表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/70

その46

その46

やっとノーザンピークの砦にたどり着く。

当然その前にギルマスから紹介された武具屋に寄って来ているので、その時の話をしなければならない。

小さな看板だけとってつけたような、いかにも偏屈そうな爺がやる店と言うより、ただの小屋に武具の看板だけを付けたのような建物のドアを開けると、”チリリ~ン”と意外とかわいらしいベルの音がした。

「いらっしゃいませ!」

意外な事に可愛い声がして、まだ幼さの残る可愛い女の子が姿を見せた。

まあ、この年代の女の子は愛想さえよければ誰でも可愛く見えるものだが、うん、それでもやはり可愛く見えてしまう。不愛想で気難しい爺さんのやる愛想の無い武具屋と聞いていたはずだ。あのギルマス、恩を売ろうとまた話を盛ったのかと思ったら、最近まではギルマスの話通りの店だったらしい。

爺さんは偏屈では有るものの、それなりにいい腕をしていたので、何とか店は持っていたものの、だいぶ厳しくなったのを見るに見かねて、最近になって孫娘が介入してきたと言うパターンである。

どうやら息子や娘の言う事は聞かなくても、孫にはめちゃ甘いと言うタイプの頑固爺であるらしい。

で、あるが、中古で良いので、軽鎧を動きやすいように速攻で手直ししたものが欲しいと言うと、店番の孫娘もさすがに顔をしかめた。

「爺ちゃんが一番嫌いなやつね。命を守る重要な手段なんだから絶対真面目に準備しないといけないでしょ。」

まだ幼さの残る少女にやり込められる、アズミ、もとい、スパコンである。

「弱い魔物しか相手にしていなかったしィ~、女の子に可愛いは正義だしィ~・・・」

何かぶつぶつ言っていたが、言い訳にしか聞こえない。アズミにはこの手のデーターが不足しているのかもしれない。

そう言えば、『コンピューター、データが無ければただの箱』なんて戯言がむかし流行った気がする。あれ?あれはデータではなくてソフトだったかな?

「ええと、すんません、相手にしてきた魔物も弱かったし、アズミはスピード重視なんで、下手にスピードを阻害するような鎧とかはうかつに使えなかったもので・・・ついつい後回しになってしまって、ギルマスの紹介状ももらってあるんでそこんところ宜しくお願いします。」

まだ幼さの残る女の子にこんなへりくだった文言もどうかと思うが、弓を扱うのにいかんせんゴスロリは拙いので、今はさっさと鎧を手に入れてノーザンピークに向かいたい。喧嘩を吹っかけている場合ではないのだ。

「ふ~ん、紹介状とか貰えるならそれなりの腕は有るんだ。うちも商売だからもちろん売るけど・・・とにかく爺ちゃんに話してくるわ。」

店番の女の子は奥に引っ込んでいくが、何気にそこはかとなく言い争うような声が聞こえてくる。

「・・・・まったく!あの野郎紹介状なんか書きやがって!。」

「・・・、ダメでしょう! お客さんなんだからあ!」

何となく爺様の方が押されているのは判る。やはり泣く子と地頭には勝てない!と言うか、爺様は孫娘には勝てない。

しぶしぶと言った感じで顔を出した爺がアズミの顔をじろっと見て、それから背中に背負った刀に目を移す。

「お前さん、その剣を振り回せるのかい?」

第一声がそれであった。

「身体強化とスピードが持ち味なので。」

アズミが答えると、

「ちょっと振ってみろ。」

と言う事で裏庭で刀を振って型を見せる事に成る。

「・・・・、ふ~む。」

まあ、悪い反応ではない。・・・たぶん。

「まあ、たしかに下手な鎧はつけん方が良いわな。トウォリル、ワイバーンのジャケットが有ったじゃろう。あれの要所をロックタートルの甲羅で補強してやれ。」

「あ~い。」

ちょっと気のない声でトウォリルと呼ばれた例の店番の女の子がが返事を返す。

「あの~、そいつ、弓も使うんで胸当ても欲しいんですが。」

すると爺さんはアズミのつつましい胸をじろりと眺めてひと言、

「いらんじゃろう。」

うぉ~!!いくら職人気質とは言え、お客さんにその言いぐさはねだろう。店番の女の子はしゃがみ込んで肩をヒクヒクさせながら笑いをこらえている。

あのね~、女の子も、そこは笑う所じゃないだろ。失礼な爺様をとっちめる所だろ! あまりの事にこちらも何と対応していいかわからず、言葉が出ずにいるけど。

アズミもブスッとして、小声で、

「フンッ!! 良いんだもん、これからまだ成長して大人になったら世界一の美女になるんだから!」

俺だけに聞こえるようにぐちった。

「世界一の美女って、誰かモデルがいるのか? クレオパトラとか・・・モナリザはちょっと雰囲気が違うし・・・。」

「フンッ! もちろんミロのビーナスよ!」

「ブッ・・・・!!」

強調し甲斐のない胸を反らせて鼻息を荒くしているが、それ、もう思い切り絶望的と言うか、データーの取得を間違っていないか?

確かにミロのビーナスは世界的な美女で、人によっては世界一の美女と評するかもしれないが、こと肝心の胸部装甲に関してはラノベ的には残念としか言わざるを得ない。

それに今のアズミはペパーミントグリーンのツインテール、おまけにゴスロリ・・・・身体的に大人になるのはまだ先の話なので許されるのか、許されないのか・・・なんか、それで良いのか?

ビーナスって美の女神だよな? 神様に子供時代がツインテールでペパーミントグリーンの髪とかあるのか? ビーナスの誕生とか言う絵画が有ったような気もする。確か成人の姿で海の泡から生まれて金髪だったような・・・・。

何にしろ人間の想像の産物なんで、こうでなければダメと言う確固たる理由もなければ規則もない。諸説あります、とかこれで良いのだと言いきられてしまうと、うかつに反論もできないが、ちょっと心配になる。

軽鎧が出来るまでに二日かかった。もうちょっと早くならないかと言ったら怒られた。

「命をあずけるものなんだから、もっと真剣に考えなさい!」

子供みたいな女の子にゴンゴン言われた。確かにおっしゃる通りです。ごめんなさい。いやだけど謝るしかない。

女の子の説明によると、ジャケットはワイバーンの飛膜を使用、軽く、柔軟で強靭、動きを妨げない、良い事づくめのように聞こえるが、打撃に対しては無力。それをカバーするため要所にロックタートルの装甲を張り付けたが、幼体の物を使っているので、ある程度の柔軟性と引き換えに防御力はそこそこしか無いそう。

アズミの戦闘スタイルと料金を兼ね合わせた結果だそうだ。ちなみに弓用の胸当てについてはもともとロックタートルの補強を取り付ける所と重なっているので、あえてつける必要はないとの事。

じいさんの『必要ないじゃろ』はそういう意味か?にしては店番の女の子が笑いをこらえてヒクヒクしていたのが解せぬ。

軽くて、しなやかで、しかも防御力も強い…それが鎧の理想ではあるにしても、理想に近づくにつれ、とうぜん料金も跳ね上がる。

「もっと稼げるようになったら、もっといい防具を買った方が良いわね。」

もっともな言い分であるが、やたらに防具屋に都合が良いように聞こえてしまうのが癪に障る所である。

と、まあ、色々引っ掛かりが有って、少々遅れたものの何とかノーザンピークの砦に併設された冒険者ギルドにたどり着いたわけである。

                          *


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ