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黒翼契約譚《レイヴン・クロニクル》 IF:血月の黙示録  作者:
第二章:黒翼幼年記

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最終話:帰還

屋敷へ戻った頃には、夜明けが近づいていた。


空が少し白い。


クロエは馬車の中で眠っている。


小さな身体。


泣き疲れたのか、呼吸は静かだった。


レグルスは包帯を雑に巻きながらぼやく。


「……いてぇ」


全身傷だらけ。


魔力焼けまで起こしている。


ノクスはそんな彼を静かに見ていた。


「無茶をしましたね」


「誰のせいだと思ってんだ」


「貴方が勝手に突っ込んだのでしょう」


「止めろよそこは」


「止まりましたか?」


「止まんねぇな」


即答だった。


ノクスは小さく溜息を吐く。


だが、その目はどこか柔らかい。


レグルスが眠るクロエを見ながら呟く。


「……怖かったんだろうな」


ノクスは答えない。


だが、彼も理解していた。


あれは暴虐ではない。


恐怖。


ただ怯えた結果の暴走だった。


レグルスが頭を掻く。


「ガキが泣いて暴れたら、世界壊れかけましたーって」


「笑えねぇぞ」


ノクスは静かに窓の外を見た。


赤い月は、もう沈み始めている。


「……もう」


低い声。


「隠し切れません」


レグルスの顔から笑みが消える。


教会は確認した。


黒翼の始祖。


その存在を。


もう以前のように、密かに守る事は出来ない。


これから始まる。


監視。


追跡。


討伐。


そして――


戦争。


レグルスが深く息を吐いた。


「……面倒なモン拾ったなぁ」


ノクスは静かにクロエを見る。


眠る少女。


封印から零れ落ちた始祖の欠片。


世界を滅ぼす可能性。


それでも。


守ると決めた。


ノクスは小さく目を伏せる。


「えぇ」


「ですが」


「今更、手放す気もありません」


レグルスが少しだけ笑った。


「違ぇねぇ」


馬車は静かに屋敷へ帰っていく。


長い夜を終えて。


そして――


もっと長い戦いの始まりへ。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。


第二章はこれにて完結です。


クロエの覚醒によって動き出した運命は、まだ始まったばかり。


黒翼の秘密、教会の思惑、そして世界を揺るがす戦いが待ち受けています。


物語は第二部へ。


引き続きお楽しみいただければ幸いです。


――第三章へ続く

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