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アリスとお兄ちゃんとシリーズ  作者: ピシコ
アリスとお兄ちゃんと本の虫
13/41

その4

 私と真由美は、少しだけドキドキしながら図書室へと向かった。(あ、真衣は面倒だからパスだって)

「私、うちの高校の図書室行くの初めてだと思う」

「え? 四月にあったオリエンテーションで行ったでしょ? 覚えてないのアリス」

 四月のオリエンテーション……駄目だ。二か月前なのに、もうおぼろげだわ……。

「私は、深夏を迎えに行ったり、待ち合わせをする時によく行くんだよね。まぁ、本を借りたことはないんだけどね」

 確かに真由美は本を読むイメージはあんまりない。どちらかと言うと、体を動かす方が好きなイメージだ。

「私は全然読まないけど、深夏はすごいよ~。暇さえあれば読書してるって感じ」

「うちのお兄ちゃんも、そんな感じ。家にいるときはずっと本を読んでてさ」

「深夏も一緒」

 真由美はそう言ってくすっと笑う。

 ……やっぱり真由美と深夏先輩は……

「あ、そろそろ図書室。アリス? 図書室では静かにするんだよ?」

「分かってるわよ……子ども扱いしないでよね」

「ふふっ、アリスはちんまくてめんこいから、ついつい意地悪したくなっちゃうわ」

 真由美はクスクス笑いながら、図書室への扉を開ける。

 図書室内はやっぱりというか、静まり返っていた。

 そもそも人が全然いない。

 若者の活字離れは深刻ね。私が言えた話じゃないけど。

「あ、ほらみてアリス。受付のところに」

 真由美が指さした方向にはお兄ちゃんと、もう一人見たことのない女生徒が、並んで本を読んでいた。

 あの女生徒が恐らく深夏先輩なのだろう。

 ……うん。深夏先輩はお兄ちゃんの彼女にするにはもったいないわ。

 深夏先輩は、正に、理想の文学少女のような見た目をしている。

 真っ黒な長髪をポニーテールにして(そういや真由美もポニーテールだ)

少しだけ儚い表情と共に、ページをゆっくりとめくるその仕草。

 もちろんその顔立ちは、女優顔負けだ。(私もあんな女性になりたい)

「ねぇ、確認だけど、あそこにいる女生徒が深夏先輩?」

「うん、そうだよ」

「……ねぇ真由美、本当に深夏先輩が、うちのお兄ちゃんの事を好きだと思ってるの?」  

「え?」

「あんな綺麗な人、うちのお兄ちゃんには勿体ないわ!」

「ちょ、ちょっとアリス! 声でかっ、しーっ」

「はっ」

 私は慌てて口をふさぐが、既に時遅し。

 本を読んでいた深夏先輩と、ばっちり目線がぶつかってしまった。

「図書館では静かに……って真由美? どうしたの? 何か用なの?」

「あはは……ごめん深夏」

 真由美は、苦笑いを浮かべながら、深夏先輩たちに近づく。私もそれにならう。

「もう、どうしたの? 今日は委員会があるから、遅くなるって言ってあったじゃない」

「えっと……」

「あれ、それで、こっちの金髪の女の子は……」

 深夏先輩は、覗き込むように私を見る。

 本当にきれいな人……じゃなくて!

「あ、あの私、小山内アリスって言います」

「小山内……」

 深夏先輩は、お兄ちゃんを見る。

「もしかして、小山内君の……」

「あぁ、うちの妹だ」

 お兄ちゃんは相変わらず、本から目を逸らさずに答えた。

 深夏先輩は、私とお兄ちゃんを何度も見比べる。

「じゃあ、あなたが噂のアリスちゃんなんだね? 初めまして。私は、小山内君のクラスメイトで、小野寺深夏っていいます。よろしくね」

 にこやかに笑う深夏先輩。

「それで、真由美? どういった用なの? 小山内君の妹さんまで連れて」

「えっと……それは……」

 真由美は、私に助けろ! って目配せを送ってくるけど、私にはどうすることも……

「あっ、あの、深夏先輩、聞きたいことがあるんですけど」

「え、アリス、そんなまさか、直接……」

「なに? アリスちゃん」

「あの、先輩と真由美って、一緒に住んでるんですか?」

『えっ』

 真由美と深夏先輩の声が綺麗にハモった。

「あの、アリス……?」

「ちょっとおかしいなって思ったんです。二人は別に兄弟でもないし、学年も違うのに、真由美は、深夏先輩の事を迎えに行ったりとか、家に居るときのことまで知ってる」

 なんだろう……自分で言葉に出すたびに、それが確信に変わっていくこの感じ……。

「そもそも、仲の良い先輩の恋の相談に、ここまで真剣になるってことは、余程の関係性がないとおかしいですし」

「恋の相談……? 真由美?」

「えっと……」

 真由美の眼は泳いでいる。

「それで、思ったんです。真由美は確か、中学校までは東北にいて、高校から、こっちに来たって言ってました。私は最初、家族みんなで引っ越してきたのかと思ってたけど、もしかしたら、真由美一人だけ、こっちに引っ越してきたんじゃないかって思ったんです」

 気付いたら、真由美と深夏先輩は、お互いの手を絡めながら怯えている。「そして、真由美は深夏先輩の家にお世話になっている……」

「あ、アリス……どうしてそこまで……」

「やっぱり! じゃあ二人は親戚どうしなのね?」

「……」

「……」

「あれ?」

「アリスちゃん、私と真由美は親戚どうしではないのよ」

「うんうん」

「え? でも、二人は一緒に住んでるんだよね?」

「それは……そうだけど……」

「……アリス」

「なによお兄ちゃん」  

 さっきまで黙ってたのに。

「推理を始めるときは、『さて』ってつけてから、言い始めるんだぞ」

「……う、うん」

「でも、良い推理だった。最後を外したのは惜しかったが」

「じゃあ、お兄ちゃんは分かってるの? 二人の関係性を」

「まぁ、憶測だけどな」

「じゃあ……」

「……」

 お兄ちゃんは、深夏先輩を一瞥した。

 それを受けて、深夏先輩は小さく頷いた……様に見えた。

「……そもそも、アリスは、小野寺が一人暮らしだったのは知ってたか?」

 深夏先輩が一人暮らし? 

「ううん。初耳だわ。っていうかなんでお兄ちゃんはそのことを?」

「俺と小野寺は、一年生の時も、同じクラスで、同じ図書委員だったから、知ってたんだ」

 ふ~ん……家庭の事情を知ってるなんて、やっぱり仲が良いのかしら……。

「えっと、君の名前は確か真由美さんだったっけ?」

 お兄ちゃんは真由美に聞く。

「あ、はい……」

「うん。ずばり結論から言うと、小野寺と真由美さんは、ただの友達だ。とっても仲の良い……な」

「……え」

 私は絶句した。

「え? 本当? ただ友達同士の関係なの?」

 私は、真由美を見る。

「あ~。まぁ友達同士ではあるかな」

「うん……とっても仲の良い親友……だよ」

 私はなんとなく腑に落ちない。

「でもなんで、二人はそのことを隠して……あっ」

 私は、その時、頭の中の電球がピカッと光ったような感覚に陥った。

「まさか……二人暮らし……?」

 真由美と深夏先輩は気まずそうに頷く。

「え……っと、その……先生は知ってるの?」

「……一部は知ってるわね」

「生活費とか……いや、そもそも女子高生二人だけで住んでるなんて……」

 その時、図書室のドアが開いた。

 入ってきたのは、見たことのない先生だった。

 先生は、こちらを一瞥したのち、部屋の奥へと入っていく。

「……アリス、外出よ」

 真由美は私の腕を付かんで引っ張っていく(相変わらず力が強い)。

「ちょっと……まだ気になることが……」

「後で言うから! 先生がいる所ではしたくないの」

 私は真由美に引きずられるように図書室から出ていく。

マグナ2しんどくないですか

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