんなよ! さぁ、まずは各クラスのアピールタイム! トップバッターの一年坊主! チビらずに頼むぜ!」

このハイテンションなしゃべり方は、放送部部長の望月次郎先輩って人なんだって。

一年生のアピールタイムは順調に進んでいき、ついに、我が1ー8組の出番になった。

「それでは、次、1ー8組、お願いします!」

望月先輩の声に応じて、ステージに亮太と椎名君が出てくる。

「どうしたんだい、聞いて欲しい話があるって」

亮太がそう言うと、椎名君は、

「いやいやいや、聞いてくださいよ~。1ー8組のお化け屋敷、これがね、雰囲気がね、なんだかね、いや~な雰囲気なんですよ。本当に。最初はね、あんまり感じなかったんですけどね、最近はね、近くを通るだけでね、いやだな~、いやだな~いやだな~って、本当に多分絶対いますよ。本当に」

これ……怖い話をする人のモノマネよね……しかも結構上手い……。

「いやいやいや、お化け屋敷には、お化けに扮した人がいるだけですよ」

「いやいやいや、あれはきっと多分、いや絶対。人じゃない……生きてるものじゃない……そういうのがいますよ……アッ!」

「ど、どうしたんですっ」

「会場のみなさんの後ろに……」

この時、ステージを見てた生徒ほぼ全員が振り返った。

「……1-8組、恐怖の迷宮、是非来てください」

二人は小さく礼をした。

まばらな拍手が体育館に響いた。

椎名君、あんな特技があったのね……人は見かけによらないものね。

その後、アピールタイムは順調に続き、今度は、クラス以外の団体のアピールタイムが始まった。

実は、我が手品部はトップバッターだったんだけど、真衣は、いつもの済ました顔でマジックを成功させていたわ。むしろただ、一言「是非ステージに来てくださいね」の一言を言うだけが仕事だった私は、盛大に噛んでしまって「きてくだしゃい」って言ってしまった。本当に恥ずかしい……。

でも、そんな私の恥ずかしさを吹き飛ばすほど、この後のアピールタイムはもうテンヤワンヤだったのよ。一言で言うならカオスね。

コントとか、脈絡もないダンスとかならまだ可愛いもので、【料理研究会】は、ふとましい男の先輩が、お菓子を食べながら、お腹をポンと叩くだけ(しかもこの音がやけに響く)だったり、【ソロモンの悪魔との契約を目指す会】は何でも校庭に魔方陣を書いて、儀式を行うらしく、そのために何て言ってるか分からない呪文を唱えるだけだったり、もうめちゃくちゃよ。

個人的に気になったのは、【絶対に叶う恋占いを見つけるまで卒業できない会】通称、絶恋は、文化祭で、名前占いをしてくれるらしい。自分の名前と相性の良い人の名前を教えてくれるとか。

私、カタカナの名前だけど、占ってくれるのかな……。

とまぁ、お腹が痛くなるくらい笑ってしまうほど楽しかったのよ。

そして、アピールタイムが終わると、セレモニーの締めとして、吹奏楽部の演奏、そして、軽音楽部と合唱同好会によるスペシャルライブ。

軽音と合唱は何を演奏するかと思ったら、まさかの校歌をアレンジしたもので、びっくりしちゃった。

あんなにノリノリで校歌を歌うの初めて見たわ。

後から聞いた話だと、合唱同好会は、今年出来たばっかりの同好会で、廊下で練習してたところを軽音の人が、練習で使ってる音楽室のスペースを貸してくれたんだって。

それで今回の文化祭では、一緒に演奏をすることになったんだとか。

最後の演奏が終わって、再び放送部の望月先輩にマイクが渡る。

「みんな最高に高まって来たかい!?」

「イェーイ!」

「よっしゃ、そのテンション、明日まで持ってくれよな! それじゃあ文化祭一日目……スタート!」

体育館が、震えるほどの歓声が響く。

私の高校生活最初の文化祭。

その一日目が、スタートした。


今日は正直更新するつもりはなかったのですが、お風呂上りにアイスをゆっくり食べていたら、お腹が痛くなって寝れなくなったので、書きました。

明日も更新します。

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