第二十一話:紅獅子
爆音。
硝煙。
砕け散るステンドグラス。
武装聖職者達が、時計塔へ雪崩れ込む。
「始祖を拘束しろ!」
「高位眷属を確認!!」
「排除を――」
言葉は最後まで続かなかった。
ドォン――!!
赤黒い衝撃が、正面入口を吹き飛ばした。
聖職者達が壁へ叩きつけられる。
悲鳴。
瓦礫。
血。
煙の中から、ゆっくり現れる影。
「……うるせぇな」
低い声。
長い赤髪。
着崩した黒コート。
そして。
獣のような赤い瞳。
レグルス・ブラッドレイン。
『紅獅子』
教会側の顔色が変わる。
「ば、馬鹿な……!」
「紅獅子だと!?」
レグルスは牙を見せて笑った。
「久々だなぁ。その呼び方」
次の瞬間。
消えた。
いや。
速すぎて見えない。
ズガァッ!!
聖職者の一人が、壁ごと吹き飛ぶ。
レグルスは片手で、別の男の顔面を掴み上げていた。
「お前らさぁ」
赤い瞳が細くなる。
「人ん家、土足で上がってんじゃねぇよ」
ドゴン――!!
床へ叩きつける。
石畳が砕けた。
セレナが思わず息を呑む。
強い。
いや。
化け物だ。
教会上位騎士級を、まるで相手にしていない。
エルが静かに分析する。
「高位古参眷属」
「危険度、特級災害指定相当」
レグルス
「聞こえてるぞ無機質」
エル
「事実です」
クロエは、少し困った顔をしていた。
「レグルス、壊しすぎ……」
レグルスの動きが止まる。
「……あ?」
クロエ
「床抜ける」
沈黙。
レグルスは、砕けた床を見た。
「……あー」
「まぁ……後で直す」
ノクスが静かに言う。
「前回もそう言って、逃げましたね」
レグルス
「うるせぇ黒薔薇」
空気が、ほんの少しだけ緩む。
だが。
外の空気は違った。
上空。
巨大な魔法陣が、さらに展開されていく。
セレナの表情が変わる。
「……まずい」
「あれは、対始祖拘束術式」
ノクスの目が細まる。
「本気ですか」
教会は、始祖を消すつもりだ。
クロエは、不安そうに空を見る。
その時。
ノクティスが、静かに前へ出た。
「……俺が行きます」
全員が見る。
ノクティスは、空を見上げていた。
自分でも分かる。
血が騒ぐ。
始祖の力が、呼応している。
そして。
守りたい。
その感情だけが、はっきりしていた。
クロエが不安そうに呟く。
「ティス……」
ノクティスは、小さく振り返る。
その瞳には、もう迷いがなかった。
「大丈夫です」
「今度は、俺が守ります」
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