↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/10

4 地下室

菓子店とは別の、莫大な収入を記した帳簿。

キッチンの戸棚を埋め尽くす毒薬の小瓶。

ミュラー夫人は、本当に善人だったのだろうか。


毒薬の戸棚から離れようと一歩下がったとき、靴のヒールが床を叩く音が先ほどと違う響きをした。

私は足元に視線を向けた。


床板が一部分、周りと異なる向きで貼られている。

よく見れば金属のつまみがついている。


「これは床下収納でしょうか。」


靴音が違う響き方をしたのは、下に空間があるからだろう。

私はつまみを掴み、床板を持ち上げた。


現れたのは、地下へと続く階段であった。


カメリアが階段を覗き込んで言う。


「ミュラー夫人はこの下に何かを隠していたかもしれませんわね。

調べてみましょう。」


カメリアと私、そしてスタンフォード警部補は蝋燭の灯りを手に、床下の階段を下った。


地下には、床下収納とは呼べないほど大きな空間があった。

土壁でできた横穴が先の方で枝分かれしている。

その様子は動物の住処を連想させる。


先頭を進むスタンフォード警部補が、こちらに振り返って言う。


「ミュラー夫人が善意で貧しい人々を住まわせていたのか、疑わしくなりました。」


スタンフォード警部補は灯りを右手側にある横穴に向けた。

蝋燭の火に照らされ、その姿を表した物。

それは鉄格子の檻だった。


「ミュラー夫人は貧しい人々をこの地下牢に閉じ込めていたのでしょうか。」


私の言葉に、カメリアは「キッチンの毒薬とどう関連するのか、確かめなければなりませんわ。」と答えた。


檻の扉は開いていて、中は空になっていた。

この檻から逃げ出した者は、何処へ行ったのだろうか。


地下牢の反対側、左に枝分かれした横穴には、大きな樽が並んでいた。


「これは保管庫でしょうか。」


「そのようですわね。」


スタンフォード警部補は、保管庫に残されていたメモを拾い上げた。


「『マイヤー 2つ

ブラウン 3つ

ダグラス 1つ』

これは納品先のリストでしょうか。」


横倒しにされ、ずらりと並ぶ樽は2メートルほどの長さがある。

そのほとんどが空だったが、手前のひとつだけ中にまだ何か入っているようで、蓋がされていた。


樽の蓋は腐敗したためか隙間が空いていて、酷い悪臭が漏れていた。 

私は蓋をこじ開けた。


中を見て、私は声にならない悲鳴をあげた。


「どうしたのですか、ヒルダ?」


カメリアが心配そうに尋ねた。


「遺体です…!

中に遺体が入っていたんです…!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。