偵察
今は工房の職人の手によって中型衝撃砲の生産が急ピッチに行なっていた。
それに合わせて隣のラインでは、2輪車の生産も同時進行で行なわれている。
最終段階で2輪車のサイドに中型衝撃砲が付けらる。
戦闘車の小型と言ってよい。
運転する時も左右非対称な乗り物で、運転に注意が必要。
右旋回と左旋回で旋回特性の差が大きい。
「もっと脇を閉めて肘を絞り、手のひらでグリップを前方へ押し出すようにしてハンドルを操作しろ!」
ああ、今でもテストコースで四苦八苦しながら運転をしてるぞ。
そして指定された位置に止まって、手元の操作で的に向かって撃ちだした。
「バカ野郎!右にそれてるぞ!」
色々な場面で使えるサイドカーになった。
本当は戦闘車を大量に作りたかったが、アルト商業自治国がむちゃな注文でこんな姿になった。
『2輪車を使って衝撃砲のもっと強力な威力してくれ』
その結果がサイドカーだ。
この注文が終われば、戦闘車を作る予定だ。
「領主さま、ようやく完成しました。今からテスト飛行を行いたいと思います」
「ようやく出来たのか・・・」
「ご覧下さい。敵に鳥に見えるように鳥型の偵察機にしました」
成る程、全長50センチに翼は60センチか・・・
小型飛行船の模型を何度か作ってテスト飛行させてみて、研究員がいいアイデアを思いついた。
通信鏡具を使えば偵察に使えるのではと・・・
何度もテストを繰り返して、飛行したままだとピンポイントの偵察は不向きと判断。
なので空中で停止したまま偵察できるように、新たな浮遊魔法陣を追加。
これによって好きな空中で停止が可能になる。
「はじめてくれ」
「わかりまして」と言って顔はこわばっているぞ。
そんなに、私が緊張させているのか・・・
その手には鏡が握られていた。
左右の親指を使って棒を上手く操作して、鳥偵察機が平らな地面を走り抜ける。
50メートル進んだ先で、ふわりと浮くと自由自在に飛行しているぞ。
鏡を見ると眼下の景色が広がって見えている。
「右下の数字は、コントロールの座標位置になります。敵の捜索で迷子にならない仕組みになってます」
「中々なアイデアだな・・・」
あ!もう城下街を見下ろしているぞ。
誰もこれが偵察機だと思わずに見向きもしないぞ。
それは、正門の見張りの上空でも同じだ。
右下数字は、北西2キロを表示。
あの一瞬の飛行でそこまで飛んでいたのか・・・
「あの見張りの兵士の顔を拡大して見せてくれ」
「わかりました」
カメラ操作してズームアップした。
「オルソン兵士ですね」
オルソンは、大きく欠伸をしているぞ。
ちょうど見回りに来た隊長に注意されているのもバッチリ目撃してしまう。
操作している研究員は、バツの悪い顔をした。
「あの欠伸した顔の録画を後でわたしてくれるかな・・・」
「え!・・・私が撮ったと言わないで下さい。お願いします」
「オルソンと知り合いか・・・」
「義理の兄です・・・」
私の工房で、カメラの魔改造をしている。
研究員の話だと夜間に飛ばしても、明かりのある所しか見えないと悩んでいた。
魔道照明で照らせば敵にバレバレで偵察にならない。
なので熱源を可視化するカメラに魔改造中だ。
これも古代魔法国の知識で、使い勝手がいいぞ。
なんと壁向こうの見回りに来た兵士が、赤く表示されて動いている。
これなら家の中に何人いるかも分かるぞ。
魔道照明が飛行場を指し示すように間隔をおいて設置。
鳥偵察機の夜間飛行を見ようと、何人もの兵士が見ている。
「テスト飛行を開始します」
魔道照明に照らされて鳥偵察機が地面を滑るように走り飛び去った。
「あんなに速く飛ぶのか・・・」
「もう何処に飛んで行ったかも分からないぞ」
テスト飛行場は街外れで暗い地域だ。
それでも上空では、街の明かりをとらえている。
「サーモグラフィーモードに切り替えます」
通信鏡具は、暗い路地を歩く人の体温をしっかりと赤くとらえている。
その人物が建物の中に入る。赤い人影が紫色に変化。
どうやら建物には、もう1人がいるようだ。
「音の可視化モードで会話が聞けないか試せ」
スイッチの変更で会話する度に、音の発生源が赤く光、黄、緑、青と広がる。
「音量増幅でハッキリ聞こえるよう調整を・・・」
『・・・あんた!いつまで飲んだくれているの・・・明日も早朝から仕事があるのに』
『せっかく友達がおごってくれたんだ。少しは優しい言葉でもかけろ』
『はい、はい』
「あれって早朝組のシモンズの声だぞ」
「すると・・・あれが姉さん女房の声か・・・」
兵士は互いの顔を見てしらけている。




