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「国のためにスパイを密告しろ」と言うから巨悪を追い詰めたのに、緊急事態条項の絶対権力の前に俺の正義は紙屑になったんだが?  作者: 中将


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第8話 快進撃

 カノンちゃんコミュニティ内ではsaekiさんに同情的な派閥と無視した方が良いのではないかという派閥で二分されていた。


 俺は、


『カノンちゃんを応援している同志なんだから協力しないと! 反対する皆も後ろから撃つのだけはやめてくれ!』


 と切に訴え続けた。


 不満をぶつくさいう者たちはまだまだいたようだったが、表上は少なくとも反論してくる者はいなかった。コミュニティのメンバーも減ることは無かった。何とか聞き入れられた形だった……。


 そして、同情的な声を持つ派閥の中で埼玉県に在住のものが外国人がたむろしていたり薬物などを扱っている丸井の出没地域と思われる場所の地域で雑居ビルの5階にある潰れかけた喫茶店ならば安全でありながら長居していても咎められる可能性が低いという情報を得ることが出来た。


 その上で、丸井の写真をsaekiさんに渡した。


 正直なところ、張り込んだところで取引の現場の決定的な写真が撮れるとは思えないのだが、saekiさんの情熱と暴走しそうな危うさを考えれば、ここら辺がリスクを最小限にした妥協できる範囲内だろう。

 

 そして、1週間が経過してカノンちゃんの声で生成した曲を聞いて何だかAIだとやっぱり不満だなぁ。カノンちゃん復活しないからなぁ……と思っていたところ、saekiさんから連絡が入った。


「やりました! 決定的な写真です! 教授がおっしゃったとおりマトリの丸井がトクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)とやり取りしている瞬間を捉えました! 写真と映像両方あるので見てください!」


「えっ!?」


 俺は確認した。確かに役所で登録されている丸井という男が、何やら怪しい取引をしている映像と写真が収められていた。


「これで警察に通報しつつSNSで拡散してみせます!」


「い、良いと思いますよ」


 凄い気迫が文面からすらも伝わった。もとより家族の名誉回復と自らの身の安全のために執念が違うのだ。


 盛り上がりには欠けるが俺が通報するしかないように感じた。

 

 ”教授”としての力をフル活用して通報のハブ的な存在になろうとした。


 すると、こんなものが通知で届いた。『あなたの通報履歴は常軌を逸しています。健全なアカウント利用を心掛けてください』


 ……ここで退いてたまるかよ。正義のためにやっていることなんだ! 単なるエラーだろ……。


 俺はそんな通告に対しても必死に堪えて更なる拡散を狙った。


 あらゆるポストに対して『拡散をお願いします』と投稿したし、そのための広告すらも打った。これも正義と名誉のためだった。


 そして――


「厚労省丸井課長 押収した薬物を密売した疑い マトリの信用・特権が失墜の恐れも」


 という記事のタイトルが1ケ月後に躍った。


 そこには俺とsaekiさんが追っていた押収して国庫に帰属した薬物を転売していたことが各紙の一面にデカデカと掲載されていたのだ! 夢のような嬉しさが押し寄せてきた。


 すぐさまテレビをつけると、厚生労働省のお偉いさんが頭を下げ、その後に辞任会見が始まった。


 テロップには「消えた年金問題以来の組織的な隠蔽!」とまであった。

 どうやら、今回の一件は思った以上に問題は根深く、組織的に容認していたという話もあるようだった。


 どうやら、幹部20人が引責辞任をするようだった。

 こんな高級官僚を俺は追い落とすことが出来たんだ。年金は消すし、押収した薬物は転売するしいったい何を考えているんだろうな。いずれにしても、こいつらを権力者側から落とすことが出来て本当に良かった――


 その記事を切り取るために再びコンビニ走って、スクラップノートに貼ったりして小躍りをしているとsaekiさんから連絡が入る。


「本当にありがとうございます……。私の告発が正しかったことが証明されました……。

 教授にはお伝えしていませんでしたが昨日まで私の家には石が投げ込まれたり、怪文章が届いたり、無言電話が相次いだりしていたんです。

 ですが、今朝からピタリと止んだんです……。

 私の母はこの一件で塞ぎこみ、鬱病となっていましたが、しばらくすれば回復すると思います」


 俺はsaekiさんのその投稿を見て一瞬言葉を失った。俺が想像していたよりもはるかに酷く苦しい状況にsaekiさんとその家族は追い込まれていたんだ。だからこそ、何とかして自分たちの正しさを証明したかったのだろう……。


「そんなことがあったんですね……嵐が過ぎ去りそうで本当に良かったです……」


 saekiさんはどこか無警戒だから家が特定されてしまい嫌がらせの標的となっていたのだろう。


「やった! 俺は遂に国の特権を利用した不正すらも暴くのに貢献したのだ! もはや俺に倒せない悪は無い!」


 俺は「真の悪」を罰しようとするが、一般的な人間は「悪っぽい奴」を罰することに躍起になっているやつが非常に多いのだろう。


 そうした「悪っぽい奴」を正当な評価にすることによって世間の価値観を是正するのだ。


 そして俺はこうも投稿した。


『悪い官僚、悪い政治家、悪いインフルエンサー、スパイ疑惑そういった権力を盾にした不正を働く輩は他にいませんか? 是非とも情報提供をお願いします』


 依然としてカノンちゃんは復帰してこないが、俺は俺なりにやれているためにとても満足できている日々だった。


 俺は目を疑った――俺のアカウントはフォロアー数が1万人を突破した段階で「収益化」したのだが(現在は30万人近くまで増えている)、今月の収入が何と50万円まで到達しているのだ! インプレッションに関してはかつての1000倍にまで増えている!


 そして、「悪を告発するノウハウが欲しい」とお金を払ってまで俺のやり方を学びたいという者たちまで現れたのだ。


「やった! 悪を成敗してお金まで貰える! こんな最高なことってあるかよ! これでカノンちゃんグッズを大量に買える! 大量にスーパーコメントを送れる! 復帰と新製品、待ち遠しいな!」


 しかし、カノンちゃんのアカウントは相変わらず凍結されたままで続報も音沙汰ない状況だ……。


 俺はこんなにも頑張っているんだから戻ってきてくれよカノンちゃん……。

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