表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アリスとお兄ちゃんとシリーズ  作者: ピシコ
アリスとお兄ちゃんと来るべき将来
18/41

コンプレックスケージ

今回から夏休み編です。

 蝉の鳴き声がやかましく鳴り響く。

「あっつ……」

 無意識に僕はそう呟いた。

 どうやら、午前中から寝ちゃってたみたいだ……。

 夏休みだからって、深夜までゲームしてたのが良くないな……。

 汗ばんで気色悪いTシャツを脱ぎ捨て、エアコンの冷房スイッチを押す。

「……」

 スイッチを押す。

「……」

 スイッチを押す。

 反応はない。

 僕は、冷や汗をかき始める。

 もしかして……



 リビングに降りると、エアコンが効いていて涼しかった。

 僕はとりあえず冷蔵庫から麦茶を取り出し、コップに汲む。

「あれ、亮太君、目が覚めたんだ」

「あ、姉貴」

 僕がそっけなく言うと

「もう! 姉貴なんて呼び方やめてって言ってるでしょ? お姉ちゃんか、華杏かきょうちゃんって呼んでよ」

「もう高校生なんだから、恥ずかしいよ」

「えぇ~? 亮太君、まだ私より10センチも背が小さいのに、生意気言うのね?」

「うるせぇ」

 僕は、コップをもってリビングのソファーに座り込む。 

「なんだか亮太君、高校生になってから、お姉ちゃんに構ってくれなくて寂しいなぁ」

 おね……姉貴は、そんな事を言いながら、僕の隣に当たり前のように座る。

 姉貴は……いっつも良い匂いがする。

「どうして、お姉ちゃんと遊んでくれなくなったの? 中学までは、お姉ちゃんと一緒に、買い物とか付き合ってくれたのに」

「……別に」

 もう分かってると思うが、僕には一つ年上の姉がいる。

 初耳だって? そりゃそうだ。僕はその事をあんまり誰かに話したりしない。 

 正確に言うと、高校生に入ってからは、ほとんど話をしない。

 中学までは、姉は有名人だったので、しょっちゅう僕はその事で弄られていた。

 なんで弄られてたか。

 それは、僕の姉貴が可愛いからだ。

 モデル並みに可愛い。というか実際モデルをしている。

 だからか、クラスの男子から何回も、姉貴のメアドを聞かれたし、パンツを盗んでこいとか、ブラジャーのサイズを調べてこいとか、何回も言われた勿論全部断ったけど。

 クラスの連中が犯罪スレスレ(犯罪かもしれない)の注文を俺にしてくるのは、理由があった。

 それは、

「ねぇねぇ、なんで遊んでくれなくなったの~?」

 姉貴は、僕の肩に顔をこすりつけてくる。

 姉貴は、重度のブラコンだからだ。

 羨ましいって? 羨ましいだろう。

 僕は、クラスの連中に、

「お前のお姉ちゃん可愛くていいなぁ」

 と言われる度に、口では否定しながらも、内心、うちのお姉ちゃん可愛くて羨ましいだろう、って思っていた。

 姉貴と一緒に買い物行く度に、周囲の目線を引くお姉ちゃんの隣を歩く自分が羨ましいだろう、って思っていた。

 僕は、可愛い姉が誇らしかった。

 僕も、重度のシスコンなのだと思う。

 そのせいなのかもしれないが、僕は今まで誰かに恋したことがなかった。

 もちろん、好きな女優とか、アイドルとかはいたけど、学校っていう空間で、お姉ちゃんよりも可愛い女子生徒はいなかった。

 だから……

「昔は、こうやって甘えてみたら、ちゃんと答えてくれたのに……」

「だから言ってるだろ、もう高校生なんだから……」

「……」

 姉貴は、じっと僕を睨みつける。

 大きな瞳が、僕の視線をとらえて離さない。

「もしかして……好きな子とか出来たの?」

「えっ」

「好きな女の子出来たんでしょ? お姉ちゃんだから分っちゃうんだ」

 姉貴は、得意げな顔で鼻を鳴らす。

「亮太君が小学二年の時、同じクラスのあゆみちゃんのことを好きだったのも知ってるし、五年生の時転校生の美咲ちゃんのこと好きだったのも知ってるよ」

「……」

 あゆみちゃんも美咲ちゃんも、クラスで席が隣だっただけで、好きとかそんな感情はなかったんだけどな……。

「お姉ちゃんは何だって知ってるんだからね」

「はいはい、勝手に言って……」

 プルルルルル……

「電話だ、お姉ちゃんが出るね」

 姉貴は、受話器を取る。

「はい伊藤です。はい。あぁそうです。え? はい、はい。あぁ、今代わりますね」

 姉貴は、受話器を耳から外して、

「亮太君、電話だよ」

「俺に? 誰?」

「亮太君のクラスの委員長さんだって」

「なっ……」

 僕は急いで姉貴から受話器をふんだくる。

「あ、あ、もしもし!? どうして家の電話に……え、携帯……あ、自分の部屋に……うん、ごめん」

「あの亮太君」

「それで夏美、用って? え、夏休み中の文化祭の準備……あぁ、それは、って一回切っていい? もう一回携帯ですぐに掛けなおすから。うん、一回切るね」

 僕は、受話器を置く。

「……亮太君、今の女の子って」

「ごめんお姉ちゃん! すぐに掛けなおさないといけないから!」

 僕は急いで自室へと向かう。

 夏美との電話に胸を弾ませながら。



 残された華杏は、一人リビングでソファーに寝転がって、天井を見つめていた。

「亮太君のあんな顔……初めて見たな」

 華杏は横目で電話をチラッと見る。

「なつみ……ね。覚えておこうかな……」

 蝉の鳴き声が再び響き渡る。

夏休み編はあと数話続くと思います。


次回更新は古戦場前に一回挟みたいです(希望)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ