第十三話:恐怖
黒い羽根が舞う。
静かな夜だった。
なのに。
空気だけが、壊れ始めている。
教会騎士達が、一斉に武器を構えた。
白銀の槍。
封印術式。
対始祖拘束鎖。
その全てが、クロエへ向いている。
少女は、小さく肩を震わせた。
「……っ」
怖い。
分からない。
どうして。
どうしてみんな、そんな目で見るの。
白髪の執行官が、静かに告げる。
「対象確認」
「封印指定災厄――」
「黒翼の始祖を拘束します」
その瞬間。
騎士達が動いた。
ガシュッ!!
光の鎖が、一斉に射出される。
クロエの瞳が、大きく見開かれた。
「やめ――」
ガァンッ!!
レグルスが、真正面から鎖を叩き落とす。
「ガキ相手に、やる事エグいなァ!!」
同時。
ノクスの術式が展開。
漆黒の結界が、馬車周囲を覆った。
衝撃。
轟音。
森が揺れる。
だが。
クロエの呼吸は、もう乱れていた。
怖い。
怖い。
怖い。
頭の奥で、誰かが囁く。
『壊して』
違う。
『殺して』
やだ。
『全部』
クロエが、頭を押さえた。
「や……っ」
ノクスの瞳が、僅かに揺れる。
まずい。
始祖因子が、急激に活性化している。
白髪の執行官も、異変に気づいた。
「総員後退――」
遅い。
ぞわり。
空間が、軋んだ。
クロエの足元から、黒い影が広がっていく。
赤い瞳。
その奥が。
人ではない何かへ、変わっていく。
レグルスが、舌打ちした。
「おいノクス」
「これヤバくねぇか」
ノクスは答えない。
ただ。
クロエだけを見ていた。
少女の身体が、小さく震えている。
怯えていた。
化け物みたいな力じゃない。
ただ。
泣きそうな子供みたいに。
怖がっていた。
だから。
ノクスは、静かに名を呼ぶ。
「クロエ様」
「こちらを」
クロエの瞳が、ゆっくり彼を見る。
その瞬間。
教会騎士の一人が、恐怖で叫んだ。
「撃てぇぇぇ!!」
光が放たれる。
そして。
世界が、赤く染まった。
読んでいただきありがとうございます!
少しでも面白いと思っていただけたら、
ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!
引き続き「レイヴンクロニクル」をよろしくお願いします!




