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アリスとお兄ちゃんとシリーズ  作者: ピシコ
アリスとお兄ちゃんと文化祭症候群
35/41

12 文化祭準備日その5

もう11月終わりそうですけど、作中ではまだ9月です。

翌朝、段ボールだらけの多目的教室には、クラスの全員がそろっていた。

夏美もいた(学校で夏美を見た時に大きな溜息が出たわよ)。

明日が本番だからか、クラスのみんなは素早く作業へと取り掛かり始めた。

私も衣装づくりを手伝わないといけないんだけど、夏美の様子が気になって仕方ない。

はたから見た感じは、いつもと変わらないけど……。

夏美はいつものように優しい顔をしている。

でも、その笑顔が、何故か恐ろしく感じてしまうのは何故なんだろう……。

むしろ、目に見えて元気がないのは亮太の方だった。

元々小さい体型なのに、元気がないせいで、もっと小さく見える。

まぁ……今の亮太に元気出せよって言うのは、酷な話よね……。

ドラマや漫画で、カップルが付き合うまで色んな試練とかが待ち構えていて、登場人物は挫けそうになるけど、なんとかそれを乗り越えて大恋愛! みたいな話はごまんとあるけど、登場人物たちは、ハッピーエンドになることが決まってるから頑張るんじゃないかと最近思うようになったの。

だってリアルでは、一度嫌われたらもうオシマイなのよ?

一度振られたら、もう次はないの。

だからみんな行動に移せないのよ。

告白なんて私はしたこともされたこともないけど、告白をする人の気持ちを想像するだけで、心臓が痛いわ。

なのに亮太は……。

一度振られたのにも関わらず、あきらめずに何とか再び告白のチャンスをうかがい、なんなら夏美の家庭の問題までを解決しようとした亮太は(改めて書きだすと無茶苦茶やってるわねこいつ)、運悪く夏美に知られたくない話を聞かれて、窮地に……あれ?

私は首をひねった。

いつになるかは分からないけど、夏美が昨日聞いてしまった話は、いずれ亮太から夏美へと話されることだったんじゃない?

そのタイミングが悪かっただけで、夏美が聞いてはいけない話じゃない……。

私はもう一度、二人を見比べる。

「アリスっ!」

「ふゅい!」

私は突然声をかけられて変な声を出してしまった。

「もう、ぼーっとしてどうしたのよ」

声をかけてきたのは、真由美だった。

「いや……別になんでもないわ」

「委員長と副委員長を見てたよね」

「……」

真由美の癖に鋭いじゃない。

「亮太君、文化祭が終わったら委員長に告白するのかな」

「ぶっ」

「やだアリスちゃん汚いよ」

「ごめん……」

真由美もしかしてエスパーに目覚めたの……?

「きっとそうよね。文化祭っていうイベントは、カップル発生率が高いって雑誌で読んだわ」

「なんの雑誌……っていうより、亮太が夏美のこと好きだって真由美知ってたの?」

「え? 当り前じゃない。多分うちのクラスの女の子はみんな知ってるよ」

え、嘘よね? 本当?

「だって、亮太君すぐ表情に出るからバレバレだよね。明らかに委員長に接する態度がうちら女子とは違うし」

真由美はケラケラ笑いながら言う。

「私的には、二人には是非カップルになってほしいんだけどね」

「なんでよ?」

「そりゃもちろん、文化祭後の打ち上げ会で弄るために決まってるじゃない!」

なんて女なのこいつ。

「あ、アリスには言ってなかったかもしれないけど、私、今回の打ち上げ会係だから、期待していいよ」

「期待ってどういうことよ」

「私、お金なら持ってるから、いいお店用意できるわ」

何て女なのこいつ!

「……ちなみに二人がもし破局とかしたらどうするの?」

「その時は、男と女に分かれて打ち上げしましょ。男子は慰め会で、女子は……そうね、文化祭お疲れ様でした会」

「……私、和食のお店がいいわ」

「はーい考慮しときまーす♡」

真由美は屈託のない笑顔でそう言った。

亮太……あんた頑張んなさいよ!



そして夕焼けが見え始めた午後4時ごろ……。

「よーし、みんな、お疲れ様! かんぱーい!」

亮太の掛け声に合わせて、みんなで手に持った缶ジュース(ジュースは先生がクラスのみんなの分おごってくれたの)を高く掲げた。

私たちのお化け屋敷「恐怖の迷宮」が完成した(この安易な名前を決めるまでに、苛烈な戦いがあったのだけど、割愛するわ)。

教室の窓には、アニメ部の早見さん渾身のおどろおどろしい絵で敷き詰められている。

それで、お化け屋敷の内容なんだけど、教室の中は真っ暗なの。

本当に真っ暗だから、入る人には懐中電灯を渡すことになってるわ。

教室内をここまで真っ暗に出来たのは、多目的教室のカーテンが黒いカーテンだったから。

僅かな光もシャットアウトするために、カーテンとカーテンを黒いガムテープでつないでいるの。

そして、脅かしも気合十分よ。段ボールのトンネルに人が入ってくるたびに、スタンバイしてる脅かし役が手を突っ込んだり、真っ暗なのをいかして、カーテンの中から脅かしたり……。

本当に怖いのよ。本当に。私はもう入りたくないわ。あなたも気になるなら、明後日の全体公開日にぜひ来てね。入場無料よ。

「明日は校内のみの解放だから、まぁ、そこまで人は来ないかもしれないが、みんな明日のために今日は早く寝るんだぞ!」

「お前こそ!」

「亮太の眼の下若干クマ出来てるの、みんな気付いてるからな!」

「うるせーぞお前ら!」

「ふふっ、でも亮太君の言う通り、明日も一応本番だから、みんな今日は早く寝ようね?」

「はーい!」

夏美の声にはみんなで仲良く返事をした。

「ったく、俺と夏美はこれから生徒会のミーティングに参加するけど、お前らは早く帰れよ! あと、お化け屋敷に入るのは駄目だぞ! 絶対壊すからな!」

そのままクラスとしては解散の流れになったのだけど

「アリス、私たちは、最後のリハーサルよ」

「うん、わかってる」

私と真衣は、明日のマジックショーのリハーサルのために、部室へと向かった。



「アリスは、文化祭当日、誰と回る予定なの?」

「え?」

部室へと向かう最中、真衣が突然聞いてきた。

「まだ決めてないけど……なんとなく真衣と一緒に回るつもりでいたわ」

「あらうれしい。でもアリス? せっかくの文化祭なのに、私なんかと回っていいの?」

「どういう意味よ」

「ほら、あそこを見て」

真衣が指さした方向には、楽しそうに会話するカップルがいた。

「あそこにも。ほら、こっちにも」

カップルカップルカップル。

「うふふ、見せつけられてるわね」

「ふん、私には縁遠い話よ」

「こんなに可愛いのに何でアリスには浮いた話がないのかしら」

「そっくり真衣にお返しするわ」

「私は、ほら、あんまり恋愛に興味ないから」

「興味失くすほど、今まで恋愛してきたってこと?」

「ご想像にお任せしますわ」

「ふん。まぁ、それなら恋に縁遠いもの同士で回ることにするか」

「できればお兄様も一緒に回りたいけど、忙しそうですものね」

「私はお兄ちゃんと一緒に行くのはやだなぁ……それなら渡辺さんとか誘おうよ」

渡辺さんは、私と真衣が頼めば多分断らない。

「なべ子は……ほら、家庭科部で忙しいだろうし」

「あ、そっか……でもずっと忙しいわけじゃないんじゃない?」

「まぁそれはそうだけど……」

なんだか真衣の歯切れが悪い。

真衣って、渡辺さんと本当は仲良くないのかな……。クラスでいるときは仲良さそうだけど。

「それよりもほら、今はリハーサルの方が大事だわ。アリス、気合い入れていこう?」

「うん……そうね」

二人は確か中学校も一緒だって言ってたけど……まぁ、私が踏み込んではいけない話なのかもしれない。

「明日から文化祭……か」

真衣はぼそっと呟いた。

文化祭……気付けばあっという間だった。

明日は、晴れると良いな……。

沈みゆくオレンジ色の夕日を見ながら、私はそう思った。


僕は爪が伸びるのが人より早い気がします。

実際に比べたわけではないのでわかりませんが、きっと早いと思います。

僕は人より爪を切る頻度が低い気がします。

実際に比べたわけではないのでわかりませんが、きっと低いと思います。

今日爪を切りました。きっと他の人より短いです。

比べたわけではないのでわかりませんが。

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