その3
翌日、私と真由美の二人は、お兄ちゃんと、深夏先輩の事をそれぞれ監視して、それを報告し合うことになった。
放課後、私と真衣は、真由美を部室に招き入れる。
「アリスは紅茶よね。七戸さんは、紅茶とコーヒーどっちがいい?」
「コーヒー! 砂糖とミルクをいっぱい入れてね」
真衣は苦笑しながら用意を始める。
「すごいなぁ、都会の学校は部活でコーヒー飲むんだなぁ……しかもソファーもあって」
「多分、都会とか田舎とかは関係ないと思うけど……」
この部屋を私と真衣が占拠してから一か月は経つけど、未だに先生に何か言われたことはない。
バレてないのか……それとも放置してるのか。
「じゃあ早速、お互いに報告することにしましょ? まずは私から」
そう言って真由美は話を切り出した。
私は、真衣が淹れてくれた紅茶をゆっくりと味わう。
「昨日、帰ってから、深夏に直接聞いてみたの。アリスのお兄さんの事、好きなのって」
「ブッ」
私は思わず紅茶を吹き出した。
「やだアリス、汚いわよ」
真衣は、笑いをこらえながら、汚れたテーブルをハンカチで拭き取る。
「ご、ごめん……」
「どうしたのアリス? 急に噴き出して」
きょとんとした顔をする真由美。あんたね……。
「ねぇ真由美。私たち、調査するって話だったよね?」
「うん。だから聞いたの」
なんか、私の想像した調査と違うぞ……。
「聞いたら、深夏、驚いた顔してたけど、『ううん。小山内君とは、クラスメイトだよ。でも、まぁ、男子の中では仲が良い方かな』って」
へえ!
「なんか、やっぱり私が勘違いしてただけかな?」
「いや、そんなことはないと思うわ」
私は、心の底から驚いていた。
「だって、あのお兄ちゃんのことを仲の良い友達だって言う人がいるなんて! しかも女子で!」
だって、今までお兄ちゃんが友達と一緒に過ごしてるところなんて見たことないのよ? しかも女子とだなんて……驚かずにはいられないわ!
「アリス……あなた、自分のお兄さんの事よくそこまで酷く言えるわね……まぁ、私の話はこんなところ。私はやっぱり、深夏はアリスのお兄さんの事、気にはしてると思うんだけど、どう思う?」
「まぁ……一応脈無しではないと思うけど……」
わざわざ、男子の中では仲が良い方なんて言い方、ふつうしないと思うし……。
「それでアリス。アリスの方はどうなの? お兄さんの事監視したんでしょ?」
「まぁ……一応、クラスで仲の良い人とかいないの? とか聞いたんだけど、『特に』 しか言ってくれなかったの」
本を読んでるお兄ちゃんは、いつだって生返事だ。
「調査失敗じゃない! ちゃんと聞かないと駄目じゃないのよ」
「うっ……」
反論したいけど、良い返しが思い浮かばない。
「こうなったら、直接アリスのお兄さんに聞くしかないね。まだ学校に残ってるかな?」
「多分、もう帰ったと思うけど」
「お兄様なら、恐らく図書室にいると思うわよ」
真衣はしれっと言う。
「なんで知ってるの?」
「お兄様、図書委員だから、今日は活動日でしょ」
分からない……なんで真衣は、そんなことを知ってるの?
「え? アリスのお兄さんも図書委員なの?」
真由美は、驚いた顔をして
「深夏も図書委員なのよね」
と言った。
「……偶然かしらね」
私は、なんだか寒気がした。
更新遅くて申し訳ないです。明日も投稿できるよう頑張ります。




