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黒翼契約譚《レイヴン・クロニクル》 IF:血月の黙示録  作者:
第一章:血月の黙示録

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第十二話:血月の記憶

赤月が、静かに空を染めていた。


時計塔の中。

重い沈黙。


誰も動けない。


“始祖”。


教会が千年追い続けた、最大の災厄。


その正体が。


泣いている少女だったなど、誰が想像できただろう。


クロエは苦しそうに呼吸を繰り返していた。


胸が熱い。

頭が痛い。

お腹が空く。


そして。


知らない記憶が、脳裏へ流れ込んでくる。


燃える街。


崩れる塔。


血の雨。


大量の悲鳴。


『逃げろ!!』


『始祖だ――!!』


知らない。


知らないはずなのに。


「っ……ぁ……!」


クロエが頭を押さえる。


ノクスの表情が変わった。


「クロエ!」


遅かった。


ドクン――


始祖波長が、さらに膨れ上がる。


時計塔の窓ガラスが砕け散った。


風が吹き荒れる。

赤い魔力が、空間を歪める。


セレナが即座に槍を構える。


「総員戦闘態勢!」


だが。


ノクスが前へ出た。


「下がれ」


低い声。


初めてだった。

彼がここまで感情を露わにしたのは。


「刺激するな」


レグルスも武器を抜く。


だがその切っ先は、教会側へ向いていた。


「……誰も、我が君へ近づくな」


空気が凍る。


セレナの瞳が鋭くなる。


「貴様ら……」


「本気で始祖を守る気か」


レグルスが低く笑った。


「今さら何を」


「俺達は最初から、その為に存在してる」


その言葉に。


ノクティスの胸が、再び強く脈打つ。


“その為に存在してる”


なぜか。


その感覚を、自分も知っている気がした。


エルが静かに呟く。


「始祖波長、暴走域へ接近」


「過去記録、血月災害と一致率上昇」


セレナの顔色が変わる。


血月災害。


都市を一夜で消した、史上最悪の暴走記録。


クロエは苦しそうに震えていた。


「……やだ」


「怖い……」


その瞳から、涙が零れる。


なのに。


頭の奥では。


『血』


『足りない』


『飢えている』


知らない声が響く。


「違う……!」


クロエが叫ぶ。


「私は、そんなのじゃ……!」


その瞬間。


ノクティスが、無意識に前へ出ていた。


「ノクティス!?」


セレナの制止も聞こえない。


ただ。


泣いている少女を、放っておけなかった。


ノクスの目が見開かれる。

レグルスも止まる。


ノクティスは、クロエの前へ立った。


震える少女。

赤い瞳。

壊れそうな呼吸。


災厄には見えない。


だから。


彼は静かに、自分の手を差し出した。


「……大丈夫です」


その言葉に。


全員が止まる。


ノクティス本人すら、何を言っているのか分かっていなかった。


なのに。


身体が勝手に動いた。


クロエの瞳が揺れる。


「……ぇ……」


ノクティスは、小さく息を吐く。


そして。


自分の首元へ、そっと触れた。


爪が皮膚を裂く。


赤い血が流れる。


「何をしている!!」


セレナが叫ぶ。


だが。


ノクティスは目を逸らさない。


「……あなた、苦しいんでしょう」


クロエの呼吸が止まる。


血の匂い。


甘い。

暖かい。


始祖の本能が、静かに疼いた。

読んでいただきありがとうございます!


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引き続き「レイヴンクロニクル」をよろしくお願いします!

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