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黒翼契約譚《レイヴン・クロニクル》 IF:血月の黙示録  作者:
第二章:黒翼幼年記

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第八話:黒翼の契約

地下深部。


誰も知らない場所。


世界から切り離されたような、巨大な封印空間。


無数の鎖。


幾重もの術式。


白銀の杭。


その中心で。


“それ”は眠っていた。


黒い翼。


終わりのような魔力。


そして。


赤い瞳。


本来なら、目を合わせるだけで発狂すると言われた存在。


『黒翼の始祖』


世界最古にして、最悪の吸血鬼。


だが今。


その身体は、幾千もの封印杭に貫かれている。


白い祭服の司祭達が、巨大術式を維持していた。


その最前列。


黒衣の青年が、静かに立っている。


黒髪。


赤い瞳。


ノクスによく似た顔。


彼こそ。


監視者血統、初代当主。


教会司祭が低く告げる。


「封印安定を確認」


「これより、永久封印へ移行する」


だが。


その瞬間。


カラン――


鎖が鳴った。


全員が凍りつく。


始祖が。


ゆっくり目を開いた。


赤い瞳。


それだけで、数人の神官が膝をつく。


恐怖。


圧倒的格上の存在。


なのに。


始祖は暴れなかった。


ただ。


静かに、黒衣の青年を見る。


『……あなた』


声が響く。


直接、脳へ。


青年は片膝をついた。


「始祖様」


始祖は僅かに目を細める。


悲しそうに。


『長い、夢を見そう』


司祭達が術式維持を強化する。


空間が軋む。


始祖は静かに続けた。


『もし』


『わたしが、壊れてしまったら』


『――あの子を、お願い』


青年の瞳が揺れた。


「あの子……?」


始祖は答えない。


ただ。


胸元へ、そっと触れた。


そこから。


黒い羽根が、一枚零れ落ちる。


青年は息を呑んだ。


始祖の魔力。


いや。


“欠片”。


『きっと、寂しがりだから』


その声は。


どこか幼い少女みたいだった。


青年は強く頭を下げる。


「……承知しました」


「我が血統、命尽きるその時まで」


「貴女を監視し、守護する事を誓います」


始祖は静かに目を閉じた。


そして。


最後に、ほんの少しだけ笑う。


『ありがとう』


次の瞬間。


封印術式、完全起動。


轟音。


光。


世界震動。


黒翼の始祖は、長い眠りへ落ちた。


その日から。


監視者血統は、“契約”を背負う事になる。


代々受け継がれる使命。


誰にも語られない誓約。


始祖を監視し。


始祖を守り。


そして。


始祖が目覚めたその時は――。


その運命すら見届けること。


それが。


黒翼の契約だった。

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