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黒翼契約譚《レイヴン・クロニクル》 IF:血月の黙示録  作者:
第一章:血月の黙示録

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第十五話:眠りのあと

静かな夜だった。


赤月は雲に隠れ、

十三番街には雨だけが降っている。


時計塔の上階。


薄暗い部屋。


クロエは、静かに眠っていた。


規則的な寝息。


穏やかな表情。


先程まで、都市規模の威圧を放っていた存在とは思えない。


ノクスは、ベッド脇へ座っていた。


無言。


ただ静かに、クロエを見守っている。


その視線には。


忠誠。


敬愛。


そして。


長い後悔が滲んでいた。


コンコン。


扉が鳴る。


「入れ」


レグルスが部屋へ入ってきた。


「……教会の連中、まだ下にいる」


ノクスは小さく息を吐く。


「当然でしょう」


「始祖を見つけたんだ」


レグルスは壁へ寄りかかる。


「で?」


「いつまで隠す」


沈黙。


ノクスは、眠るクロエを見つめたまま呟く。


「……できれば、永遠に」


レグルスが苦笑する。


「無茶言うな」


「今日ので完全にバレたぞ」


始祖波長。


血統共鳴。


高位眷属服従。


もはや、誤魔化しきれない。


それでも。


ノクスは静かに言った。


「この方は、普通に笑っていてほしい」


「災厄でも」


「始祖でもなく」


「ただ、クロエとして」


レグルスは、少しだけ目を細める。


「……甘いな」


「ええ」


否定しない。


その頃。


時計塔下層。


セレナは、窓際で雨を見ていた。


槍はもう構えていない。


頭の中が、整理できなかった。


始祖。


世界最悪の災厄。


だが。


目の前で見た少女は。


怖がっていた。


泣いていた。


誰かを傷つける事を、何より恐れていた。


「……何が、真実なんだ」


小さな呟き。


その背後で。


「観測記録、整理完了」


エルが現れる。


セレナは振り返らない。


「……お前はどう見る」


エルは少しだけ沈黙した。


「現時点では、危険存在です」


淡々とした声。


「ですが」


「過去記録との矛盾を多数確認」


「再観測が必要です」


セレナは目を閉じる。


再観測。


つまり。


まだ、討伐対象として断定できない。


その時。


「……あの子、泣いてたな」


小さな声。


ノクティスだった。


彼は、静かに自分の首元へ触れる。


吸血痕。


まだ熱が残っている。


なのに。


嫌悪感がない。


むしろ。


安心する。


「……おかしいだろ」


自嘲気味に笑う。


吸血鬼へ血を与えた。


しかも始祖。


本来なら、恐怖しか残らないはずなのに。


脳裏へ浮かぶのは。


涙を堪えていた、黒髪の少女の顔だった。


その瞬間。


ドクン――


再び、血が脈打つ。


ノクティスの視界へ、知らない記憶が流れ込んだ。


幼い自分。


暗い部屋。


大量の血。


そして。


『この子は生かす』


優しい声。


黒い羽根が、静かに揺れていた。


ノクティスの瞳が、大きく揺れる。


「……誰だ」


だが。


その声の主を。


彼の血は、すでに知っていた。

読んでいただきありがとうございます!


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引き続き「レイヴンクロニクル」をよろしくお願いします!

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