↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
7/10

7 連続密室殺人

スタンフォード警部補が芯のある声で報告する。


「マイヤー、ブラウン、ダグラスの3人には共通点がありました。

彼らは同じ病院に勤務する医師でした。」


私とカメリアは、お菓子の家から馬車で30分ほど離れた場所にある病院を訪れていた。

小高い丘に建てられたその病院は、熟練の医師と共に医学生が多く所属する大きな病院である。


この病院に、お菓子の家の納品リストに名前のあった3人が所属していた。

そして彼らは、ここで殺されたのだ。


「3人は病院に常駐する医師であり、敷地内の寮に住んでいました。

殺害されたのは、それぞれの自室の中です。」


私たちはスタンフォード警部補の案内で、医師たちのための居住棟へ向かった。

中央の病棟と渡り廊下で繋がった寮は、簡素な作りながら、医師たちが快適に過ごすのに十分な広さがあった。 

34年前の病院創設時から所属していたマイヤー、ブラウン、ダグラスの3人には最上階である3階の部屋が与えられていた。


最初に調べたのは、マイヤーの部屋だ。

本棚と書き物机、シングルベッドが置かれていた。

さらに部屋の中央の壁には、冬場に薪を燃やして部屋を温める暖炉が備え付けられていた。

窓の向こうにはベランダがあった。


スタンフォード警部補は私たちに、「貴重品や金目の物は盗まれておらず、金庫の中に残されたままでした。」と伝えた。

これは強盗目的の殺人ではないのだ。


マイヤーは、部屋の中央に背中を刺され倒れていた。

そして床に敷かれたカーペットには、小さな黒い足跡がいたるところに残されていた。

何より不気味なのは、指がくっきりとうつった裸足の足跡であることだった。


「発見されたのは今朝5時。

朝の巡回に現れないことに不審に思った同僚がマイヤーを呼びにきました。

しかし応答はなく、緊急性を感じドアを壊して開けたところ、遺体を発見したそうです。」


「発見された時、部屋の鍵はかかっていましたの。」


カメリアの質問にスタンフォード警部補は、「内側からかんぬきがかけられ施錠されていました。」と答えた。

私は「犯人はベランダから侵入、逃走したのでしょうか。」と尋ねた。

しかしこの考えは否定された。


「ベランダに出る窓には鍵がかけられていました。

窓ガラスも割られていません。」


カメリアも、「この足跡も、ベランダの方へは向かっていないようですわ。」と言った。

  

スタンフォード警部補は、「ブラウンとダグラスの部屋も、発見されたとき窓と扉は施錠されていました。」と報告した。


彼らは皆、密室で殺されたのだ。


次に私たちはブラウン、ダグラスの部屋を調べた。

部屋の構造はマイヤーの部屋と同様であった。

そして2人の部屋にも、黒い足跡が残されていた。


カメリアは足跡をじっと見つめ、「男性にしては、ずいぶん小さい足跡ですわね。」と言う。


「私の足よりもさらに小さいぐらいですわ。」


「では、女性の足跡でしょうか。」

 

カメリアは「それは違いますわ、ヒルダ。」と首を振る。


「足跡は指の間隔が大きく開いています。

先の尖った靴を日常的に履く女性の足では、このように指の間隔は開かないはずですわ。」


観察を終えたカメリアは「3人が最後に目撃されたのはいつでしたの。」とスタンフォード警部補に聞いた。


「マイヤーは昨夜20時に食堂で食事をとっています。

ブラウンは21時に運び込まれた患者の対応をしています。」


多くの患者を抱える病院の医師である彼らは、夜遅くまで働いていたのだ。


スタンフォード警部補は「それからダグラスですが。」と報告を続ける。


「彼の場合は犯行を目撃した者がいます。」


「話を聞きにいきますか。」というスタンフォード警部補の問いに、カメリアは「もちろんですわ。」と答えた。


目撃者は、ベルガーという初老の男性医師だった。

彼は被害者の3人と同輩であり、寮ではダグラスの隣室を使っていた。


カメリアはベルガーに、「貴方が目撃したことをお話ししていただけますか。」と頼んだ。


「話しても、きっと信じてもらえないだろう…。」


ベルガーの眼鏡の奥の目が忙しなく動く。


「あれは、人間じゃなかった…。

頭からつま先まで真っ黒で…。」


ベルガーは震える声で言う。


「ダグラスは、悪魔に殺されたんだ…!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。